世界食料サミットから──種子銀行の危機とバイテク企業
食料サミットでGMO推進?
FAO(国連食糧農業機関)の第2回世界食料サミットが、『飢餓との戦い』をテーマに6月10日から13日までローマで開かれました。
そのサミット宣言では、農業研究機関にバイオ工学を含めて新技術の研究を推進するよう呼びかけました。
資金難の種子銀行
サミットで、国際植物遺伝子資源研究機関(IPGRI)の著名な作物遺伝学者Hawtin長官は、世界の種子銀行が資金不足に陥っており、作物の多様性を保護し、飢餓との戦いを支援するために2億6000万ドルが必要だと訴えました。
現在世界中で約1300ある種子銀行では、およそ600万のサンプルを有しています。
FAO によれば、農業作物の生物多様性は、生産性の高い作物への要求によって急速に縮小してしまいました。長い期間にわたって食物・農業用におよそ1万種の植物品種が使われてきましたが、今では植物性食物の90パーセントが120種ちょっとの品種によって提供されているにすぎないといいます。
干ばつや社会的混乱、ハリケーンなどの後、その地方の共同体が植え付けの種を失ってしまった時、種子銀行は人々がこれまで使ってきた種子を再導入する機会を与えることができます。
またこれまでの品種が病気で絶滅したり、世界的気候変動が起こるとき、生物多様性(遺伝子資源)が必要となります。
そんななか去年の11月に、 FAO 加盟国が世界の作物多様性を保全するための条約を承認しました。
この条約では、種子銀行から得た種子の研究から生じる特許料など、あらゆる商業利益から、種子銀行のための新規基金に一部を支払わなければなりません。発効のためには40カ国の批准が必要です。
遺伝子資源を減少させる元凶
ところでバイテク企業は、「遺伝子組み換え技術は飢餓を救うため」とのプロパガンダを流しています。それなら種子銀行へ2億6000万ドルの資金提供くらいしてみせるべきでしょう。
しかし、現実にはバイテク企業こそが遺伝子資源を減少させる元凶なのです。
遺伝子組み換え作物が、人類の共有財産であり食物の安全保障である遺伝子資源を汚染し、永久に失うリスクを与えています。だから、食料サミットで飢餓の問題にからませて遺伝子組み換え技術の推進を宣言に入れたことは、正しいことではありませんでした。
なお食料サミットに対し、フランス農民連盟のジョゼ・ボペはローマ近郊の遺伝子組み換えオリーブの苗木畑をビニールで覆う抗議行動を行い、これをコンドームに見たてて、遺伝子組み換え作物の花粉飛散による遺伝子汚染の危険性をアピールしました。
(2002/6/20)