米国とバイオテクノロジー企業がWTO提訴の脅しでGMOの承認を強制
12月17日地球の友インターナショナル(FoEI)の情報より
バイオテクノロジー推進派の国々が、GMO(遺伝子組換え作物)を禁止する法律を採択しようとする小さな国々を脅している。
■ボリビアのケース
ボリビア政府は2001年8月に、GMOを使った農業製品、副産物および食品の輸入を禁止する決議を強化、期間を延長する公約をした。
しかしボリビアの環境団体FOBOMADEは、政府が国民に告知せず9月にこの禁止を取り消す決議をしていたことを知った。
この背景には、欧州と北米に50億ドル分のGM大豆を輸出しているアルゼンチンの大豆生産企業がバックにいて、アルゼンチン政府代表団がジュネーブでボリビア政府代表団に対し、WTOルールに照らすとボリビアの規制が正当化できる確固とした根拠がないとして、WTOの経済制裁をちらつかせてボリビアを何カ月も脅してきたという事がある。
(なお、アルゼンチンは米国に次ぐ大豆生産国だが、その90%以上は米国モンサントの遺伝子組み換え大豆になっている。種苗会社がことごとくモンサント社に買収された結果だ。アルゼンチンといっても黒幕は米国なのだ。Y)
■スリランカのケース
2001年始め、スリランカは国内でのGMOを禁止する食品法の草案を作成。
インドの在米国農業参事官は、WTOにこの法律を訴える、とスリランカを脅した。スリランカが負ければ、1億9000万ドルの罰金が伴う。
結局米国とオーストラリアからの圧力によって、この禁止の採用は無期限に延期された。
■クロアチアのケース
グリーン・アクション(地球の友クロアチア)が入手した覚書によると、クロアチアの米国大使館は、
「もしGMO一時停止が施行されれば、米政府はWTOの下に米国の権利を考慮する」と言ってクロアチアを脅している。
■EUにも同様の圧力
現在米国は、EUが提案するGMOの表示の義務づけと、製品の原料の出所を追跡可能にする法律を阻止しようとしており、GMOの一時停止も取り下げるよう圧力をかけている。
米国がWTOにおいて、EUに対して貿易紛争を仕掛ける思惑は高まっている。
(現在、テロ対策でEU諸国の協力が欲しい米国は、少し対応を緩めるのではと憶測されている。Y)
安田節子によるコメント
健康や環境を守りたいという各国市民の民主的要求を受け、GMOへ規制をかけるのは国家主権のはずです。
ところがGMO生産国は、WTO協定を使ってこれを貿易障壁として、経済制裁(他の産業への報復関税など)をちらつかせ、圧力をかけて潰しています。
WTOの自由貿易主義とは正義でもなんでもなく、協定は多国籍企業の利益保護のためであったことが、GMOをめぐる動きで明白になっています。
世界中で守られなければならないのは、命と環境のはずです。
▼参考リンク
ボリビアのGMOに関する決議と、アルゼンチン/ボリビア使節団の文書
(2002/1/17)