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モンサントのビジネス再編 医薬成分生成組み換え作物から撤退


モンサント社、撤退のニュース

ニューヨークタイムズ2003年10月16日記事によれば、モンサント社は、医薬成分生成の組み換え作物生産から撤退すると発表しました。社員1,200人(全社員の7〜9パーセント)を解雇するとの事。

遺伝子組み換えによって医薬成分を作物に生成させる開発を行ってきた同社ですが、環境運動グループからだけでなく、医薬品を含んだトウモロコシがコーン・フレークに入ってしまうことを心配する食品企業からも反対されていました。

実際、昨年にProdiGene社が開発した医薬成分生成組み換えトウモロコシが、大豆畑に生えて収穫物に混入したり、自生していることが発見されて問題となり、生産規制が強化されました。

モンサント社は、主要なビジネスである農業化学部門を見直し、ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え小麦の開発は続けるが、欧州から小麦や大麦の種子ビジネスは撤退するとの事。

またモンサント社の第四・四半期はアラバマ州住民に対する汚染訴訟の賠償金支払いも大きく、1億8800万ドルの赤字を出しました。

関連情報として、英国ガーディアン紙10月16日は、「モンサントがヨーロッパから撤退 」という題の記事を載せています。

英国ガーディアン紙10月16日より

モンサント社はヨーロッパの穀物ビジネスから撤退する。125人いたヨーロッパの穀物ビジネス本部を閉じることを昨日明らかにした。

モンサントは当時GMの楽観論が高かった1998年にユニリーバから穀物ビジネスを買い取った。小麦の利潤が大きいとみたからだ。しかし、5年後の今年、撤退を決定したのは、遺伝子組み換え小麦導入に失敗したからだ。

モ社は英国での除草剤耐性ナタネの事業も再編する。フランス、ドイツおよびチェコ共和国にある育種場も影響されるだろう。

モンサントは、英国政府が行ったGM作物の農場規模での生物影響評価の結果が発表される17日の前夜にこの決定を発表した。この影響評価では除草剤耐性のGMナタネやシュガービートが野鳥や蝶、土壌生物を著しく減少させるという悪影響が明らかにされる見込みだったからだ。

さらに、圧倒的な英国民が不安や疑念、敵意をGM作物に抱いていることが、このたび行われた大規模な公開討論会で明らかになった。650を越える市民集会が国中で開催され、公に国民の不安が確認された。アンケートに答えた37,000人のうち、54%がGM作物の国内栽培に拒否を示した。

安田節子によるコメント

このようにGM作物への激しい逆風を受け、モンサント社はついに欧州から撤退することになりました。

しかし、モンサント社は依然組み換え小麦に執着し、組み換えトウモロコシ、大豆、綿花では鼻息は荒い。欧州のかわりに、アジア、アフリカ、南米など途上国へ一層ビジネスを集中させる可能性があります。

英国政府の環境影響の新しい知見を踏まえ、日本政府が国内生産禁止措置を速やかにとるよう、世論を喚起していく必要があります。日本の規制はアジア諸国へ影響力を持つことも念頭にいれてがんばりましょう!

(2003/10/18)

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