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汚染米から米流通を考えるシンポジウム(第一部:パネルディスカッション)


※シンポジウム『汚染米から米流通を考える』の模様をテキスト化したものです。

安田:第1回の緊急集会に続き、第2回の集会を始めます。前回要求しました資料でまだ出ていないものもありますが、そういうことも含めまして、この集会を企画しました。

ミニマムアクセス米という国民には不要なお米を無理に輸入するというシステムの中で、こういう事態に至ったわけです。汚染米追及の過程で、米の流通がいかにブラックボックスの中にあるかを私たちは知るに至りました。

今回のシンポジウムは『汚染米から米流通を考える』ということで、第一部ではそれぞれの問題に取り組んでおいでの方にパネリストとして問題点を提起していただき、関連する質問に農林水産省、厚生労働省の担当官からお答えいただきます。第2部では質疑応答という形で、米の汚染問題全体でまだ明らかになっていない問題が多々ありますが、それを含めて会場とやり取りをし、私たちの要求をまとめあげていきたいと思います。

議員挨拶

近藤正道:2度にわたる農水省、厚労省とのシンポジウムを積みあげてこられましたみなさんにまず敬意を表したいと思います。国会は金融危機の話一色ですが、この汚染米の問題は看過できません。今日の議論を通じて、当面私たちが何をしなければならないのかをしっかりと解明していただきたいと思っています。

私は最近、事故米については極力主食用に回せという19年度の農水省資料を入手致しました。あらためて怒りで一杯です。今日はそれも含めていろいろな意味で問題点が解明されることを心から願っております。

鈴木議員(秋田県):秋田県で1世紀以上続いている、第131回秋田県種苗交換会が明日開幕します。「先人に学び、農業の未来をひらく」がキャッチフレーズですが、なかなか未来が開けないのが今の農政の現状です。プランドゥ・チェック・アクションという言葉があります。プランドゥは進んできましたが、検証と改善の部分がなかなか進んでいない。私も議員の1人として、大いにチェックしながらがんばってまいります。

福島瑞穂:社民党は『瑞穂の国の農業再生プラン』を発表しました。「田んぼの底力法案」を近藤議員中心に作ってもらい、減反政策はもうやめてWTOにも反対して、食料自給率をあげるというものです。先日、山形庄内地方の飼料米を作っている農家に行きました。飼料米や米粉米をつくることを食用の米と同じように保護し、食料自給率をあげることを思っています。そして、ミニマムアクセス米はやめた方がいいと思っています。汚染米の状況について、食の安全という観点からやっていきたいと思っています。

実は、農水省を応援したいと思っていて、きちんと予算もつけ、食料自給率もあげ、負けるなと思っています。お互いは敵同士ではありません。しっかり取り組んでいきたいと思っています。

松浦大悟参議院議員:私も米どころ秋田県の国会議員です。事故米、汚染米の問題は秋田県においても大変な衝撃をもって受け止められております。これだけ食の安全が崩壊し、農水省が信頼失墜している中で、どうやって回復していけばいいか。私も農水省を責めるだけではダメだと考えています。私たちも協力しながら今度の対応を考えていかなければならないと思います。

岡崎トミ子:汚染米がいつのまにか焼酎になったり、お菓子になったりするのは本当におかしな話だと思っていました。資料に減反政策が日本農業をだめにしたとあります。1割減反でも自民党、2割、3割の減反でも自民党と信用してがんばってやってきた人たちが、今大きな痛手を受けているんですね。農業で、生産している人たちが元気にならないとツケは全部消費者に回ってきます。私たちは解明に努力しておられる市民のみなさんとしっかり結束してやっていくのは今しかないと思っております。農業を元気にするためにも、私も一生懸命やりたいと思っております。私も米どころ宮城県です。

※議員挨拶終わり

農水省から直接ヒアリング

安田:私たちは数名で農水省から直接ヒアリングを行いました。その間の経緯を反農薬東京グループの辻まち子さんからさせていただきます。

辻:9月24日、第1回目緊急集会を開き、その時は100人を超す人たちがそれぞれ怒りの声をあげました。その後、10月7日に近藤議員と一緒に農水省から話を聞き、資料も出してもらいました。ミニマムアクセス(MA)米の事故米が汚染米になってということで、それが問題になっていました。MA米に関しては、平成15年度以降の資料しか出てきておりません。

また、同じ農水省が出した資料にかかわらず数字が違っていまして、その理由を尋ねました。農水省が出す資料は玄米換算で、もう1つ通関統計からの数字は精米なので1割違うという説明を受けました。 そういう話の中でSBSというものが出てきました。これはMA米の中に入っているもので、主食用として10万トンが毎年入ってきます。これは輸入する前から売り先が決まっているようなものなんです。MA米は主食用にはならないという話だったものが、私たちが知らないまま、最初から10万トンが主食用として入っていたということです。具体的にどういうものがSBSとして入っているのかを教えて欲しいとお願いしていますが、まだ説明をいただいておりません。MA米ですから関税がかかりません。例えばピラフ用のお米といったものと聞いたのですが、具体的に何がどれだけ入っているかを是非教えていただきたい。

