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2013年07月

TPP参加は危険! ローリー・ワラック氏講演の紹介
TPPがいかに危険かを伝える講演が米国やNZの関係者を招いて全国数箇所で開催された。以下はローリー・ワラック氏の山形市での講演の文字おこしを色平哲郎氏が7月2日に紹介されたものを転載する。
内容はビジョン21制作の小冊子『TPP本当の話』と重なる。参議院選挙の前に一人でも多くの方々に広げていただきたい。

なお、ワラック氏は遺伝子組み換え食品表示の禁止が決まったと述べておられるが、先日、米国は表示撤廃は求めないと表明したと報道された。市民側の強い反発が交渉のゆくえに悪影響が及ぶことを考慮してのことかもしれない。

しかし、協定に明記されるのかは不明だし、ISD条項を使って個別企業が表示規制による損害賠償を請求することはあり得る。より厳しい表示規制はできないという足かせはされるだろう。それだけでも国家主権、民主主義への侵略、破壊であることに変わりはない。

参議院選挙においては、TPP推進の政党か反対の政党かを見定めて投票をしたい。日本の私たちの暮らしを守る規制が破壊され、多国籍大企業に食いつくされるか、日本の行く末がかかっているのだ。どうぞ、棄権はしないでくださいね。

──ここから転載──
(2013年6月1日、6.1TPP反対学習会 於 山形市ビッグウィング)消費者権利の保護を目的とする米国の団体「シチズン・ウォッチ」のローリー・ワラックと申します。シチズン・ウォッチは、この間、消費者の様々な権利を奪うTPPに反対してきました。TPPは、安全な食べ物を得る権利、十分な薬を手にする権利、安定した金融や保険を得る権利、インターネットへの自由なアクセスの権利などを奪ってしまいます。

TPPが小規模農家の生活を脅かすことは多くの人々が知っていますが、TPPの脅威はそれをはるかに越えていくものです。TPPの交渉はすでに4年にわたって行われ、中身の80%はすでに妥結しています。交渉は極秘の内に進められてきましたが、交渉に参加した人からのリークによって多くのことが明らかになってきました。

交渉内容には29の分野がありますが、貿易に関するものはそのうちのわずか5分野だけで、その他の分野は、市民の権利を守る国家の権限を抑え込み、大企業の権利を拡大するためのものです。交渉の前提として、協定の署名国はすべてその国内法をこの協定の内容に合うように変更することを義務づけられています。つまり、国内の現行の法律をTPPの内容に合うように変えなければならないし、今後定められる法律も、TPPの枠内に適合するものにしなければならない。TPPの規定に違反する国は、輸出に関する制裁が科せられます。TPPは貿易協定というより、それに合意した国々の既存の法律や政策や文化を変えていくための新たな法体系とでもいうべきものです。米国では、TPPは企業によるクーデタだと言っています。企業による人々に対するクーデタなのです。

日本に来て、TPPで米国は勝者になるはずなのに、なぜあなたはTPPに反対なのかと聞かれるのですが、問題は、「どの米国にとっての勝利か?」ということです。米国での世論調査で、多くの米国民がTPPのような協定には反対だと回答している。なぜなら、米国社会が過去20年間にわたって、このTPPの元となる協定ともいえるNAFTA(北米自由貿易協定)の影響を受け続けてきたからです。つまり、勝者となるのは米国民ではなく、米国の大企業であって、TPPを望んでいるのは市民ではなく企業なのです。米国にはTPPの交渉にあたる役人やアドバイザーなど600人いるといわれていますが、交渉内容は秘密にされている。米国政府は交渉を推進していますが、その中身は米国民の利益に反するものです。

日本に来てわかったのですが、安倍首相がTPPについて話していることは、20年前に当時のクリントン大統領がNAFTAについて米国民に語ったことと全く同じです。安倍首相は、TPPによって日本は効率性が高まり、豊かになり、雇用を創出し、強い国になると言います。TPPは希望であり未来だ、と。同じことをクリントンが20年前に私たちに言いました。日本のみなさんが私たち米国民と同じ悲惨な経験をしないですむように、実際にNAFTAがこの20年間に米国社会に何をもたらしたかをお話しましょう。

