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シンジェンタ社がイネゲノムを解読


モンサント社のライバル社がイネゲノムを分析

大手バイテク企業モンサント社は、すでに同社のイネ研究データを一般公開していますが、今回そのライバルであるバイオテクノロジー企業シンジェンタ社(スイス)が4月5日発売の米科学誌サイエンスで、イネゲノムの詳細な分析データを公表しました。

解読された品種

今回解読された品種は、短粒種(ジャポニカ)の「日本晴」。

しかし今回のイネゲノム地図はまだ完全ではなく、シンジェンタ社は約1年半後をめどに、最終版を完成する見込みという。

同誌では同時に長粒種(インディカ)のゲノムデータも掲載。これは中国の北京ゲノム研究所と米ワシントン大学との共同解読によるもの。

イネゲノムを解析する理由

イネゲノム完全解読の試みは、日本政府が助成金を出している『国際イネゲノム塩基配列解析プロジェクト』(IRGSP)のもとでも進行中です。

各国、各社がイネゲノム解析競争にしのぎを削る理由は、コメが世界の主食であるという重要性のみならず、その解析結果が同じ禾本科(穀類)のムギやトウモロコシなどのモデルとして役立つからです。

解析が困難な、ゲノム(塩基配列の長さ)が大きいトウモロコシ(イネの6倍)やコムギ(イネの40倍)との共通部分がイネゲノムには多くあるのです。

今後予想されるイネ関連の動き

今後は、イネ遺伝子の特許取得の動きが活発化するでしょう。

ゲノムをもとに、病気に強いとか栄養成分、収量とかに関係する有用遺伝子を突きとめ、遺伝子組み換え技術で新品種を作り、特許商品化していくでしょう。

こうした動きをどう見るか。

研究者やマスコミはデータベースの無償公開を歓迎し、開発各社がいう「食料飢餓を救うため」というせりふを鸚鵡返しに伝える事でしょう。

「緑の革命」の失敗

しかし「緑の革命」の苦い体験を思い出すべきです。

ロックフェラー財団とフォード財団によって設立された「国際イネ研究所IRRI」が開発した多収量品種「IR8」。

これは奇跡のコメといわれ、当初、アジア諸国で増産をもたらしました。

しかし、それまでになかった農薬と化学肥料の使用、潅漑が必要な品種であった事により、結果的に土壌が劣化し、生態系が破壊され、いまでは生産量は落ちてしまいました。

農薬のせいで川に魚もいなくなり、いまや現金なくしては食べていけない貧しさが各国の人々を苦しめています。

種子支配と特許の脅威が予想される

今度は遺伝子組み換え品種という新品種がもたらされようとしていますが、それには特許がかけられます。

当然自家採種は禁止とされ、農家は毎年種子を買う以外に、種子を入手できなくなります。

おそらく販売用種子にはターミネーター(終結)技術がほどこされるに違いありません。

私たちは、主食のコメ、ムギ、トウモロコシの種子が、ひとにぎりのアグロバイオ企業の手中に握られてしまうことの社会的脅威を問題にしなければなりません。

(2002/4/15)

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