遺伝子治療で白血病 フランス政府が遺伝子治療を禁止
(ソース:10月4日共同他)
フランスで先天性免疫疾患の治療のため、マウスの白血病ウイルスから作ったベクター(遺伝子の運び役)を使った遺伝子治療を受けた患者(幼児)が、治療が原因で白血病を発症していたことがわかりました。
これは、遺伝子異常でリンパ球の一部が欠け、生後1年前後で大半が死亡する「X連鎖重症複合免疫不全症」の患者に対する遺伝子治療で使われたベクターの使用が原因。
ベクターとは、治療に使う遺伝子を患者の体内に入れる運び役で、無害化したウイルスなどが使われます。正常な細胞から取り出した遺伝子をマウスの白血病ウイルスから作ったベクターを使って患者の造血幹細胞に入れることで、リンパ球の数と機能を回復させるのが狙いです。
このため、フランス政府はすべての患者の遺伝子治療を禁止しました。米国食品医薬品局はこれを受け、米国内で行っていた同様の治療を一時中止。過去に治療を受けた患者にも今回の事態を説明するといいます。
日本国内では1995年から始まった遺伝子治療は現在14病院が承認を受けています。
厚生労働省は、フランスと同じベクターを使う遺伝子治療を認めていた4病院に実施の一時凍結を求めた。4病院のうち、実施を計画していた東北大と北大は遺伝子治療の延期を申し出ました。
既に2人の患者に実施した癌研究会付属病院と、計画中の筑波大病院には新たな治療の自粛を求めます。
しかし、特定のベクターだけが癌を引き起こしたという受け止め方ではなく、フランスのように、遺伝子治療そのものを凍結して調べることが必要ではないでしょうか。
目標への遺伝子ピンポイント挿入は無理
最先端医療としてもたはやされ、安全性を懸念する声はかき消されてきた遺伝子治療。
この遺伝子治療の本領である別の遺伝子をゲノムに挿入するということがガンを引き起こしました。
それは、同じ技術である遺伝子組み換え作物・動物にも同様のリスクがあると考えなければなりません。メイ・ワン・ホー博士(英国)は、ベクターから感染性のウイルスが生み出されるし、ベクターが間違った場所に挿入された結果ガンが生じると述べています。
そして、いまだ正確に目標通りに遺伝子挿入することは技術的に実行不能であり、改めてこの技術について包括的評価が必要だと警鐘を鳴らしています。
(2002/10/12)