当初われわれは、NAFTAによってより多くの工業製品を輸出できるようになり、工場にたくさんの人々が雇用されるようになると言われました。日本や米国は賃金が高く、労働組合が強いわけですが、メキシコなどは賃金がかなり低い。NAFTAが実施されて5年間で、米国内の数百万の雇用が失われた。20年後には製造業において500万もの雇用が失われてしまったのです。つまり、NAFTA以前にあった製造業の雇用のうち、4つに1つが奪われてしまいました。同時に、4万2000もの工場が閉鎖され、製造業における賃金は1971年時のレベルまで引き下げられました。米国の自動車産業はGMやクライスラー、テレビはゼネラル・エレクトリックと言われてきましたが、現在、これらの企業の製品は米国ブランドのままでありながら、メキシコで製造されている。

なぜ、このように仕事が失われ、賃金が減少してしまったのか。それはNAFTAにおける投資に関する規定によって(そしてこれはTPPにおいても同じなのですが)、大企業が賃金の低い国々に自由に投資を行うことができるからです。TPPには投資家への特別な保護措置が定められていて、日本企業は賃金の安いベトナムやマレーシアに容易にかつ安全に投資し大きな利益を生み出すことができるようになる。日産や三菱は日本ブランドではあっても、実際にその製品を製造するのはベトナムなどの国になっていく。この海外投資規定は非常に重要な規定です。米国政府は、NAFTAによって農場は減るが、製造業における雇用は作り出すとウソをつきました。実際には、農場も製造業における雇用も失ってしまったわけです。

メキシコがNAFTAによって悲惨な影響を受けたことは多くの人々が知っています。メキシコはこれまでとうもろこしを輸入することはなかった。高い関税が存在していたからです。多くの小農民がいて、農村の地域社会の中核を成していた。しかしNAFTAによってとうもろこしの関税が引き下げられ、やがては撤廃されてしまいました。そして補助金に支えられた膨大な量のとうもろこしが海外から流入していった。とうもろこし価格が80%も引き下げられ、農民は生きられなくなった。4年間で300万人の農民の生計が奪われたのです。NAFTA以降、生計が破綻して米国へ移民する人々が60%も増大しました。そして多くの人が国境を越えていく過程で命を落としました。

米国内の小規模農民も大きな打撃を受けました。米国にも農産物価格を安定させるための措置がありましたが、NAFTAによってこの保護措置が取り払われてしまいました。その結果、NAFTA実施後の7年間で20万人の小規模農民がいなくなりました。農産物の価格が乱高下し、生産を続けられなくなったからです。生産者価格が低い時でも、消費者の買う食品の価格は上昇し続けました。なぜこんなことが起こるのか?

本来の自由貿易ならばありえないことです。結局、商社や加工業者など大手のアグリビジネスが新たに獲得した自由によって農民を買いたたき、消費者に高いお金を払わせるというわけです。例えば、カナダで小麦の収穫時期が近づいたころに、すでに収穫した米国の小麦をカナダに持っていき、カナダの小麦の買取価格を引き下げたあげく、米国内では、小麦の供給量が減少し、パンの価格が上昇していく。大企業が私たちの食べ物でギャンブルをやっているのです。さらにNAFTAは、米国内の安全基準に適合しない食料も輸入するよう義務付けているため、NAFTA以前には、米国の安全基準より低いメキシコの食肉は輸入されなかったのに、現在ではそれが入ってくるようになった。NAFTAもTPPも、輸出国の食品の安全基準に適合する食品ならば、輸入する側の国の安全基準を必ずしも満たさなくても輸入しなければならないと規定しています。米国がメキシコの食肉を受け入れたように、TPPが実施されれば、日本も、米国など日本の安全基準より低い国の食べ物を受け入れなければならなくなります。2週間前にペルーで開かれた最近のTPP交渉では、新たに、遺伝子組み換えの表示を禁止することが決定しました。

NAFTAにも存在し、TPPでさらにひどい内容となっている規定によって、薬の価格も引き上げられます米国の大手の製薬会社は、NAFTAを利用して米国の消費者に薬を高く売りつけています。NAFTAは、製薬会社に特権を与え、ジェネリック薬品を市場から占め出してしまいました。米国の製薬会社にとって日本の医療市場は格好のターゲットです。彼らは米国の消費者から多額のお金を巻き上げたあげく、さらに日本の消費者からも取り上げようとしている。