次にアフラトキシンに関してですが、発ガン性が強いものがあってはならないことですが食用に回っていたわけです。アフラトキシンは日本では発生しないと言われています。ところが、輸入されて倉庫に保管中、9.5万トンにアフラトキシンが発生したということなのです。輸入米ですから、輸出国の港、輸入検疫などいろいろ検査があるのに、そこをすり抜けてアフラトキシンに汚染されたお米が入ってきた。そして日本の倉庫内で増えたのではないかと私は思っています。なぜ日本の倉庫でアフラトキシン米が見つかったのかに対して、明確な説明はありません。どこの倉庫で、どういう管理をしたからアフラトキシンB1が発生したのかは答えてもらっていません。

工業用糊については、接着剤メーカーが使うのではなく、合板接着剤の増量剤として使われていたのだと、前回の集会でさんざん説明を受けました。数量は調査中ということでもらっておりません。また、カドミ汚染米で1ppm以上のものは廃棄処分、0.4〜1ppmの約2,000dは毎年工業糊として使われていて、これは絶対に食用米には回らないという説明を受けました。非常に自信たっぷりのお話で、みんなコロッとだまされました。その後、週間ポストに実はそうではないんだという記事が出て、そのすぐ後、急遽、今まで工業用糊として買い上げていた0.4〜1ppmのお米も廃棄することに変わったわけです。

今、農水省は次々といろいろな検討会を作ったりして、どんどん変わってきています。その中で、MA米として入った汚染米は相手国に返すか廃棄して、市場に回さないと言っています。先ほどのカドミ米はすべて焼却となっています。

農政事務所の立ち入り検査のマニュアルが無いではないかと前回の集会で追及しましたが、そのマニュアルはこの間出ました。販売と検査を分けることも決まっています。農水省の中に『米流通システム検討会農水省改革チーム』ができて、それぞれ急ピッチで検討を進めています。米流通システム検討会などは11月27日には結論を出すというようなスケジュール表が出ていて、どこまでできるのかと思います。また、内閣府に『事故米穀の不正規流通問題に関する有識者会議』ができ、こちらも大変な早さで進められています。今日の最後のパネラーとして、この内閣府の有識者会議に参加しておられる弁護士神山美智子さんから報告があります。これら検討会で、どれが一番権威があるのか、どこがどう言ったらどうなるのかは一切分かりません。

輸入米の汚染米だけではなく、お米の流通全体の問題が非常に大きいのではないかと思います。今日のシンポジウムでは、それぞれ昔からお米の問題に関わってこられた方から問題提起していただきます。事故米、汚染米に限らず、日本農業をどうするか、お米をどうするかという立場からのお話が進められると思います。以上です。

アンケート集約結果の報告

日本消費者連盟・山浦:(※当日配布資料に掲載済みのため省略)

各パネラーによる問題提起

安田:総選挙がいつになるか分からなくなりましたが、地元の候補者にもこのアンケートのような質問をぶつけて投票の参考にしていただけたらと思います。

では、各パネラーの方にテーマに添って問題点を端的にご指摘いただきたいと思います。最初に、「減反が日本の農業をだめにした」ということで、提携米研究会共同代表の橋本明子さんにお願いします。

橋本:減反政策が日本の農業をだめにしたと、私自身は思っております。この減反政策が対象としているものは米なんです。

米というのは日本の農業の柱と永らく言われてきました。主食である米に対する農水省、国側の考え方と、私ども食べる側の考え方は反対で、それが端的に現れているのが減反で1970年以来、一貫して続けられています。農水省は「減反政策というものはない、これは生産調整である」と言われます。その名の通り、米の需給操作に終始しています。そこには日本農業を長い目で見てどのようにするか、国民に安全で健康な食を安定的に供給するにはどうしたらいいかという長期的な視点が欠けていたと思われてなりません。それを具体的な歴史から見てみたいと思います。

減反政策は食管法に基づく法的な根拠なしに、単なる奨励政策として続けられてきたところに大きな特徴があります。日本は米の自給を達成することが悲願でした。それは私たちも同じでした。それが達成できた翌々年から、今度はお米がたくさんとれ過ぎ、国の予算を圧迫するから作り過ぎは困るとなりました。余るものは少なくしろという農水省の考えで、全国等しく農民には減反をしてもらおうという発想が生まれたのです。

