推進側の宣伝への反論
推進派「2050年には世界人口は100億になり、食料不足の時代が来る」
「組み換え技術で砂漠で育つ作物、収量の多い作物が開発されれば問題を解決できる。組み換え作物は人類の未来に不可欠だ」
▼反論
1 砂漠で育つ組み換え作物はまだ開発されていません。
強烈な太陽熱のもとで蒸散を押さえて生きる作物を作るのは、相当困難でありましょう。
また、たとえ環境的に生育できる作物が開発できたとしても、生産のために水と肥料が必要となることに変わりはありません。
それらは砂漠にはないから、外部から運ぶしかありません。
当然ながら、そういう農業はコストの高いものとなるでしょう。そして、だれがそれを入手できるのでしょうか。
飢えに直面するのは貧しい人々ですが、彼らの口にコストが高いこの農作物が果たして入るのだろうかと思います。
多収量品種にしたところで、たとえ多収量品種を作り出せたとしても、それを生産するには余分の水と肥料が必要になるのです。
かつての緑の革命もそうでした。あのときも多収量品種を開発、導入しましたが、潅漑と肥料と農薬が必要となり、資本のない農家は続けられずに倒産。スラムの人口が増大しました。
結局環境破壊に繋がり、今では失敗と評価されています。同じことを繰り返してはいけません。
マスコミは、”飢餓を救う”という言葉を鵜呑みに信じ込むのではなく、生物というもの、農業というものを見つめ、想像力をもっと働かせて 考えてほしいと思います。
2 飢餓の発生は食料の量の不足が原因ではありません。
現在は、60億の世界人口を養うのに十分な食料生産がされているのに、毎年1600万人が餓死し、8億の人々が飢餓線上をさまよっているというのが現実なのです。
現在人口増加率が1.7%であるのに対し、食料増産率は2.2%ですから、当面食料の量は足りることになります。なお人口増加率は、今後もっと下がるという見方もあります。
つまり、問題は貧富の差、不公正な食料分配構造にあるということです。
先進国では、飽食で成人病が蔓延し、膨大な食料が廃棄されています。
先進国の過剰な畜産物消費は、大きな問題です。それは、穀物で家畜を飼育することで、結果的に途上国の食料を奪っているという事になるからです。
1kgの牛肉を生産するのは、7kgの穀物を必要とします。そして世界人口の4分の1を占める先進国が、世界で生産される動物性蛋白質の4分の3を消費しています。
3 難民、戦争、地雷、環境破壊などによって食料生産ができなくなる事が、飢餓の大きな原因です
そして、貧困により、食料が売られていても入手できないということになるのです。
こうした問題の解決なしに、飢餓の解決などできません。遺伝子組み換え技術が飢餓を救うというのは、ただのデマゴーグにしかすぎないのです。
推進派「今後は消費者にもメリットあるものができるだろう」
「いままでは、殺虫毒素を持つ作物とか除草剤をかけても枯れない作物など、消費者にはメリットがなく嫌われたが、今後は栄養価を高めた野菜やコメ、ムギなどができるだろう」
▼反論
どのようなものであれ、遺伝子組み換えが引き起こす潜在的危険性や、予測不可能な危険性には変わりがない
実際の話ですが、三井化学がアレルギー物質を減らしたコメを開発したにも関わらず応用化を断念しました。
理由は、ひとつのアレルギー物質(タンパク質)は減らせても、他にいくつもあるアレルギー物質すべてをなくすことはできず、結局アレルギーを持つ人誰もが食べられる低アレルゲン米は作れない事がわかったからです。
万が一できたとしても、それには膨大なコストがかかる事になるので、途方もなく価格の高いコメとなり、商品化は無理と思われます。
最近では、スイスのチューリッヒ大学などが、途上国の人々のビタミンA不足を解消するビタミンA強化の組み換えコメ(ゴールデンライス)を開発しました。
そして、この特許を途上国に無償で提供すると発表しました。
しかし途上国からは、「我々は、自給用作物生産ができ、かぼちゃを食べることができればいいのであり、先進国向け輸出作物の生産に土地を奪われていることが問題なのだ」と指摘されました。
さらに彼らは、「先進国の消費者が望まないものは我々も望まない」と言っています。当然の指摘でしょう。
(2001/7/13)