遺伝子組み換え昆虫で世界初の野外実験
2001年12月7日ホットワイアードニュースから要約
2001年10月、遺伝子組み換えをした蛾が米国アリゾナ州の綿花畑に多数放された。これは米国農務省が遺伝子組み換え昆虫の野外実験に初めて認可を与え、歴史的実験にゴーサインを出したからだ。
この実験はアリゾナ州フェニックスにある農務省の施設で金網に囲まれた野外フイールドで行われた。
放たれたのは綿花の害虫である、ワタキバガ(綿牙蛾)で、遺伝子組み換えを行った多数のワタキバガの繁殖能力を調べるのが目的だ。
ワタキバガには緑色に発光するクラゲ遺伝子が組みこまれた。子孫が発光するので繁殖能力(交尾能力)を確認できるからだ。
研究グループは最終的にはクラゲ遺伝子の代わりに致死遺伝子を入れ、幼虫の代謝を変化させ、自然界には存在しない化学物質に依存させるようにするという。
(化学物質を与える)研究室外では生き延びられない幼虫が生まれ、全体の個体数を減らすことができるというものだ。そして数年後のオープンフイールドでの実験に向けて環境影響評価の準備を進めている。
安田節子によるコメント
遺伝子操作した昆虫を環境へ放すという恐るべき事態が目前となっていますが、これが生態系に与える影響を評価することなぞ、果たしてできるのかと思います。
ひとたび環境に置けば、それらを回収することもできないし、2度ともとの生態系、自然にもどすこともできなくなります。
世代交代するうちに、思いもよらない変異を遂げた個体が生まれ、死なずに繁殖したりするかもしれないし、連鎖的に他の生物へ影響を与えていく事もあるでしょう。
マラリアを媒介する蚊を絶やしてしまおうと、蚊の組み換え実験が行われ、これの野外実験も数年内の視野に入っています。
すでに米国の綿花の65%が遺伝子組み換えの殺虫ワタで、ワタキバガを殺す毒素を出しています。
しかし、毒素に耐性を持つワタキバガが生まれるようになり、生産の脅威となっているのです。
そして今度は、蛾の中に毒素を作って殺してしまおうという。まるで魔法使いの弟子のようです。師匠の真似をして、自分も師匠のようにできるとお調子に乗って使った魔法が、止め方がわからず災難を受けるという話のようになりはしないでしょうか。
(2002/1/19)