農水省の意見募集に対し、ビジョン21が意見書を提出
農水省がパブリックコメントを募集中
現在(2002年1月)、農水省は種苗法を改訂し、以下の基準を定めるとして意見募集を行っています。
提出の締め切りは2002年1月18日必着。
個人は住所・氏名・性別・年齢・職業、
法人は法人名・所在地を記載のこと。
あて先 Mail:sesyubyo_comme@nm.maff.go.jp
内容:(新たに「指定種苗の生産等に関する基準」を制定して)遺伝子組み換え作物の種子の取り扱いに関して種苗業者等が遵守すべき規準として、食品衛生法上の安全性が確認されていない遺伝子組み換えとうもろこしの種子が含まれていないことと規定する。
ビジョン21が正式に意見書を送付
これに対し「食政策センター ビジョン21」は以下の内容で、1月11日付けで意見書を送りました。
意見書の内容
- 1.すべての遺伝子組み換え作物種子の国内流通・販売・作付けを禁止すること
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理由:改訂基準では、遺伝子組み換えトウモロコシ種子は未承認の組み換えトウモロコシ品種が混入してはならないというだけのものだが、それはいまさら言うまでもない当たり前のことであり、それよりも、
1 遺伝子組み換えトウモロコシ種子の流通を前提にしていること、
2 食品衛生法で食品として流通を認めた組み換えトウモロコシ品種の混入 は認めるという内容
に問題がある。なぜなら、数年前の安全審査項目にはなかった環境・生態系への影響が、次々と指摘されるようになってきているからだ。
組み換え生物が環境に与える影響評価の手法は未だ確立していない。米国環境保護庁は現在、組み換えの殺虫性トウモロコシ(Btコーン)について、土壌への残留調査や、標的としていない昆虫に関する現地調査、オオカバマダラの個体群に与える長期的な影響の調査、鳥類に食べさせた場合の影響調査、特定の害虫の行動と南北方向への移動に関するモニタリングを開発者に対して要求している。
また、Btコーンの種子を販売する企業に対しては、害虫にBtに対する抵抗性が生じていないかをモニタリングすることなどを求めている。
つまり以上の項目は、これまで評価が行われていなかったということであり、影響が不明なのだ。
モニタリングが必要なのに流通を認める米国のやり方は危険きわまりないことである。
これは遺伝子組み換えトウモロコシのみならず、組み換え大豆や組み換えイネを含むすべての組み換え作物種子に共通する問題点である。
本来なら、遺伝子組み換え承認品種である、ないにかかわらず遺伝子組み換え作物種子の流通・販売・作付けを凍結/禁止すべきである。日本の農業環境を守ることこそ農水省の責任が問われる仕事ではないか。
- 2.普通種子に遺伝子組み換え種子の汚染/混入を禁止すること
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理由:遺伝子組み換えの殺虫トウモロコシ「スターリンク」はアレルギー性のため飼料用としてのみ米国で流通を認められたが、食品に混入し大きな問題となった。
米国で生産禁止となったが2001年作付け予定のトウモロコシ種子の5%、全米281の種子会社のうち、77社(27%)に種子汚染があることが判明している。
予想よりはるかに広範に花粉が飛散し、GM混入のない種子が保証できなくなったり、多種類のGM混入が問題となっている。
日本では市民グループ(ストップ遺伝子組み換え汚染種子ネット)の検査の結果、普通のトウモロコシ種子から未認可の遺伝子組換え品種が高い確率で検出された。
現在トウモロコシ種子のほとんどが米国産であり、組み換え種子の生産国で、汚染の可能性の高い米国からの種子に頼るようになった日本の種子汚染の事態解決は一刻を争う。
普通のトウモロコシ畑で芽生えた組み換えトウモロコシの花粉は回りのトウモロコシを汚染していく。そして、汚染遺伝子を受粉した結果、何百粒もの実となって沢山の子孫に遺伝子を伝えていくので、時間がたつほどに汚染は濃くなって広がっていくからだ。
影響が出てからでは手遅れであり、人が環境を元にもどすことは不可能だ。
国内環境汚染を水際でくい止めるためには普通種子の基準としてすべての遺伝子組み換え種子の混入を厳重に規制すべきである。
農水省は一般種子の汚染に対してあまりにも鈍であり、これはBSEの時と同じ危機管理のなさといわざるを得ない。いまやるべき種苗法の改訂は普通種子の遺伝子組み換え汚染を防ぐことである。
ビジョン21では、食の安全性についての、あまり知られていない情報を中心にした、わかりやすく一般向けの機関紙を発行しています。くわしくはビジョン21案内ページへどうぞ。
(2002/1/12)