TPPの、恐らく最悪と言える規定はISD条項です。もし日本がTPPに参加すれば、日本は世界銀行の国法廷に提訴される事態が生じるでしょう。外国企業は自分たちにとって好ましくない日本の政策に対して、日本国政府を提訴し、納税者補償を要求することができるようになる。彼らは日本の裁判所にも、日本の法律にも従うことなく、それどころか、日本国民のお金を奪っていくのです。日本の企業であれば、守らなければならない日本の法律にも彼らは従わなくてもいい。日本で操業する外国企業が、日本の市民や企業以上の権利、特権を持つようになるわけです。これがどれほどひどいことかを示す具体的な例をあげてみましょう。

NAFTA実施以後、メキシコにある米国企業が有害物質を含む廃棄物を購入した。その廃棄物はメキシコの会社が持っていたもので、それが水を汚染したため、その会社は閉鎖された。その廃棄物を米国企業が買い取ったのです。その米国企業はメキシコの会社が有害物質のせいで閉鎖されたことを知っていたし、操業を再開するには、有害物質を除去しなければならないこともわかっていた。しかし、操業を再開すると言い出した。それで、メキシコ政府が再開する前に有毒物質を除去せよと指示したんです。するとその米国企業は、われわれはNAFTAの下で操業している外国企業だから、操業再開を許可するか、さもなくば、1700万ドルの賠償金を支払えと言ったのです。メキシコ政府は、メキシコの会社と同じくあなたたちも有害物質を使って操業はできないとした。しかし、NAFTAの下では、メキシコ政府は1700万ドルを支払わなければならなかったのです。結局、メキシコ政府はNAFTAの下ですでに2つの外国企業に対し、総額4億ドルの賠償金を支払わされています。ISD条項がこれまでに適用された分野には、水道、有害物質規制、森林保護、土地区画制度、住宅政策、採掘など様々なものがあります。

NAFTAを締結したことで、米国でも雇用は減り、食の安全も脅かされるようになった。だから米国民はTPPは要らないと言っているのです。NAFTAを締結する前の世論調査では、65%の米国民がNAFTAに賛成していた。しかし、NAFTAの下でさまざまな問題に直面した結果、今では共和党員も民主党員も、独立系の人々も一致してNAFTAはもうこりごりだと感じています。

安倍首相は今、心配は要らない、われわれはTPPに参加するのに6つの条件を出しているのだからと言っている。おかしなことに、米国では政府も議会もマスコミも誰もこの6つの条件のことを知らない。安倍首相とオバマ大統領がワシントンで会談し、彼らが発表した声明は非常にあいまいな表現だった。私自身、声明文を実際に見てみようと思って探したのですが、探し出せなかった。日本に来てみたら、マスコミで声明の内容が報道されていました。つまり、日本で発表されている声明の内容は、もともとの内容とは異なるものなのです。オリジナルの声明文は別に置いておいて、日米双方で異なる内容を発表している。

では米国ではどのように発表されたのか。こうです。米国は日本がTPPに参加することを了承した、なぜなら、まず第一に、日本はすべての品目を交渉のテーブルに乗せると言っているから。つまり聖域の品目はない、というのです。次に、日本郵政は今後、新たな医療保険やがん保険を出さないといっている。さらに、日本は事前約束として、日本の環境基準に適合しない米国の自動車1万5000台を受け入れるとまで言った。また、TPPに付随して日米2国間だけで、食の安全に関する保護規制をなくしていくための交渉を行うというのです。この追加交渉は日米間だけのもので、これは他のTPP参加国には適用されません。これは日本の自民党の言っているセーフガードとしての6つの条件とは正反対の内容です。

安倍首相とオバマ大統領の会談以降、ワシントンにいる日本大使や彼の側近たちは、あらゆる機会に日本がTPPに前向きであると発言している。そして、われわれはTPPの早期妥結のために米国をサポートすると言っている。TPPの中にISD条項が入るように米国をサポートするとも言っている。現在、オーストラリア政府はISD条項に反対しています。彼らの発言はISD条項は受け入れられないとしている自民党の姿勢と正反対のもので
す。