日本は亜寒帯から亜熱帯まであります。それにも関わらず全国一律で、上からの官僚指導でした。つい最近まで米作りが農家の使命といわれ続けてきて、それは驚天動地の変革だったわけで農家は従えません。農村の基盤は、村の共同体によって維持されています。一緒になってやってきた努力が報われないという無力感で、従われないと思われたのは当然と思います。その農家の気持ちをやわらげるため、「これは緊急避難である」というのが当初の農水の説明でした。「何とかなれば元に戻すから」となだめて実施したわけです。それがそうはなりませんでした。

農家は1割減反されれば、3割増産する。これが合言葉になったのです。従って、1976年からは強制的な手段をとらなければいけないと、罰則付きの強制減反の手法がとられるようになってきました。それが将来にわたって食糧不足が懸念される現在になっても続けられ、さらに強化されています。農民はやる気をなくし、農村は衰退していくばかりです。

「集団的制裁を手段とする減反政策に反対する」斉藤健一(1996年9月13日)さんの文章を紹介

昔から泣く子と地頭には勝てぬという言葉あります。室町のその頃から、お上に楯突かず、従うしかないという庶民の哀しいあきらめがあったと思います。イギリスではパブリック・サーバントで、上に立つ人たちは国民のお金を預かって使う、国民につかえるサーバントであると言われます。日本の官僚は反対に自分が主人公としてのさばってきました。そこから、強制だから反抗する、反抗するものはさらに押さえつけるという、内へとこもる仕組みが農村にはびこってしまって今日を招いてしまったと言えます。

しかも、減反が農村のすべてを決める尺度になってしまっています。例えば地方交付税。これは減反を達成していないと交付されません。公共的な施設も減反が尺度です。減反していない限り、農村は共同体としての生活を維持できない構造となってしまいました。

私たちは現状を知るにつけ、日本をダメにするのは農業以前に人を大切にしない農水省の政策にあると、『減反差し止め裁判』を起こしました。ある裁判官は「米が余っているのに減反しなければどうするのですか?」と言いました。私たちはそういうことを問題にしているのではないのです。「農村基盤を危うくし、生産者の基本的な人権さえ守れないような仕組みを直して欲しい」と言ったんです。人権回復の闘いと農業政策の転換です。作るな、作るなと言って、自給を自ら放棄している国に将来があるはずがありません。

全国から1,300人の原告のうち、お米の生産者100名ばかりでした。JAの強いところほど応答がありませんでした。減反実行団体としての農協は国の政策に嵌まり込んでいました。官僚、地方自治体、農協職員といった減反政策に関わる人たちの半数以上は減反で生活できていたのです。本音は減反反対でも、表面で反対はできない立場におかれていました。他の生産物生産者100名が、同じ生産者として自分の問題であると参加しました。その他は食べる側の人たちでした。

当時、九州など南の地方では「もう、米には見切りをつけた。他の農作物を作っている」と回った農家で言われました。尺度は減反ですから、減反協力の形を取って補助金を目一杯もらい、他の作物にあてているから米の裁判には参加しないということでした。栃木県の山村では、「自分は減反に賛成できない。反減反を貫く」と言われた方は、村で誰からも口をきいてもらえないという状態でした。レジュメにも他の事例を載せましたのでお読みください。

私たちの主張したい1つは、米の検査です。生産者ばかりに厳しい。消費者にとって意味の無い米検査は簡略化することです。篩にかけたものだけをはじき、1等米、2等米、3等米の区別はなくしなさいという提案が1つ。

もう1つは、裁判まで起こして主張した減反政策を止めるべきであるということです。世界では食糧増産に回っています。日本も増産に回らなければならない時に、旧態依然の減反を続けているなど理解に苦しみます。自給政策にもっていって欲しいということです。

安田:ありがとうございました。続きまして、「MA米は輸入禁止に」ということで、日本消費者連盟の山浦康明さんにお願いします。

山浦:資料13pに「MA米の在庫量と事故米売却量の推移」のグラフがあります。93年ウルグアイ・ラウンドの合意の中で、日本が米の関税化を拒否する政策をとる見返りとして、MA米、輸入機会を提供するということになって始まりました。多いときには189万トンの在庫量、2008年は129万トンにもなってしまっています。そこに事故米の売却量に関する農水省資料にあった各事業者の値を単純計算したものを折れ線グラフにしてあります。

MA米は当初3〜5%を最低輸入機会として提供するということでした。これは年々%が増える形になっていまして、途中でこのままではどんどん増えるため政策を転換し関税化しようとなりました。現在は7.2%、76.7万トンのMA米になっています。この中から事故米が発生しています。もちろん、政府が備蓄している米からも汚染米が大量に発生して、併せて今回の汚染米問題になったということです。

