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ハイブリッドや遺伝子組み換え種子で賠償金をとりたてる巨大種子企業


はじめに

以下は、Arkansas Democrat-Gazette2003年5月18日David Mercer "SEED MAKERS' SUITS SOW HOSTILITY(敵意を撒く種子企業の訴訟)"の記事をもとにまとめました。

「敵意を撒く種子企業の訴訟」

モンサント社(本社米国)やシンジェンタ社(本社スイス)は、GM種子の開発に力を入れ、いまや種子関連が事業の重要な柱になっています。これらの企業がハイブリッド種子やGM種子を買う米国の農民たちを相手に、国中で多数の訴訟を起こしています。モンサント社だけでもこの5年間で73件もの訴訟を起こしています。企業側が何百万ドルも賠償を要求しています。

モンサント社の種子販売と遺伝子ビジネスでの売上高は2001年と2002年は下落し、シンジェンタ社も、この3年間売り上げは伸びていません(2002年度の年次報告書)。経営がおもわしくない分、特許侵害の訴訟で賠償金をせっせとかせごうとしているように見えます。

モンサント社の場合、モンサントの種子を買った農民に契約書に署名をさせ、種子の保存を禁じています。そして農家が翌年まで種子を保存していないか証拠を求めて定期的に農地を探ることをしています。

シンジェンタ社も同様に私立探偵をやとって農家からこっそり種を買って違法な販売をしていないかをおとりでさぐるようなことをしています。 種子の保存は農家にとって通常の行為でしたが、いまでは契約違反行為とされているのです。

開発企業が非合法の種売買人を捕まえ、会社を守るという努力をすることは認められることですが、取り締まりのやり方が、なんともきたないため、農民や種子の売買を手がけるカントリーエレベーター(倉庫)など小規模経営者たちの敵意を生んでいます。

モンサント社の昨年の売り上げ47億ドルのうち、34パーセントが種子と遺伝子操作によってもたらされました。世界で最も大きいアグロケミカル(農業化学製剤)と種子の企業であるシンジェンタ社の場合、2002年の全販売額62億ドルのうち、種子で9億3700万ドルを売り上げています。

ハイブリッドの種子の場合、連邦植物品種保護法 (Plant Variety Protection Act) によって守られ、農民に若干の植え直し用の種子の保存は認めていますが、種子を他に販売するために保存してはならない規則になっています。

モンサントの遺伝子組み換え種子の場合、ハイブリッドより強い法律上の保護があります。それらは特許を取っているからです。これらの種子を使う農民は毎年、種子を買うことを強制され、彼らが植え直し用の種子を取っておくことはしないという契約に同意させられます。

特許種子の場合、種子会社はこれらの種子を扱うディーラーから特許料を受け取ります。さらにモンサント社の種子は会社が技術料金と呼ぶプレミアム価格で売られます。

米国ではモンサント社の種子のいくつかがマーケットでメインになりました。米国農務省によれば今年植えられた大豆の5分の4が除草剤耐性のモンサント社の種子とのことです。

モンサントの訴訟は、種子を取っておいたと言って農民を訴えます。パイオニアハイブリッドインターナショナル、シンジェンタ、アグリプロ社は、農民やカントリーエレベーター業者、地方の種子ディーラーが販売用の種子──それらは法的に保護されている品種以外の別の表示がされ、価格も安くで売られていた──を保存していたと訴えています。

これらの種子は企業の特許侵害にあたるとして去年の秋、アーカンソー州で9つの訴訟を起こしています。被告とされたのは大部分が中小企業であり、彼らは巨大企業がこうした例を作ろうとしていると信じています。

東アーカンソー穀物会社というちいさなカントリーエレベーターを経営するデイビッド・ブレア氏は、ハイブリッド種子を不注意で販売したことは認めていますが、農業関連産業の巨人によって不公平に仕向けられていると強く主張しました。

販売された証拠の種子は、地域全体の農民が倉庫に持ち込んだ小麦の普通の大箱からのものです。いく種類もの小麦が入っていて、しかもまだ清掃していなかったので小麦の殻や草種を含んでおり、特定のハイブリッド小麦を農民が植えるためにこれを買うということはありえないと述べました。

しかし、東アーカンソー穀物会社は、今年始めにシンジェンタ社に15,000ドルでこのケースを解決せざるをえませんでした。

安田節子コメント

この記事にあるように、巨大種子企業は知的所有権や特許をたてにして、交雑や混入が避けられない環境で、DNA鑑定で動かぬ証拠を示し、弱い立場の農民や中小業者から賠償金を取り立てている現実があります。

訴訟で敗れた方は損害賠償金に加えて、弁護士費用と裁判経費を負担しなければなりません。大変な負担です。また、ときにはそうとう悪辣な手段をとっている様子が見えます。

昨年末の米国のある裁判のケースでは、訴えられた農家がモンサント社との契約書にサインした覚えは無いと証言。一般に種子ディーラーが契約書、あるいはレシートに農民の名前を署名していることが明らかにされています。

そしてディーラーの背後に種子企業がいるとの指摘を企業側は否定しているそうです。

国際的に知的所有権の強化が図られ、特許が莫大な利益と結びつくことから、遺伝子特許戦争と呼ばれるゲノム解読と特許競争が展開されてきました。

世界で最も消費されている穀物、米の遺伝子解析は、2000年6月のモンサント社に続き、2001年にはシンジェンタ社が独自のドラフトシークエンス(大まかな配列)を決定しています。これに対し、『国際イネゲノム塩基配列解析プロジェクト』(IRGSP)は国際チームを組んで、イネの12本ある染色体の塩基配列解読をすすめ、日本などが担当した第1染色体と第4染色体が、2003年6月には米国研究チームが担当した第10染色体の塩基配列解読が作業を完了しました。

データは「サイエンス」誌に掲載するなど公開を建前にしています。公開としたのは、モンサントやシンジェンタの企業による独占に対抗するためと言われています。

こうした難題と問題性が明らかになっている生物特許というものを、禁止すべきです。農民から種を奪い、お金を巻き上げ、大企業の不正な利益のためにしかならないからです。

そして、グローバル企業に「社会的責任」を課し、監視することが必要と思います。

(2003/6/28)

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