迫害された記者が伝えたかった事実とは?
危険性を報道しようとして解雇された記者
さて、フロリダでは、なんと次のような事件がおこりました。
■遺伝子操作ホルモンの危険性を報じようとした記者が勝訴(2000年8月31日)
フロリダのテレビ局の記者、ジェーン・エイカー氏は、『米モンサント社が遺伝子操作で作り出した乳牛用の成長ホルモンの、危険性を扱った報道内容を変更せよ』 という局の命令に従わなかったことで、仕事を失った。
この解雇は不当だとしてエイカー氏が起こした裁判で、陪審員団はその主張を認め、テレビ局側に42万5000ドルの賠償を命じる判断を下した。Original articles: Copyrightc 1994-2000 Wired Ventures Inc. and affiliated companies.
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(翻訳 アキコ・フリッド)
迫害を受けた記者が伝えようとした事とは?
それは、局の上層部が、記者を辞めさせてまで握りつぶそうとしたニュースでもあります。それを今回は全てここに書きます。
モンサントが作ったホルモン剤とは?
まず、米国モンサント社が1993年から販売を始めたホルモン剤に、『rBGH(またはrBSTとも。商品名:ポジラック)』 というものがあります。これは、遺伝子組み換え微生物によって作り出したものです。
これを何に使うかというと、乳牛に注射するわけです。
これを毎日注射すると、10%から20%も乳量が増えるといわれているからです。
一見良いもののようですが、実はこれ、 カナダやEUなど、多くの国々で禁止され、使用しているのは米国だけ という代物なのです。
なぜ米国以外の国で使われないかといえば、副作用などの問題があるからです。
具体的に言えば、このホルモン剤は、牛に対して大変大きなストレスをかけてしまうのです。その結果その牛は、乳腺炎にかかりやすくなるので、必然的に抗生物質の使用を増やす事になるのです。
しかしこのホルモン剤の問題は、これだけではすまなかったのです。なんとこれ、我々ヒトの健康上に対するリスクが指摘されているというのです。
人にガンを引き起こす?
懸念されているその仕組みを説明しますね。耳慣れない言葉も出てきますが、ゆっくり読めば大丈夫です。
まず、牛に注射されたrBGH(乳量増やすホルモン剤)ですが、これは牛の血中では、インシュリン様成長因子(IGF-1)という別のホルモンの製造を促すのです。
ちなみにIGF-1というのは、牛にもヒトにも、もともとあるホルモンです。
ところがこれも、不自然に増加してしまうと大問題です。
なぜなら、このIGFというホルモンは、細胞分裂を活発にする働きを持っているため、増えすぎてしまうと、 体内でコントロール不能の細胞分裂・成長(=ガン) を引き起こしてしまうからです。
カナダ政府がこのホルモン剤を禁止した経緯とは?
さて、このホルモン剤の危険性がわかったところで、次にカナダ政府がこのホルモン剤を禁止した時の経緯を説明します。
まず、モンサント社から使用申請を受けたカナダ政府は、政府の科学者に、モンサントの提出データを詳しく調べさせました。
このデータは、モンサントがFDA(註)に提出し、許可されたときのデータであるという事を覚えておいてください。
註:アメリカの食品医薬品局。有害食品の調査、摘発などを行なう政府機関。
さて、そのデータをカナダ政府が調べた所、なんとその中に、
・rBGHがオスのラットの甲状腺にのう腫を作り出していた
・血流でも、このホルモンには活性がある
などの重大なデータを発見したのです。これにより、カナダ政府は国内での使用を禁止しました。
記者にかかった圧力の正体
ここで思い出して欲しいのは、カナダ政府が禁止の根拠としたデータは、このホルモン剤を唯一許可している国である、アメリカが許可の根拠としたデータとまったく同じものであるという点です。
繰り返しますが、同じデータをみて、一方のカナダは禁止したのです。
こうなると黙っていないのが米国の議員たちで、彼らの一部は、FDAがわざと危険なデータを見逃して許可したのではないかということを、厳しく追及しています。
さあ、長くなりましたけども、一番始めに紹介した、圧力がかかって職を失ったフロリダのテレビ局のもと記者、ジェーン・エイカー氏が報道しようとした事実は、以上のようなものだったのです。
ちなみにわが国は米国から乳製品を輸入していますが、 このホルモン剤への規制はまったく無し です。もちろん、検査体制もありません。