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日本有機農業研究会が野外栽培反対の申し入れ書を提出


野外栽培反対の申し入れ書

去る2月14日、愛媛県今治市で行われた日本有機農業研究会大会で採択された『特別決議・遺伝子組み換え作物の国内栽培をやめさせよう』とともに以下の申し入れ書が、農林水産大臣・亀井義之宛で提出されました。

以下、申し入れ書

2004年2月16日
農林水産大臣
亀井義之殿

遺伝子組み換え作物の国内栽培に反対する特別決議(意見)の申し入れ

「遺伝子組み換え生物使用規正法」の施行に関連して、このたび貴省が出している栽培指針案に関連し、去る2月14、15日の両日に愛媛県今治市で開催された本会の第32回日本有機農業研究会大会において、別添のように、「実験・実用を問わず野外での遺伝子組み換え作物の栽培に反対」する特別決議を大会出席者約600人の満場の拍手で採択いたしました。これを「意見」として送付いたしますので、よろしくご配慮のほど、お願い申し上げます。

この数年のあいだに、各地で、実験用の野外栽培と、実用化に向けた試験的作付け(モンサント社ラウンドアップ大豆など)がなされていますが、農業生産者も、市民消費者も大きな不安と危機感を募らせています。遺伝子組み換え作物がひとたび日本の農地にまかれてしまえば、交雑が免れないばかりか、代々にわたり広がります。カナダのシュマイザー事件は、汚染の責任より遺伝子レベルの特許が優先されるという道理に反した下級審の判決が出されたもので、今、よりまともな最高裁判所の判決を待っているところです。かつてPCBで地球全体を汚し、ベトナム戦争では枯葉剤を撒き散らした同じ多国籍企業が、今度は農業、食料に触手を伸ばし、かけがえのない在来種や農地が危機に瀕しているのが今の状況です。

BSE問題では、“国”すなわち行政に携わる職員一人ひとりの危機感の希薄さが“重大な失政”につながりました。今、まさに、この危機を真正面から受け止める“人間の顔”をもつ行政が求められています。

北海道、滋賀県、茨城県などのきびしい規制条例案を、誰よりも安全・安心できる作物を作ろうとしている農民こそが求めています。消費者の“安全である権利”に加え、生産者の“安全な食品を作る権利”を、国が率先して保護することを求めます。

特定非営利法人 日本有機農業研究会
理事長 佐藤喜作

2004(平成16)年2月14日 第32回日本有機農業研究会全国大会・えひめ大会

特別決議 遺伝子組み換え作物の国内栽培をやめさせよう!

生物多様性条約のカルタヘナ議定書に関する国内法の施行を前に、国(農林水産省)は、遺伝子組み換え作物の野外での実験栽培に関する指針案を公表し、通常の品種との距離を大豆10メートル、イネ20メートル、トウモロコシ600メートル、ナタネ600メートルをとればよいと示した。だが、隔離距離の設定では、交雑や混入がもたらす「遺伝子汚染」は防げない。自然の営みは単純ではないからである。すでにアメリカ、カナダでは、組み換え遺伝子による汚染が回収不能にまで広がっている。私たちは、実験・実用を問わず野外での遺伝子組み換え作物の栽培に反対である。

ゆたかな自然のなかで、何千年ものあいだに、多様な作物や品種がつくられてきた。私たちは、遺伝子組み換え品種を必要としないばかりか、除草剤を作物の上から浴びせたり、殺虫性の毒素を生成するような、利益と効率優先の破壊的な農法をとうてい認めることはできない。しかも、特許をもつ企業による農民・農業・農村の支配と横暴をみれば、そのような種子をかけがえのない農地に播かせてはならない。ひとたび栽培されれば、安全・安心、環境と調和する農と食の根底が崩されてしまう。

国は、こうした危機を真正面から捉え、北海道や滋賀県、茨城県の厳しい栽培規制条例案を支持し、各地の生産者、消費者の声や意見書に真摯に耳を傾け、国内栽培をさせないとする立場に立つ規制を率先してつくるべきである。

いのちの食べものとして受け継がれてきた在来の大豆や菜種、稲や麦を植えよう。そして、それらの種子やそれとともにある農法・文化を守り育て、すこやかな「いのち」を次世代に引き継いでいこう。

(2004/2/20)

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