最後に、私自身、不思議でならないと感じていて、今回、行く先々で質問しているのですが、世界第3の経済大国である日本が、TPP交渉において、まるでグアテマラのような小国の扱いを受けていて、ひどいと思わないのかということです。日本は7月24日の正式参加までTPPの条文の中身を見ることはできないと言われている。すでに内容の80%は他国の交渉によって決定されている。中身を知ることはできないのに、それに加わるには、その内容に合意しなければならない。他国が合意した内容を日本は一言も変更することはできない。昨日、Eメールが届いたのですが、すでにサービス分野はすべての内容が妥結したということです。

日本は、その内容を知らされないまま、TPPのサービス分野の全文を受け入れなければならないのです。サービス分野には、輸送、船舶、教育、住宅、建設、エンジニアリング、コンピューターなどが入っています。これらに関するあらゆる規定が決定してしまったのです。再度言いますが、なぜ、日本はこんなに無礼な扱いを受けて、危険なTPPに参加しようとしているのか、ということです。グアテマラのような小国なら起こりうるかもしれないが、経済大国である日本がどうしてなのか。日本は米国に従うしかないから、と私に言った人もいます。でもその場合の米国は、米国民ではない。米国民はTPPに反対しているのですから。安倍首相はオバマ大統領のあとをついていきたいのでしょうが、そんな危ない所に私たちはついて行くべきではない。日本の国民と米国の国民が一緒に力を合わせてTPPをストップすべきです。

最後に米国で行われている反対運動の様子を映像を使ってご紹介しましょう。米国では、マスメディアが進んで反対運動を報道しようとしないので、私たちはインターネットを使っています。生協や労働合、農民団体が立ち上がっていて、それぞれが家族や仲間たちに呼びかけている。私たちはユーモアを駆使して運動しています。おもしろい絵を使ったり、おかしな格好をしていればテレビ局も取材にきます。

例えば、TPPのTPはトイレットペーパーを意味します。テキサス州のダラスで交渉が行われたとき、交渉の会議場で働く労働者の労働組合と連携して、何百ものトイレットペーパーに反TPPのメッセージを書き込んで、交渉の行われている建物のトイレにセットしたのです。交渉担当者も報道関係者もトイレに行って、それを見つけて愕然とした。これがテレビの全国放送に流れたのです。テレビはTPPのことは放送しないで、トイレットペーパーの話を放送したんですよ。もう一つは、「アホな自由貿易」(Free Trade My Ass―Assとはアホという意味とお尻という意味がある)というメッセージを大きなお尻の形をした風船(自動車1台分の大きさ)に書いて、商務省の建物の上に掲げました。そのお尻の下に「TPPなどトイレに流してしまえ」と書いたトイレットペーパーがぶらさがっています。この風船の下の通りを通行する多くの人々がこれを見たわけです。

他の国々でも反対運動が起こっています。これはマレーシアでの反対運動の写真です。彼らは薬へのアクセスの権利を守るためにTPPと闘っている。逮捕者が出ることもあります。これは日本の反対運動の写真。これを米国の人々にも見せて日本の運動のことを話しました。これはチリの反対運動のスローガンで、「交渉の対象にしてはいけないものがある」と書かれています。これはオーストラリアの反対運動の写真です。TPPの交渉官をバンパイアにたとえて、バンパイアに扮装している。これは2週間前にペルーでのTPP会合の時の反対運動の写真です。

最後になりますが、大企業がTPPを進めたいと願っている一方、それぞれの国の人々は反対している。これまで、貿易協定によって大企業の力を拡大させようとする動きに対して人々が力を合わせて何回も阻止してきた歴史があります。その一つに、10年間にわたる闘いによって、WTO(世界貿易機関)の拡大を阻止することができた。南北アメリカ大陸におけるTPPとも言えるFIAA(アメリカ地域自由貿易協定)についても市民社会の力によって阻止することができた。この表にリストアップされている貿易協定は、すべてピープル・パワーによって阻止することができたものです。TPPについても、阻止することができるはずです。

