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バナナが消える!?


Datamonitor 1月17日 "GM food:Bananadrama !" www.dmfreereports.com より

世界の、食用バナナの供給は10年以内に菌類によって消滅させられるかもしれない。

フランスに本拠を置く、バナナと料理用バナナの改良のための国際ネットワーク (International Network for the Improvement of Banana and Plantain ) はバナナが絶滅しつつある差し迫った危険にあると警告している。

バナナの生産は現在いくつかの脅威に直面している。土壌菌が引き起こすパナマ病によって1950年代に グロス ミシェル (Gros Michel)種が消滅した。

プランテーション生産には、抵抗性のキャベンディシュ (Cavendish) 種がグロス ミシェル種に取って代わった。しかしながら、下生えに潜んでいるもう1つの菌類、black Sigatoka菌が現在世界のたくさんのバナナを枯らしている。

Sigatoka菌は大量使用される殺菌剤の中に含まれ、さらに不幸なことに菌類が殺菌剤に耐性を持つにつれて、バナナはいっそう攻撃されやすくなっていく。

植物も動物もしばしばこのようにして絶滅させられるが、バナナの場合はいっそう深刻だ。

通常、自然界ではその種の耐性系統が生まれ、前のものに取って代わる。 しかし、世界中のすべての食用バナナの木は古代に突然変異したものからの切り枝のクローン(複製)なのだ。

そのため食用バナナは不妊で、しかも耐性系統はない。バナナの消失は深刻な結果を招くだろう。

バナナは豊かな先進国のスーパーマーケット棚を満たす一方、アフリカとアジアの5億の人々のための基本的食物であるからだ。

病気耐性の遺伝子組換えバナナの開発が考えられているが、果たして人々は受け入れるだろうか。

安田節子によるコメント

近代農業が効率や経済性を追求し商品価値の高いものに品種が収斂した結果、生産されない多くの品種が消滅してしまいました。

また、農薬や殺菌剤多用の農法が、虫や細菌に耐性を獲得させます。

そうなれば殺菌剤をまいても効かず、みんな病気になって枯れてしまう。病気に強い品種と交配したくとも、単一生産によって他品種は消滅してしまってないという状況に陥る。生物多様性を失わせてきたつけが表面化しつつあります。

これはバナナだけではありません。パパイアも同様の危機に直面しています。

昨年9月、輸入された米国産生鮮パパイアから、国内で未承認の遺伝子組み換えパパイア「55-1」が見つかり、厚生労働省は18日、輸入業者に対し、食品衛生法(規格基準違反)に基づく検査命令を出しました。

パパイアはハワイの重要な輸出作物だが、病気の蔓延で絶滅の危機にありました。ハワイ大学やコーネル大学などが遺伝子組換え技術によって病気に強い品種を作り出し、商品化しました。

日本に認可申請が出されているのですが、まだ審査中におかれています。

これは遺伝子組換え食品としては初めて生鮮の状態でまるごと食べる組換え食品なのです。消費者はリスクを犯しても食べたいと思うでしょうか。

根本的に誤りを正すことなく、遺伝子組換え技術で対処療法的に一時切り抜けたとしてもさらなる混迷が待ち構えているのではないでしょうか。

近代農業は防除と称し人間が力づくで虫や草や微生物を殺していく農業です。遺伝子組換え技術はその延長線にあります。自然を力でねじ伏せようとする農業は明らかに破綻しつつあります。

(2003/1/31)

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