MA米は義務ではないということを明確に訴えたいと思います。実際に、輸出国で輸出することができないとか、あるいは価格高騰で契約が成立しないことがあるわけです。アクセスを提供するということなのですが、毎年、毎年、律儀に完全にこのように大量に入れなければいけないというものではありません。そこにはカラクリがあるのではないか。なぜ必要の無い外国産米を輸入し続けるのか。ここに今回の問題の背景にあり、これを見なければいけないと思います。

MA米の安全性チェックがいい加減であったことはみなさんもご存じと思います。農水省資料によりますと、輸入時の検査システムは、現地の輸出米を日本の商社が政府から入札によって購入する地位を得て購入するわけですが、その際、輸出検査を現地でします。報道にもありましたように、現地に検査機関があるにもかかわらず、なぜか財団法人穀物検定協会の検査機関がサンプルを日本に持ってこさせてチェックをします。そのチェックが甘く、それで契約が結ばれていたということです。船に積み込む時、日本の港に着いた時の検疫の精度も甘かった、それはなぜかという問題だろうと思います。

甘いチェックがなぜ起きたか。MA米を日本が大量に入れることによって、それを販売しなければいけない。政府が販売契約の当事者ですから、何とか早くさばきたいという立場と、管理者としてチェックをしなければいけないという2重の立場があるために、早くさばければいいという立場が先行したのではないか。そして、どうもMA米は旨みのあるものなのではないかという感じもします。MA米を入れることが利害を生じる背景があって、甘いチェックをしながらMA米を輸入し続ける構造があったのではないか。

農水省は汚染された事故米処理の確認を怠っていました。事故米処理マニュアル、手続きがいい加減だったということです。事故米の処分方法は、地方農政事務所長の裁量に任されていました。彼は販売し、チェックをするという両方をやる人となります。例えば赤く着色しなければいけないことについても十分に行わなかったし、加工時に役所が立会いをきちんとしていなかったとか、買受人の帳簿を調査するとなっているにもかかわらず、調査しなかったとか。チェックの甘さがあるわけです。もちろん、三笠フーズ、浅井、太田産業、島田化学工業等の法的責任が厳しく問われなければなりませんが、MA米の独特な性格から役所もそれを安易に容認する体制があったのではないかと勘ぐってしまうわけです。

今検討されていますが、今後は米のトレーサビリティ・システム、米の表示制度を実効性のあるものにしなければこの問題は解決しないでしょう。政府が販売当事者であると同時に管理者としての役割もあるという、この性格の二重性も問題と思います。

私たちは、MA米は要らないと思います。ウルグアイ、・ラウンド以降、WTOでの自由貿易の論理は、穀物が過剰だから何とかさばかなければいけないという輸出国の圧力によって作られたルールです。今の食糧危機の時代に唯々諾々として、ルールなのだからしかたがないという形で従うなどは愚の骨頂です。今は当時と状況が全く違いますから、WTO農業交渉の考え方である自由貿易論を見直すべき時期に来ていると思います。今は事実的に買ってないわけですが、それを続けていかなければいけない。日本国内で余っているわけですし、MA米を大量に輸入することで世界の米の市場価格が高騰してしまう。それは止めるべきだと思います。

外国産食材輸入によるフードマイレージを考えてみましても、非常に無駄なことをしています。地球環境にも大きな悪影響を及ぼしています。そういった意味でも止めるべきでしょう。

経済グローバル化の中で儲かっているのは、モンサントやカーギルといった多国籍企業です。こういう制度を止め、各国の食料主権が保証されるルールに変えていかなければならない。そのためにも、WTOルールは変えていかなければならないと思います。

安田:次に、「米の規格検査が農薬散布を強制している」として反農薬東京グループ辻まち子さんにお願いします。

辻:私は、輸入米ではなく国産米の話です。

米の規格検査が、実に不合理で理不尽な制度であるということです。そういう制度があるために、農家は大量の農薬を使わなければならない。この2つは非常に大きな問題と思います。それを解決するため、農産物検査の規格を変えなければならないと思っています。

米1,000粒に2粒の着色粒があると、玄米60kg当りで価格が1,000円安くなります。1等米と2等米の違いです。着色粒とは、稲穂が出た時にカメムシが穂を吸い、その痕がついたもので、斑点米とも言います。農産物のチェック基準は昭和49年に決まったまま、一切代わっていません。1等米が着色粒0.1、2等米が0.3、3等米が0.7で、これ以下でなければいけないのです。死米というものもありますが、これは途中で生育が止まって成長しきっていない米です。これが1等米は7%までOKです。

1等米では、着色粒は1,000粒に1粒、死米は70粒までがOKなんです。着色粒と死米のどこがどう違うのでしょうか?着色粒は毒ではありません。これがたくさん出たからといって、ウンカが大発生した時のように生産量が落ちるというものでもありません。それなのに、なぜ価格に影響するような規格を決めるのでしょうか?

