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茨城県谷和原村の組み換え大豆をめぐる行政交渉記録


はじめに

茨城県谷和原村の組み換え大豆作付け農家、高津さんから、バイオ作物懇話会(長友勝利代表)の指導で開花させて、結実を見てから刈り取る予定との情報を得て、中村敦夫議員に国会で農水省に質問をしてもらう段取りでしたが、問責決議案提出などで流れたため、急遽質問項目への回答を7月25日に直接面談で行うことになりました。安田の覚書ですが、農水省官僚とのやりとりのあらすじをお知らせします。

農水省官僚とのやりとり

農水省側出席者:

  1. 農水省農産安全管理課
  2. 農林水産技術会議事務局技術安全課
  3. 農産振興課
  4. 環境保全型農業対策室
  5. 種苗課

からの5名

事前提出の質問項目とその回答および参加者とのやりとり

質問1:日本国内の組み換え大豆の作付けの情報を把握しているか

農水省:
安全性評価を経たものであり、把握する必要があるものではないが、モンサント社からの情報提供で承知している。
参加者:
モンサント社の好意で知らせてもらっているという状態でいいのか。英国や米国などでは試験栽培を行った農地情報を把握し、情報を公開している。汚染があった場合の対応のためにも作付け農地の報告義務を課すなり、役所の把握が必須ではないか。
参加者:
生産農地とまわりの農地との間の緩衝地帯はどれだけとるようモンサントは指導しているのか。商業栽培の米国でさえ、緩衝地帯を設けることを義務づけている。
農水省:
谷和原は、まわりに交雑のおそれはない環境とモンサントはいっている。
参加者:
緩衝地帯は何メートルとっているのか。
農水省:
聞いていない。
参加者:
農林水産先端技術振興センター(STAFF)は農水省の監督のもとにあるはず。STAFFがモンサント社や長友氏と一体となって組み換え大豆作付けの引き受け農家を探したり口利きしたりしている。STAFFはPAが仕事であって、バイオ作物懇談会(やモンサント社)の仕事を手伝うのはおかしい。
昨年11月、農水省農林水産技術会議技術安全課長と生産局農産振興課長名で各農政局に、組み換え大豆栽培の「留意点について」とする文書で交雑を防ぐ措置や周辺地域・近隣住民の理解を十分に得るよう書いてある。この文書は指導なのか。
農水省:
指針にもとづいて栽培まで認可されたもので、安全性については承認されている。「留意点について」で言っている事項はお願い。指導ではなく、あくまでお願いの文書だ。
参加者:
6月23日STAFFの刈谷理事が茨城県に「開花前に刈り取る」と事前栽培報告をしているのに、高津さんは長友さんより開花させるよう指導を受けていて地元のわれわれの刈り取り要請を拒否している。矛盾がある。この文書の中身を「お願い」ではなく「指導」にできないのか。
農水省:
(返答ナシ)
参加者:
今年は開花させるということを知っていたか。知ったとしたらいつ、誰から情報を得たのか。
農水省:
知らなかった。(この場のために)今朝長友さんへ電話を入れて知った。

質問2:これまで作付けした農地で土壌微生物の変化など汚染がないか調べられなければならないが、行っているのか。

農水省:
(組み換え大豆の)安全性は評価済み。現在作付け農地についてはしていない。

質問3:本年度は、全国何箇所か、場所、生産者名、面積、交雑を防ぐ管理体制の確認について具体的にどのように実効性ある指導をおこなっているか。

農水省:
今年は一箇所、谷和原のみと聞いている。

質問4:モンサント社が提供する大豆種子が、果たして日本が認可した品種であり、他の未認可の品種の混入がないものなのか、確認しているか。混入がないというならそれはどのように担保されているのか。 開花させ、花粉の交雑、混入、こぼれ種子の問題が顕在化したとき、回収費用、風評被害も含め、その責任は誰がとるのか。責任の所在を明らかにせよ。

農水省:
モンサント社が農家に提供する種子について混入確認はしていない。カルタヘナ議定書対応法が来年早々施行される見通しであり、そうなったら、疑わしい場合、立ち入り検査はできる。
交雑や風評被害など発生した場合の責任主体は、開発者(モンサント社)になる。
参加者:
そういう契約書なり、法律文があるのか。(返答ナシ)
モンサント社は世界中で、これまで汚染を引き起こしていながら、汚染責任を取ったことは一度もない。逆に汚染を受けた者に対して、特許のかかった種子を使用したとして罰金を取り立てるというさかさまのことがまかり通っている。

質問5:谷和原ですでに花が咲いている。いったん開花させれば花粉が飛び、交雑のリスクが生まれる。生産者にモンサント社は、モンサント社の実験では交雑は起きなかったと説明しているそうだが、日本は大豆の原産地といっていいほど多種多様の大豆品種がある。交雑を防ぐ指導はどのように行うのか。

農水省:
大豆の交雑はつる豆ぐらいでほとんど起きない。
参加者:
そんなことではなく、在来大豆へ遺伝子汚染が起こる。在来大豆生産者の汚染されない権利をどう守るのか。
農水省:
商業栽培の時になれば、表示がされるのでIPハンドリングが検討されるだろう。
参加者:
安全性が確認されているとか、商業利用になったときの分別IPハンドリングや表示ということではない。今問題になっているのは、「実験栽培を一般ほ場」で行っており、となりの商業栽培(大豆生産)している生産者の大豆が遺伝子汚染されたときに、当然JAS表示の網をかけられるわけで、そのときの大豆生産者はこれまでの「国内産だからnonGM」という表示はできなくなり「不分別」にしかならない。このときの損害を誰が責任を持つのか。我々も長友氏に即刻刈り取りをお願いしている。農水省が指導ができずに「お願い」しかできないならお願いでもよいから、刈り取りをお願いしてもらいたい。何もできないなら長友と我々周辺住民とのつなぎをやってもらいたい。
中村議員:
農水省は一度この畑を見に行く必要があるのではないか。関係者との協議について、ここで返事をしろと言っても決まらないだろうから、至急持ち帰って返事をもらいたい。(農水省側承知した)
参加者:
米国でIPハンドリングは失敗している。分離はできないし、混入は防げないのが実態だ。日本で商業栽培ができると思うのか。消費者が買わないものを表示して売れるわけがない。それより日本で組み換え大豆を栽培し、混入が起これば、同じ混入大豆なら米国産が圧倒的に安いから、いままで組み換え生産がされていないから国産にこだわって買っていた消費者はあきらめて輸入大豆を受け入れるだろう。モンサント社の狙いはそこにある。また米国・カナダで550件も引き起こしているという汚染を受けた農家に対し、逆に特許侵害として賠償金を取り立てることを日本でもやるかもしれない。モンサント社の戦略は日本で売れるはずも無い組み換え大豆種子を販売することではなく、汚染を作り出すことだということを読み、日本農業を守ることをしてほしい。

その後

  1. 25日夕方、農水省から農水省主催の協議の場を谷和原で開催することを連絡してきました。来週早々の予定です。
  2. 26日(土)谷和原の高津さんの組み換え大豆は誰かによって刈り取られた模様です。

(2003/7/26)

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