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2014年01月

申し入れ書「アクリフーズ冷凍食品農薬汚染事故と表示制度について」
森雅子消費者担当相
阿南久消費者庁長官
2014年1月17日

私どもは、「製造所固有記号」の廃止、「原料原産地表示」、「遺伝子組み換え食品表示」等を求めて担当部署と折衝を続けてまいりました。しかし、消費者庁は食品表示一元化作業において、これらを一元化対象から除外しています。


1.製造所固有記号を廃止し、製造所名の記載を求めます
このたびのアクリフーズ群馬工場の冷凍食品マラチオン汚染事件において、回収に必要な製造所名が製造所固有記号でしか表示されていないPB商品が多数ありました。そのため回収食品とは知らずに食べてしまった消費者が多くいたと思われます。回収率がいまもって半数程度にとどまっているのはその表れです。

最大で基準の260万倍の農薬が検出された途方もない事件です。子供たちが好む食品であり、1歳の子供が口にして被害にあっています。

迅速な回収を行って被害拡大を防止するには製造所固有記号では役立たず、製造所名が必要だということを改めて突き付けたのです。

製造所固有記号は昨年11月の時点で88万5300件の登録があります。1つの工場に複数の記号が割り当てられていることもあり、一般の消費者が記号から製造工場を特定することはできません。報道によれば、森大臣は、記号の簡素化や消費者がインターネットなどで検索できる仕組みの導入を検討すると発言されました。これは取り組むポーズにしか過ぎず、まったく問題解決になりません。これでは事業者サイドに立ってなにもしないと見られても仕方ありません。消費者庁の管掌は消費者の立場にたって、消費者利益を守ることのはず。「廃止」への本気の取り組みを求めます。

2.原料の分析と結果を公表してください
今回検出されたマラチオンは輸入小麦やトウモロコシのポストハーベスト処理農薬として輸出国で使用されています。マラチオンは幾種類もの異なる商品から検出されています。行政が立ち入り、共通原料を徹底的に分析すべきです。マラチオンの毒性は低いと強調されていることに首をかしげます。マラチオンのような有機リン殺虫剤による症例は個人差があり、とくに子供の場合、ひどく反応する子どもたちが存在するのです。

3.表示一元化作業に原料原産地表示を加えて迅速に制度を確立してください

アクリフーズに続き、パスコ(敷島製パン)のまんじゅうがカルキ臭で回収となっています。原因は白あんの原料で米国から輸入した白インゲン豆に殺虫剤や除草剤として使用されるジクロロフェノールとのこと。

冷凍・加工食品の原料はほとんどが輸入原料に依存しています。安さを求めて輸入原料に頼る一方、安全確保のシステムや設備コストは削減され、安全がなおざりにされている現状が浮かび上がります。
原料原産地表示がないため、冷凍・加工食品の原料のほとんどが輸入であるにもかかわらず、消費者はそのことを知ることができません。表示制度の目的である消費者の選択のため、また事故原料の特定のためにも原料原産地表示が優先して取り組まれなければなりません。

食品企業は自社が製造する食品の原料が何でできているのか、どこからきているのか、わからないまま使用することはあってはならないことです。TPPなどグローバリズムが拡大していく情勢下、食品原料のブラックボックス化が一層進むでしょう。消費者の安全の犠牲のうえに企業利益を増やすことは許されません。これに対抗する措置は、徹底した表示しかありません。徹底した表示制度を目指す貴職の覚悟を示してください。また、表示に伴う原料の確認システムを食品業界が構築していけるよう指導・支援して下さい。

4.表示一元化作業に遺伝子組み換え食品表示拡大を加えて迅速に制度を確立してください
冷凍・加工食品原料は米国産トウモロコシ、小麦に大きく依存しています。昨年非合法のGM小麦が見つかり、一時輸入禁止措置が取られたことは記憶に新しいことです。米国産トウモロコシのGM混入率は現在約90%になっています。

輸出国のトウモロコシ、大豆やナタネのGM生産割合がいずれも90%ほどになっています。これらを原料にする食用油や醤油にGM表示がないのは行政の不作為です。消費者のほとんどが選択のために必要な情報として求めています。

現行のGM表示制度における最終製品での検査で検出されるものに表示という論理は輸出国米国や食品業界のためのものです。口にするものが何でできているか知る消費者権利を守るべきです。EUでは原料作物において0.9%以上GMが検出されるものはそれを使ったすべての食品が表示対象です。このような表示制度に改めるべきです。

5.本物食品の表示制度の構築を求めます
グローバリズムのもと、世界中から安い原料を集め、大量生産、広域流通させるため、食品安全を損なう事故が起きやすく、広範囲に被害者を生んでいます。また発生原因や経路を特定するのは困難になり、再発を繰り返しています。

一方、こうした流れに対抗する食品の品質を重んじる潮流があります。欧州地理的表示(GI)は地域の伝統・風土・製法に基づいた品質の高い食品を認証する表示制度です。またドイツの「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」というビール純粋令、フランスではパン屋とパン職人を規定する法律があり、その条件に合っていなければ「パン屋」の看板を出すことができません。小麦粉を仕入れて、自分でパン生地をこねて、発酵させ、焼いて、販売する、というパン製造の全過程に携わる人が「パン職人」、そういう人がいる店を「パン屋」と称する法律があります。日本の味噌、醤油、みりん、酢、食用油、日本酒など地域の原料と伝統製法にこだわった食品が辛うじて残っています。輸入原料や促成製造などによる「もどき」食品が横行し、これら本物は消滅の危機にあります。子供たちに日本の伝統の本物の味を伝え残していくことができるか喫緊の課題です。日本食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのに食材はまがいものでよいはずはありません。「本物食品」の表示制度を構築してこれらを守り、普及を図り、まっとうな食べ物を日本に取り戻してください。

以上

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン 小野南海子
(有限会社)影山製油所 影山陽美
米の検査規格の見直しを求める会 上林裕子
食政策センター・ビジョン21 安田節子

連絡先:食政策センター・ビジョン21
2014年01月18日更新
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