私たちは去年からこの問題を追及しています。農水省の消費流通課にこの制度は止めるべきだと主張したのですが、そこで「これは関係団体で決めたことで変えるわけにはいかない」と言われました。関係団体というのは米の流通業者なんですよ。消費者は一切関係者ではない。斑点米などが入っていると流通業者がはじかなければならず、コストが高くなるからということで、実に驚きました。消費者は関係ない、流通業者を守るんだということを農水省がはっきり言ったわけですから。今回のカビや農薬汚染米ですら食用とする技術があるわけで、2粒入っている着色粒を1粒にするなど簡単にできるはずです。3等米を1等米にすることも簡単にできる。

なぜ、カメムシが噛んだ米粒がこれほど重大な問題になるのでしょうか?日本の水田の害虫駆除面積の中で一番多いのがカメムシです。2年ほど前のデータですが、これが防除面積は一番です。水田に対する防除が進んでいる中で、無人ヘリコプターが普及しています。今年、無人ヘリコプターがいろいろ事故を起こしています。山形県では学校のプールに墜落したり、飛んでいるヘリコプターがどこかへ行ってしまうという前代未聞の事故も起きています。これはどれもカメムシ防除が目的です。

カメムシ防除の必要は無いのではないかと思うのですが、JAなどは防除しないと米を受け入れない、買わないというところがあるらしいのです。ですから、山村の高齢化した農民たちが必死の思いで農薬を撒いているわけです。これも米の検査規格がおかしいからです。

山形県ではヘリコプターが2機も事故を起こしたと言いました。そこまでしてカメムシ防除の必要はないのではないかと質問しますと、山形県は「品質のいい米を作る。山形は1等米の比率が全国2位で品質がいい」ということです。それはそれだけ農薬を撒いているということで、今後も続けると言うわけです。一方、秋田県や岩手県の県議会では、「こんな検査制度は止めろ」という意見書を出しています。

元凶の国の検査規格、特に着色粒を削除していただきたいと思います。そうすると、少しは水田の農薬散布が減るのではないでしょうか?

辻:次に、「米表示の問題点と遺伝子組み換え米」と題して、食政策センタービジョン21代表の安田節子さんです。

安田:食品表示に関しては原産地表示などが強化され、消費者の求めに応じていく流れがありますが、米に関してだけ、表示は規制緩和がされているのです。その背景にあるのは、MA輸入米の受け入れ、さらにWTOルールのもと本格的米輸入の時代が間もなく来るという情勢です。

国の検定を受けた米には「産年、品種、産地」の3点セットを書くことができます。けれども、輸入米は外国産ですから、検査を受けていない、表示の無いものが相当入ってきます。国内検定では1等米、2等米、3等米と、価格差をつけた厳しい規格で縛りに縛っています。輸入米は同じようにやっているのか、そのような検査をして差別化をしているのか聞きたいものです。輸出港と荷揚げ港で農水省の品位検査を行い、厚労省の検疫検査と合わせて3ヵ所くらい検査がありますが、農水省の品位検査は緩く、アフラトキシンさえ見逃す程度のものですね。

米の表示制度では、義務となっている表示項目は産地と割合だけなんです。検査を受ければ品種産地、産年を書くことができるとなっていますが、おそらく検査など受けていない輸入米を想定して、産地と割合だけが義務表示なのです。輸入米は、また、日本の米では精米年月日を書くようになっていますが、輸入米では精米年月日がいつなのか不明のものが多く、それで輸入年月日に代えていいとなっています。これら産年のわからない、古古米、古米、品種もわからない、そんなものがブレンドされ、出回ることになります。

今回の汚染米事件は輸入MA米で起こりました。MA米の中には、売買同時入札のSBSという、主食用の米輸入があります。毎年、SBSで10万トンも入れている。それについて、本当に国内産米と同じ厳格な検査をしているのかと言えば、そうではなくダブルスタンダードなのではないかと思います。それらは主食用に主にはアメリカ産中心でしたが、昨今は中国産にもシフトしていますが、いずれにしても品位の高い主食用米が買われているわけです。このような米を含むMA米には運賃も保険料も倉庫料も荷揚げ料も、全部農水省がもっています。汚染米リスクも引き受けてくれて、あらゆる便宜を図って、農水省は商社に買い付けさせてきたのです。その費用はどこから出ているのでしょうか?

