タイトル 「食政策センター ビジョン21」主宰の安田節子公式ウェブサイト/
リンクは自由です(連絡不要)/お問い合わせは管理者まで

安田節子ドットコム

 

米国産牛肉使用について食関連企業にアンケートを実施


はじめに

昨年12月12日に、輸入禁止だった米国産牛肉が輸入再開されました。ところが1月20日に成田検疫所で米国産冷蔵牛肉の輸入ロットから危険部位のせき柱がついたままの肉が見つかり再び輸入禁止になりました。輸入ロット41箱(約390s)のうち、3箱(約55s)に脊柱が入っていたのです。

また、香港でも同様に骨混入が2回も見つかり輸入停止になりました。香港が輸入停止にした米国工場はいずれも対日輸出施設の認証を受けている工場でした。

こうした米国の安全管理のきわめて杜撰な実態が浮き彫りにされ、とうてい輸入再開はありえないと誰もが思うのが当然です。ところが、3月31日、米通商代表部(USTR)は、06年版の貿易障壁報告書を発表し、「日本に(米国牛肉の)早期輸入再開を迫る」とし、さらにあろうことか、輸入基準を生後20ヶ月以下から30カ月以下に拡大するよう日本に求めることを示したのです。

この無理無体、厚顔無恥、理不尽極まりない横暴に対し、毅然と拒否するどころか、日本の現小泉政権は遠からず屈するのではないでしょうか。

2月に、すでに輸入再開について米国との協議が取りざたされていました。そこで、ビジョン21は、食関連企業約90社にアンケートを実施することにしました。

3月4日付けで以下のアンケートを企業の「広報室」、「お客様相談窓口」、「ご意見」のウエブアドレスまたは意見送信フォームにインターネット送信で行いました。アドレスのない企業数社にはファックスを送りました。締め切りの15日までに返信のなかった企業には再度メール送信と電話がけを行いました。

アンケート設問

企業に送ったアンケートは以下のとおり。

米国牛肉輸入についてのアンケート
 
御社名
記入者お名前
E-Mail
電話
fax

質問1 昨年12月にアメリカ産牛肉の輸入が再開されたときに、アメリカ産牛肉 を使用しましたか?
1.使った
2.使わなかった
3.その他(      )

質問2 今現在は、どこの産地の牛肉を使用していますか?
1.国産
2.オーストラリア産
3.・中国産
4.その他(      )

質問3 アメリカ産牛肉の輸入が再開されれば、アメリカ産牛肉を使用します か?
1.使う
2.使用する予定はない
3.様子を見て検討
4.その他(      )

質問4

A 加工業者の方への質問

どこの産地の牛を使用しているか、パッケージに表示する予定はありますか?
1.表示しない
2.表示する
3.すでに表示している
4.その他(      )

B 外食産業の方への質問

どこの産地の牛を使用しているか、メニューに表示する予定はありますか?
1.表示しない
2.表示する
3.すでに表示している
4.その他(      )

質問5 「牛」という生き物について、どのような知識、考え方をお持ちですか?

以上です。ご協力ありがとうございました。

企業からの回答

回答結果ページ ※直リンクOK

アンケート回答結果から

1)回答が来た企業はすべて設問1「昨年12月にアメリカ産牛肉の輸入が再開されたときに、アメリカ産牛肉を使用しましたか?」に 2の「使わなかった」との回答となっている。

このことから、無回答の企業のなかにはまっさきに輸入した丸大食品なども含まれており、「使った」がゆえに回答してこなかった企業が多いのではと思われる。

2)設問2「現在どこの産地の牛肉を使用していますか?」への回答から国産使用もあるが、オーストラリア産とニュージーランド産の使用が多かった。両国は狂牛病の未発生国であり、価格的に国産よりも安いからと思われる。中国産使用は一件(本家かまどや)だけあった。やはり信頼性に疑問があるのかもしれない。

3)設問3「アメリカ産牛肉の輸入が再開されれば、使用しますか?」については設問1と同様、回答企業は「使う」というところはなかった。回答2「使用する予定はない」と回答した、食材の安全確保を最優先にするという姿勢を貫く企業は多くはない。回答3「様子をみて検討」の場合、油断できない。同業他社の動きを見てとか、キューピーの記述にあるように社会的に拒否感が薄れれば使うという姿勢だ。つまりは「ほとぼりが冷めれば使う」ということ。価格競争のもとでは他社が安い米国肉を使用すれば、自分のところも使わねばと考えるのだろう。しかし、信頼こそ企業の最大の競争力と経営者は認識すべきだろう。

4)設問4「表示」については3「すでに表示している」2「表示する」を選んだ外食企業があるのは評価できる。加工食品企業では伊藤ハムとエスビーが一部表示、カゴメがHPで公開しているとの回答。加工食品はゼラチン、コラーゲン,エキス,牛骨カルシウムなど使用するが、そうした原料について消費者は知りたいのだ。法律が要求していないからではなく、進んで表示をしてほしい。

5)設問5は牛という生き物を取り扱っている企業がどういう感性を持っているか知りたいとの意見で入れた。しかし、意図が伝えきれず、回答は少なかった。電話でやりとりした担当者には意図を説明し、記述回答をもらった企業もあるが、生き物という意識ではなく、やはり他の原料と同列の見かたにあると感じた。これは消費者側への問いでもある。

6)業界こぞって無回答だったカレーショップと宅配ピザ業界は念のため壱番屋とドミノ・ピザに電話で確認をしたところ、回答せずと記載して結構との対応であった。これらの業界は使って当然という業界のようだ。

なお、今回のアンケートは主にメールで送付し、メールで回答をもらう方法を取った。ウェブサイトが機能していない企業が多く、ご意見フォームに届けても、担当者に届いていないケースが見られた。無回答企業の場合、このことの留意が必要。 ただ無回答企業に電話がけを行ったが、消費者の声を聞く姿勢のないような対応の企業が多かった。

また、外食、コンビニなどフランチャイズ企業が多くみられるが、ウエブサイトでは、ビジネスチャンスのことばかりを前面に出していたり、「食材は、本部で一括仕入れ」とか、なにも記載がない企業もあった。食品安全の企業ポリシーが見えないことが、とても気になった。

(2006/4/21)

[INDEX][遺伝子組み換え食品目次][遺伝子組み換え食品コラム・目次]

©2000 Setsuko Yasuda All rights reserved.