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骨抜きの米国GMO表示法成立


有機農業ニュースクリップNo.715と食品安全情報blogより編集

米国上院は7月7日GMO表示法案((S. 764農業マーケティング法改正案)を63対30で可決。法案は下院に送られ、7月13日米国下院において賛成306、反対117で可決した。オバマ大統領は署名し、成立する見込みだ。

この法案成立は7月1日からバーモント州で発効したような州毎のパッチワーク状の表示法案を阻止するために単一の国の基準を要請していた食品企業、農業団体、バイオテック企業の勝利を意味する。

GMO批判者はこの法案を製品にGM成分が含まれるかどうかを知りたいと思う消費者を適切に守らないと言う。この法は各州がGMO表示を義務化する法律を出すことを阻止するだろう。

製造業者はGMO存在を示すUSDAシンボル、簡潔な言葉での表示、あるいはQRコード(二次元バーコード)での情報へのリンクを含む表示をする。多くの市民団体や消費者団体は、単純な文言による表示以外にもQRコードなども容認するこの法案に反対していた。明示しなくてもよいことから「GMO非表示法」だという批判も出ているほどだ。スマートフォンやパソコンなどを持たない、米国市民の3分の1にあたる1億人が表示の確認ができなくなることが懸念されている。

法案は、法律施行より2年以内に米国農務長官が表示基準を策定するように定めている。(安田 注:GM推進の農務省が策定することから)、モンサントなどのGM企業や大手食品企業に有利な内容になるのではないかと懸念されている。

この法案は、すでに7月1日より施行されたバーモント州や同様のGMO食品表示の州法を成立させたコネチカット州やメイン州、アラスカ州のGMO表示制度を骨抜きにするもので、これらの州の主権の著しい侵害であると非難されている。

このGMO表示を骨抜きにする法案への賛否を巡って、米国の有機農業関連団体にも亀裂が起きている。全米の有機農業・オーガニック関連の生産者団体、流通業者、認証団体など8500事業者が加盟する有機取引協会(OTA)から、有機種苗生産者協会(OSGATA)が脱退した。

法案には、米国の有機認証制度で認証された製品について、“not bioengineered”とか“non-GMO”あるいは同様の文言で強調表示できるという一項が設けてある。この点を評価した有機取引協会は6月23日、法案を提案したスタベノウ上院議員(民主党)を「称賛する」とするコメントを明らかにしていた。

下院でGMO表示法案が可決された7月13日、このような有機取引協会の対応について有機種苗生産者協会は、GMO食品への表示を求める米国の市民と有機農家に対する「裏切り」であると断罪した。その上で、有機取引協会からの脱退を決めた。有機種苗生産者協会(OSGATA)は2011年、モンサントを相手に「モンサントは有機農家を訴えることはできない」ことの確認を求める訴訟を起こしている。

安田節子コメント

TPP協定では遺伝子組み換え作物に関し情報交換のための作業部会の設置が決まっている。この作業部会は単に情報交換だけではなく、米国基準の受け入れを強制する場になるのではないかと思われる。2年以内に出てくる米国のGM表示基準を日本に受け入れさせる強制力を持つだろう。TPPで日本のGM表示は後退することが懸念されていたが、現実味を帯びてきた。

安倍政権は秋の臨時国会でTPP批准を強行する構えだが、これを許さずTPPの危険性を広め、TPP離脱を世論として行かねばと思う。

(2016/07/31)

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