SBSについて調べました。これは同時売買入札と言って、輸入業者、卸業者が買値と売値を同時に入札し、商社の輸入買受価格と国内卸への売り渡し価格の差が農水省の定めたマークアップという、キロ当たり289円以内の額のうちで最も高い額が落札され国に差益として入るようになっているシステムです。この差益が今現在いくらになっているのか。そのお金をどのような用途で使っているのでしょうか?私の推測ですが、MA米の必要経費をそれで賄っているのかもしれない。そこに、国内で不要な米をそうまでして買ってきた仕組みが見えてきたような気がします。

しかも、MA米は売れず、どんどん積みあがっていきました。それで、途中から飼料米としても使うと突然なったわけです。それによって積み増した在庫を減らしたのです。

汚染米は飼料用途にも回したわけですが、飼料業者の使用量と、売った量が、つじつまが合うのかをヒアリングの際、私たちは聞きましたが、これはいまだに調査をしていないと言われました。

工業用として回された汚染米のゆくえしか調査がされていないのです。しかも、調査されたのは5年分だけです。MA米は95年からずっと毎年入れているんですから、13年間の汚染米の量は発表された5年分の量の約4倍あるんです。政府直売ルートのみの調査で、商社ルートで流された分はどうなったのか、まだまだ分からないところだらけなんですね。これが現状です。

そういう状況に関わらず、MA米輸入再開のために早々に幕引きを謀ろうとしているのではないか。山浦さんが何かそこにオイシイ話があるのではと言われましたが、私はMA米は天下り先の利益になってきたのではと思います。一例ですが、積出港の検査も、荷揚げされた米も、全部OMICという検査機関を通して検査しています。OMICは自分で検査しないで、米穀検定協会に検査を回している。OMICはただ右から左に流しただけです。ここは農水省の天下り先です。MA米関連の事業として天下り先を作り、みんなが飯の種にしているわけでしょう。

また、MA米はアメリカの圧力もあったと思います。アメリカやオーストラリアなど、カビ汚染のある国、アフラトキシンの発生する恐れのある国の米があるから、荷揚げの時も輸出の時にもなぜかこの検査をしていなかったわけで、非常に強い憤りを感じます。日本国内では決して発生しないアフラトキシン汚染米の検査は、輸入米に関しては徹底してやるべきです。

遺伝子組み換えの米はアメリカ産と中国産で、未認可のものが世界中に流れたということがありました。MA米について、遺伝子組み換えの検査がどの程度されているのか。厚労省の検疫で、項目としてどのように検査されているか。数値も含めて後でお答えいただきたいと思います。遺伝子組み換えの米は、国内でも野外栽培実験がされています。諸外国において、商業栽培のみならず野外栽培実験中の未認可のものまで食品流通に混入し、それは避けられないというのが実態です。ですから国内栽培実験はもとよりやってはいけないですし、ましてや遺伝子組み換えの生産国からは輸入しないというくらいの対応をしてもらわなければダメと思います。

もどりますが、ブレンド米に輸入米が入って来たときにはどうにもならないくらいのブラックボックスになります。提案ですが、輸入米はブレンドを禁止して、単品で検査を受けてすべてを表示するという原則を作ってもらわなければダメだと思います。

国内米のブレンド米についてですが、今、破砕米を精米に紛れ込ませることが行われています。低価格米ですと半分以上が破砕米、屑米という米も見つかっています。主食用の米として流通できるのは精米の丸米のみに、一切破砕米、屑米を混入してはならないという法律も作る必要があるのではないかと思います。そうでなければ、いくらでも安い粗悪な米が作れるのです。ブレンド米はブラックボックスで表示の検証もできません。混入割合など、誰が検証できるのですか?輸入米50%、国産米50%と表示されていても、誰がその割合が正しいと分かるのですか?こういった矛盾を抱えた規制緩和された米の表示は徹底的に洗い直していただきたいと思います。

辻:続きまして、秋田県大潟村の生き物共生農業を進める会、今野茂樹さんに「主食用転売の背景 ブレンド米」についてお願いします。

今野:私も米の検査があるために農薬を使わざるを得ない状況があることを疑問に思い、そこを逆手にとって、農薬を使わず生態系を破壊しないことを価値としていこうということで、生き物共生農業を進める会と名付けました。

米の検査制度が業界よりの制度であることも感じますし、農水省のいろいろな制度や検討会が消費者目線と言われながらも改まらず、ずっと業界よりの制度が続いてしまっていると思っています。

汚染米を契機に、輸入米が幼稚園や病院などに、幅広く転売を繰り返しながら流通してしまっている状況が起きていることが分かりました。この流通を支えてしまっているのが、複数原料米の表示制度なのではないかと思います。農水省の改革チームの中で、原産地表示をきっちりやろうという見直しがされているようですが、果たしてそれだけでいいのか。国内産100%の表示があって、国内産だからと安心して購入することができるのだろうかと思います。

