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日本での遺伝子汚染の瀬戸際 谷和原に続いて滋賀県中主町で組み換え大豆作付け!


バイオ作物懇話会とは何か?

「バイオ作物懇話会」(長友勝利代表・宮崎県)がモンサント社の、ラウンドアップ(除草剤)耐性組み換え大豆を各地の生産者に作付けさせる活動を始めて3年目になります。一昨年は9ヶ所、昨年は6ヶ所、全国で、農家の一般農地に作付けを行ってきました。

「バイオ作物懇話会」の実態は不明です。モンサント社の組み換え種子が無償供与されていることや、農家に土地の使用料、作付け料などを払って作付けを指導していることから、その資金の出所も含めモンサント社との関係が疑われています。

日本で開花していたGMO

これまでの作付けでは、生育中にラウンドアップを散布して耐性効果を見せるのが目的で、開花前には刈り取らせていました。これはモンサント社の意向で、種子(特許がかかっている)を採らせないための措置ではあったのですが、幸い、花粉の遺伝子汚染はなくてすんでいました。

今年は全国で1ヶ所、茨城県谷和原(やわら)村の農家が、周囲への説明もないままに作付けしていたことがわかりました。そこで7月23日、現地集会が開かれたのですが、参加者たちが畑に行って目にしたのは開花が始まっている大豆でした。

農水省に申し入れ

農水省は昨年11月「組み換え大豆栽培の場合の留意点」という文書を各地の農政局および日本モンサント社に出し、「栽培にあたっては事前に周辺地域、住民の理解を十分に得ること、交雑、混入防止の措置を行うことを徹底すること」を求めています。

そこで中村敦夫参議院議員に依頼し、急遽7月25日に農水省を呼んで谷和原で開花していることへの対応を申し入れました。農水省は、文書は「指導」ではなく、あくまで「お願い」であるからと逃げたのですが、最終的に農水省主催で谷和原での関係者協議をもつことを約束。しかし、翌26日下記の経緯により組み換え大豆は刈り取られました。

刈り取られた経緯

地元では、遺伝子汚染を懸念して結成された「遺伝子組み換え作物いらない!茨城ネットワーク」やJAなどが、バイオ作物懇話会の長友氏と生産農家に、刈り取りを申し入れたが、処分期限の7月25日になっても刈り取りを拒否。26日不織布のシートで覆うことを作付け農家に申し入れ、同意を得て、作業にとりかかるも、強風のため断念。参加者の解散直後、強風で花粉が周囲に飛散している状況に一部の人達によって組み換え大豆は土中に鋤き込まれた。

 この行動が一部マスコミに取り上げられたが、経緯が正しく報道されているとはいえず、また警察の事情聴取が行なわれるなかで、「茨城ネットワーク」は8月3日谷和原での緊急集会を開催。全国から100名近くの人が集まり会場は満席。参加できない組織・個人からは多数の支援メッセージが届けられました。

常総生協の大石光伸さんの経過説明によると、STAFF(農林水産先端技術産業振興センター)の刈谷参与が6月末、谷和原村農政課に来て「開花前に刈り取る」と説明していたこと。(STAFFは農水省所管の社団法人だが、谷和原の作付け農家に口利きをしたのがSTAFF職員であり、またその畑の見学会を行うなど、バイオ作物懇話会と一体となった活動が問題視されている。)ところが長友氏は7月25日のやりとりで、「枝豆と雑草の二次発生(スーパー雑草の確認)の時期まで検証する」と開花前の刈り取りを拒否したというのです。

基調報告を行った日本有機農業研究会の魚住道郎さんは、「花粉の飛散はGM作物による遺伝子汚染の始まり。国内には各地で特産の大豆があり、在来品種はかけがいのない先祖からの贈り物。それらの種子に混入、汚染があればもう取り返すことは出来ない」「在来の食物が、特定多国籍企業によって滅ぼされることに対する、民族として、人間としての誇りを守る闘いである」と、茨城特産の納豆小粒大豆や青大豆などを持参して発言しました。

中村敦夫参議院議員は「経済発展のためバイオ産業という新事業を立て、技術革新を金科玉条のごとく扱う国策への疑問」や「経済がどうなろうと食べるものさえあれば人間は生きていける。21世紀は利益を奪い合う時代ではない、子孫たちに地球の大切な財産を残すための世紀にしなければならない」と述べました。

