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「害はない」をくつがえしたプッシュタイ教授


安全諭を打ち砕いた研究とは

1998年8月に、イギリスのローウェット研究所の、アーバッド・プッシュタイ教授が発表した研究です。

これは、ラットに遺伝子組み換えのジャガイモを食べさせた研究なんですけど、この目的は、害虫抵抗性をもたせた作物が、哺乳類にどう影響を与えるかという、世界ではじめての安全性調査に関する実験でした。

ちなみにこの作物を食べると、害虫は死んでしまいます。ですので、農薬を使わないですむ、環境に優しい作物と、メーカーは宣伝していました。

でも、こういう殺虫性作物を人間が食べても本当に安全なの? というのは、誰もが思う疑問ですよね。

メーカーは今まで、「絶対人には安全」 といいつづけてきたんですけど、このプッシュタイ博士の実験結果によって、その主張は覆されてしまったのです。

恐るべき実験結果

実験結果の要旨は次の通りです。

1 (組み換えジャガイモは)たんぱく質、スターチ、糖、レクチン、トリプシン、カイモトリプシン抑制物質の量が、明らかにもとのジャガイモと異なり、この2種のジャガイモに「実質的同等性」はない。

2 組み換えジャガイモを与えたラットの、脳を含む器官のいくつか、あるいはほとんどの器官において、その重量が低下するという、重要な変化が見られた。

3 熱を加えた組み換えジャガイモを与えたラットに、肝臓の機能低下が見られた。また、免疫器官もたびたび影響を受けた。

4 組み換えジャガイモを食べたラットでは、免疫力が低下している事がわかった。

結論 組み換えジャガイモと普通のジャガイモには、「実質的同等性」はない。そして、組み換えジャガイモを食べる事によって、成長、器官の発達、新陳代謝、免疫機能に重大な影響を及ぼす可能性がある。

あまりにすばやい迫害

誰も今まで行なわなかった動物実験を行ない、組み換え食品の有害性を証明したプッシュタイ博士の研究発表は、世界中に衝撃を与えました。

ところが、彼がテレビに出演し、

「自分自身は、組み換え食品を食べようとは思わない。それに、市民を実験用モルモットとするのはまったく不当である」

と発言したところ、なんと48時間後にローウェット研究所の定職処分を受けてしまうのです。

さらに、実験データはすべて没収され、対外的な発言を一切禁止されたばかりでなく、自身の研究データにすらアクセス禁止という、異常な事態が起きてしまったのです。

しかし、博士の研究結果に対しては、13カ国の毒物学者、遺伝子操作技師、医学者などで構成される科学者グループが再検討し、実験結果は正当なものであるとの署名を行ないました。

こうして、不当な迫害が明らかになり、やがてプッシュタイ博士の名誉は回復されていったのです。

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