国内産100%の表示は、国内産であれば他に条件は無いということです。見た目は同じ形でもいろいろなお米があります。食用にできる米にもいろいろあります。例えば、加工用米は主食用以外の目的のために税金を投入して生産した米で、単価の安い米です。他に、屑米、古米も安いお米です。このような米を、安い原料と表示しないまま、消費者には違いが分からないような表示で安い米を高く買わせてしまうのがブレンド米の制度ではないかと思います。

屑米とは粒揃いをよくするために篩いにかけ、網目から落ちた未熟な粒や小粒などを言います。この屑米は農家の庭先で、検査も受けないまま主食用ではないものとして安く売買するものです。それを買った業者が食用にできる粒をもう一度選び出して、国内産100%という高値で売れる表示をして販売することができるのです。また、少なくても3年たった古米も販売されています。消費者には、何%がブレンドされているのかは情報提供されていないため、一切分かりません。任意表示となっていますので、業者にとって不都合な情報を隠したまま販売できるという、業者に都合のいい制度になっています。選米を繰り返す、ライスロンダリングの状況が生まれてしまっているわけです。

その結果、もともと主食用以外の米として安く売り渡した米が正規の米として販売されるわけですから、農家にとってはその低価格米と今年の新米との価格競争になってしまう。自分が売り渡した屑米との価格競争になって、自分で自分の首を絞めているわけです。消費者はそれが分からず、屑米がブレンドされた米を高く買ってしまう。生産者にとっても、消費者にとっても不利益な制度になってしまっています。

ブレンド米には古米も混ぜられます。古米は政府米として、備蓄のために2年か3年保管された後に、購入価格より3千円程度安く売り渡されます。これも新米と古米が同時に入札するという結果、米余りの中で市場では新米価格が古米の価格に引きずられて米価の低迷を招いてしまう。これも屑米の場合と同様、農家が3年前に売った米を政府が3千円安く販売することによって、自分が3年前に売った米と価格競争するという、非常に理不尽な制度ではないかと思います。

屑米は年間50万トン発生しています。主食用としてどのくらい流通しているのかを農水省に電話で問い合わせました。「推計はしている。年間10万トンです」という答えでした。しかし、業界に詳しい人の話では20万トン〜30万トンだと聞いています。

政府米も100万トンの備蓄を行っています。これは回転備蓄といって新米がとれたら備蓄し、3年経った古米を主食用に回しています。100万トンを3年間で売却していくわけで30万トンの古米がブレンドされるわけです。屑米の30万トン、古米30万トンを主食用に流通させながら、一方で生産調整を行う。果たしてこれが合理的でしょうか?政府米を購入価格より安く売却することによって、新米の価格が低くなることにつながります。

こういったことを改めるために提案したいと思っていることがあります。食糧危機で小麦の輸入価格が高騰しているわけですから、屑米や政府米を米粉にして輸入小麦に代えて活用していこうという提案です。合わせて60万トンです。それは10万ヘクタールの生産調整分に匹敵します。食料自給率で言えば1%の向上となります。もともと屑米や政府米は安いお米ですから、財政負担は軽く小麦粉に代えることができるのではないかと思っています。国内で活用されていないお米を有効に活かしていただきたいと思います。

古米には消費者が知らずに売却されるという問題以外に、古米を新米のように見せかける食品添加物、精米改良剤を、表示しないまま添加して売却されているという問題もあります。厚生労働省も認識されていることです。添加物の中にはキャリーオーバー制度という、表示を免除されているものがあります。これは表示しなければ食品衛生法違反になる添加物ですので、16年に都道府県の担当官に確認指導するようになっていますが、表示の見直しが行われているかどうかを秋田県と宮城県で確認したところ、どちらの県も厚労省の通知があっても調査もしていないという状況でした。使われていれば食品衛生法違反であり、不当表示にあたると思います。

消費者目線に立った農水省に変革して、こういった制度は見直しをお願いしたいと思います。

安田:最後のパネリストは内閣府の事故米穀の不正規流通問題に関する有識者会議委員をされております、弁護士の神山美智子さんにお願いします。

神山:事故米の問題が起きて、9月17日に消費者庁を前倒しにやるという新聞報道がありまして、急遽こういう委員会ができて、私もある議員が無理やり押し込んで委員となり、8名の委員会ができました。19日が第1回で、1週間に2回のペースで開かれています。消費者の傍聴は非常に少ないので、是非傍聴してください。直前まで場所が決まらないのは大きな問題で、バタバタ状態の会議のため開催予定がホームページに載らない。日程の直前に国民生活局へ電話で場所を確認して行っていただきたいと思います。だいたい財務省の後ろ側にある総合庁舎の4号館が多いのですが。

11月の第2週になるかもしれないという状況ですが、それまでに原因究明と責任追及についての意見を一応まとめる。それが済んだら1週間に2度などというきついスケジュールは止めて、もう少しゆっくりと長期的な課題を検討しようということですが、いつ終りになるか分からないということです。

