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第3のビールや発泡酒の原料にGMトウモロコシ


日本メーカー、第3のビールにGM使用

毎日新聞(2015年11月10日)によると、毎日新聞が実施したアンケートで「発泡酒」や「新ジャンル」(いわゆる第3のビール)にGMトウモロコシ由来の原料(液糖)が使われる実態が明らかになった。

現在、日本では加工用のトウモロコシをほぼ全て輸入で賄っている。日本の最大の輸入先である米国では栽培の約9割がGMのため、輸入トウモロコシの大半がGMであり、家畜の餌や液糖などに使われている。

GMトウモロコシ由来の液糖(コーンシロップ=異性化糖(別名「ぶどう糖果糖液糖」「果糖ぶどう糖液糖」)は清涼飲料水はじめ多くの加工食品や菓子などに使用されているがGM表示はされていない。

消費者が知らぬ間にGM使用に切り替えていた

日本のビールは「コーンスターチ」を原料に含む製品が主流だが、ビール会社はコーンスターチはGMではない分別したトウモロコシを使用する慎重な姿勢を見せてきた。

10月に毎日新聞社が国内ビール大手4社(アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリービール)にアンケートをしたところ、ビールは、原料にトウモロコシを使わないサントリーを除き、3社とも分別された「非組み換え」トウモロコシを使用。

しかし、発泡酒と新ジャンルでは4社ともこれまでは非組み換えトウモロコシからできた液糖を使っていたのが不分別(GM)に切り替えていたのだ!

その時期について、サントリーは「2015年2月製造分から」、アサヒは「3月から」、キリンは「2015年に入って順次」。サッポロは時期を明らかにしていない。

ビールに比べ価格の安い発泡酒や第3のビールの原料(液糖)が、コストの安いGM不分別品に切り替えられ、消費者の知らぬ間にGMになっていたのだ。

表示が義務付けられていないから消費者は知らずに飲んでいる。

TPP対策かと疑われる、行政と法の不備状態が続く

食用油や液糖などGMの使用量が圧倒的に多い食品がGM表示を免れているのは法の不備、行政の不作為である。

これまで何度となく要請を繰り返してきた食用油など「加工品の原料原産地表示」の拡充とすべてのGMを含む食品へのGM表示について、昨年秋、板東消費者長官に面談の機会を得て、改めて直接要請した。

本年1月29日に消費者庁と農水省は共催で原料原産地表示の審議会を立ちあげた(秋に中間とりまとめの予定)。これはTPP国内対策としてだ。一方、GM表示は先送りとなったまま。皮肉を言えば、こちらはTPP対外(対米)対策なのだろう。

それにしても、技術の進歩といえるのかどうか、まがいもの、「もどき」食品が増えていくばかり。本物とは似ていても原料はまったく異なるジャンクの食品の氾濫をどう考えるか。

ドイツでは、ビールと名乗るにはその材料、作られ方などを厳格に規定する「ビール純粋令」がある。ビールの名称は、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とするものだけに認められる。

「ビール純粋令」(ウイキペディアから

EC発足に際して、ビール純粋令は『非関税障壁』として問題となる。1987年、欧州裁判所は、ビール純粋令は保護主義を禁じているローマ条約に間接的に違反していると判断を下す。この結果ビール純粋令は、ドイツ国内の醸造業者によるドイツ国内向けのビール醸造のみを対象とすることとなり、国外への輸出ビールや、国内への輸入ビールには適用されなくなった。

ドイツ国内の醸造所の多くは、ビール純粋令の内容によりドイツビールの品質が支えられ、市場競争力を得ているものと考えており、これを指針としてビール作りを続けている。ビール純粋令に従って醸造したビールは消費者から支持を受け、ブランドを守ることができるからである。

日本のビールメーカーにはビール作りの矜持を持ち、本物の物作りを日本に残し続けてほしいと思う。

(2016/02/05)

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