私からは、「種子は人類の共有財産、公共財であるにも関わらず、WTOルールでは、特定多国籍企業の知的所有権の方を上に置き、北米では遺伝子汚染を起こした側が汚染を受けた側を提訴したり、賠償金をとるような、さかさまの論理がまかり通っている」「モンサント社の狙いは、日本で売れるはずのない組み換え大豆の商品化ではなく、国内に遺伝子汚染を引き起こすことで、消費者に国産100%大豆という非組み換えの選択権を諦めさせ、米国大豆を受け入れさせることにあるのではないか、そして日本の農家も賠償金を取られるような事態がくるかもしれない」「生命体は自己増殖するので、遺伝子汚染は年数を経るごとに広がっていく」と危機感を表明しました。

実際、JAは組み換え作物を扱わない決定をしているし、懇話会の作付け大豆は搾油用の米国品種のため、味が悪く日本での商品化は無理と見られているのです。

集会後、当該畑を見たが、僅か数十メートル離れた数ヶ所に大豆畑があり、たとえネットを被せて蜜蜂を防いだとしても、風が吹けば花粉が運ばれ、交雑の可能性があったこと、当時開花がすでに始まっており、花粉汚染のぎりぎりの限界だったと推測されました。

農水省「汚染されても有機」のトンデモ発言

これらを踏まえ、8月6日、衆議院議員会館で組み換え作物国内生産に関連する行政交渉を農水省、厚生労働省、食品安全委員会を呼んで行いました。

農林水産技術会議事務局安全課は、谷和原の件について、農水省としては、認可を受けた組み換え品種は基本的には作付けは自由であること、ただ地元の了解や交雑防止措置を採るようお願いしたいという立場、さらに有機農家が、遺伝子汚染の被害を受けた場合、作られ方が有機認証の条件を満たしていれば、汚染を受けても有機認証はされると答弁。会場から一斉に驚きと怒りの声がわきあがりました。

滋賀県でも作付け中という事実が明らかになる

バイオ作物懇話会の組み換え大豆作付け活動に対し、汚染されない権利の保障、風評被害の責任などについてまともな回答がなく、責任ある指導も規制もとろうとしない農水省の姿勢が改めて明らかになりました。

これに引き続き、8月7日と12日にも農水省交渉が行われました。12日の交渉で、今年の作付けは谷和原だけなのか、他には行っていないのかを質問したところ、農水省は滋賀県中主町で作付け中であることをしぶしぶ明らかにしました。

「バイオ作物懇話会」長友氏は谷和原の鋤きこみが行われた7月下旬に滋賀県中主町で組み換え大豆を20a作付、ここでも「枝豆までやる」と長友氏は明言しているといいます。

また、同時期、岐阜県瑞穂市の畑20aにも播種が行われたが、県が栽培者を指導して断念させ、水を入れて腐らせる措置をとったという事です。

聞かれなければこの事実を隠したままでいようとした農水省、汚染防止の具体的措置をなにも示さないまま、次々と問題が各地で引き起こされるのを見過ごそうとしているのは行政の不作為に当たります。

そして協議の最後に「バイオ作物懇話会」の活動を「評価する」と本音発言をした農水省技術安全課。国策として組み換え推進の立場にあるのでしょうが、日本の農業がバイテクによる米国型企業農業を目指すのでは進路を誤まります。

消費者の支持のない作物、回復不可能な環境汚染、汚染による在来種子遺伝子の喪失、有機農業への汚染などを招来する、ことの重大性を認識してほしいと切に思います。

中主町組み換え大豆の汚染を許すな!開花前刈り取りを要請しよう

茨城ネットワークニュースから転載

※7月下旬に播種された組み換え大豆は9月はじめには開花予定!

【場所】滋賀県野洲郡中主町(ちゅうずまち)……守山市と近江八幡市の間

【面積】30aの畑の内側20aの作付け

以下に中主町の組み換え大豆の汚染防止(開花前刈り取り)を要請してください。

近畿農政局:京都農林水産総合庁舎内 tel/075-451-9161(大代表)
滋賀県農政水産部農政課 tel/077-528-3810〜3817
滋賀県中主町:tel/077-589-6315(中主町農政課)
※滋賀県では「環境こだわり農業推進条例」を制定している。
滋賀県中主町:tel/077-589-6315(中主町農政課)
滋賀県国松知事へfaxやメールを!

(2003/8/15)

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