問題にくわしい安田さんのような方が必要な質問をまとめてつないでくださらないと、お米のことを分からないままで聞いていることになります。厚生労働省と農水省の関係も分からないとか、そんなところから聞いているのでなかなか進みません。核心を突く質問を私に寄せていただきたいと思います。

そんな中で分かった点です。一番驚いたことですが、事故米というのは汚染米のことではないということです。事故米とは袋が破れたとか、水に濡れたとか、そういうものを想定して作られています。物品の事故処理要領を出してもらいましたが、事故品の売却処理に「事故品については極力主食用に充当することとし」と書いてあるんです。今私たちが問題にしているのは、アフラトキシンがついているとか、メタミドホスが残っているということが頭にありますけど、事故品の売却要領にはそういうものは無いわけです。主食用に充当できないもので、分任物品管理者が主食用不適として認定したお米は品質の程度を勘案の上で用途を決定するということになって、工業用糊などに売られることになっているわけです。

ここでよく出てくるのがカドミ米とこの事故米との比較ですが、カドミ米はカドミ米を買って工業用の合板用接着剤として売るという要領が決まっていて契約書もあります。その時は、後でちゃんと合板用糊に売られているかどうかチェックするという条項が入っています。不十分だそうですが、とにかくそういう条項が入っているんですね。ところが事故米の方には後々チェックするという条項が入っていないんです。

その違いはこの間の説明で分かったのですが、カドミ米はご承知の通り、厚労省食品衛生法の基準が1ppm、農水省の買い上げる基準が0.4ppmです。0.4〜1の間は食品として違反ではなく、売って構わないわけです。ですから、0.4〜1の間は転用される恐れがあることが始めから分かっているので、転用されないように色を付けて破砕して、後々までチェックするという体制を取っているんだそうです。しかし、事故米は食品衛生法違反なので、違反品を売るとは思わなかったと言います。ですから、後をチェックするという条文が入っていないということなのです。

三笠フーズへ検査に行ったという96回の出張伺いを全部出してもらいました。これは検査ではないのです。三笠フーズは米を破砕し粉にしますが、その手続きに立ち会っているということなのです。検査マニュアルもありませんでした。10月10日にようやく検査マニュアルができましたが、前回の会合で委員の秋山弁護士から、立ち会い検査にあたる検査官の心得に対して「このマニュアルはおかしい。こんな心得ではダメだからもう一度見直せ」という意見も出ていました。米粉にしているところまでを見ているだけで、マルモ商事に行っていると書いてある先までいくような仕組みになっていないのです。

厚生労働省からも説明を受けていますが、それによりますと今問題になっている米は検疫で引っかかったお米ではない、アフラトキシンの萌芽はあったのだろうがカビが生じたのは備蓄の間であることを何度も言っています。農薬はポジティブリスト制施行後に調べたので、輸入時に調べたのではないのだそうです。厚労省は輸入検疫に引っかかったものは廃棄か、積み戻しか、非食用に転用しろと言ってお終いなのですが、「見た目が同じで食べられそうなものを食品衛生法の範疇からはずれたからと言って終わりにして、食用に転用される危惧は持たなかったのか」と前回の会議で質問が出ました。厚労省の返事は「それは農水が管理するもので、私たちはそんなことまでは思いませんでした」というものでした。 事故米穀の売却処理要領の中にある違約金が差額の30%と非常に低かったものを、安く買って高く売った時は130%の違約金を取ると平成19年5月に改正したということでした。

やっとできた検査マニュアルも不充分なものだと思います。これから、汚染米のようなものは絶対に倉庫から出さないという方向にするという話でしたが、「出さないではなく、買わない」ではないか。わざわざ食用のお金を買うよう商社に依頼し、買ってきたお米が食べられなかった時にどうしてそれを引き取るのか、そこが分からない。厚労省の資料に、SBS米や関税化米はほとんど積み戻しと廃棄とありますが、政府に売るものは非食用転用なんだそうです。政府に安く売るくらいなら、積み戻して代金を返却してもらうなどするのではないかと思うのですが、政府米に非食用転用の流れがあって、商社自身が非食用に転用するのは非常に少なく、ほとんどが積み戻しと廃棄なんだそうです。座長も秋山委員も私も弁護士なので、食べられないものを買ってきたことは債務不履行で、ものを返してお金を返してもらうべきではないか、どうして積み戻しは金がかかるからという話になるのか理解できません。積み戻し、廃棄は費用がかかるから転用するということですが、非常にお金が無駄に使われている気がします。 みなさん、是非たくさん傍聴に来てください。お願いします。

汚染米から米流通を考えるシンポジウム 第二部はこちら

(2008/11/27)

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