TPPを阻止するためには、日本がとても重要です。TPPに参加しているすべての国において、われわれは、政府に対し、決して売り渡してはいけない事柄について明確な態度を示しておかなければなりません。そのためには、人々を啓発し、反対運動に参加するよう働きかけなければならない。TPPがいかに深刻な問題をはらんでいるかを知らせなければならないのです。もうすぐ参議院選挙があると聞いていますが、TPPに反対している国会議員を是非選んでください。(略)本日はどうもありがとうございました。

質疑応答

<質問@>鈴木自動車の社長はTPPに反対だそうです。米国には軽自動車がなくて、米国の自動車会社が、日本で米国車を売りたいが軽自動車が邪魔になる、日本で軽自動車を作らないようにしたいと考えたとき、ISD条項で指摘される恐れがあるという人もいます。極端な話、日本で車を売りたいがために、日本の道路交通法まで変えようとする、例えば、日本は自動車は左側を走りますが、これを右側に変えなければならなくなる、というような事態が発生する可能性はあるでしょうか?

<答え>おもしろい質問ですね。私の属する団体がいろいろな調査を行っていますが、その中に、企業側が政府の役人に対して出しているコメントというのがあります。自動車会社そのものではありませんが、自動車メーカーの協会がいくつかの提案をしている。その中に、自動車の車種を世界で1つに統一したら利益が上がるのではないかという提案がありました。もちろん、消費者団体は「そんなことしたら、危なくてたまらない」といっている。消費者の安全や環境から言えば、各国のやり方を維持すべきことは当然です。

<質問A>日本ではTPPによって日本の医療制度がズタズタにされていくのではないかと懸念しているわけですが、NAFTAの20年間は米国社会の医療制度はどのような影響を与えたのでしょうか?

<答え>TPPにおける医療の規定はNAFTAの規定を越えていく内容となっている。NAFTAには特許による薬の独占的支配の拡大が含まれていますが、これはTPPにも含まれている。つまり、製薬会社1社が持つ特許の期間の延長などが決められています。TPPにはさらに、各国の医療制度における価格決定に対して影響を与える仕組みが含まれています。条件として決められているのは、例えば、国の医療制度で薬の市場価格が支払えなければならないということで、これはニュージーランドやオーストラリアや日本やマレーシアの医療制度のやり方とは違う方法です。通常はもっと有利な価格で買っているはずですから。現実の問題として言えば、現在日本ではすべての人が医療保険に入っていて、それを通じて薬を手にすることができます。米国ではそうではない。つまり、これまで権利であったものを、お金を出して受け取るサービスへ変えてしまおうとしている。医療が美容院で髪を染めたりするのと同じものになっていくわけです。お金が払えなければ、そのサービスは受けられなくなる。米国では1600万人が医療保険に入っていません。医療がお金を払うサービスとなっているのは先進国にあるまじき状態です。米国では医療が大きな利益を生むビジネスとなっているのです。

<質問B>ISD条項は非常に恐ろしいものであるというお話でしたが、公共の分野、例えば政府調達などの分野でも企業による参入を認めなければならなくなって、それぞれの国の自治が壊されていく可能性があると思いますが、どうですか?

<答え>TPPについては知らせるべき情報がたくさんあって、私の団体のウェブサイトでも見れるようになっています。是非アクセスしてください。人々の理解を広げるために、誰でもそこから情報を入手して、翻訳して、コピーして配ってください。著作権の問題はありません。そのウェブサイトで、NAFTAにおけるISDのさまざまな実例が紹介されています。その中の一番ひどい実例を簡単にお話しましょう。それは公益事業に関するISDの実例です。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの水道事業をバーベンディ社という大手企業が買い取りました。その後アルゼンチンで経済危機が起こり、多くの人々が水道料金を支払えなくなりました。それでその会社は水道をストップしてしまった。400万の人口のいる都市の水道を止めてしまったのです。政府はその水道会社に行って、事業停止を求め、水道の栓を開けた。その企業の代表取り締まり役は逮捕されたのですが、「アルゼンチン政府はISD条項違反によってわが社に6000万ドル支払わなければならない。わが社のブエノスアイレスの水道の所有権を侵害したのだから」と要求したのです。これはNAFTAにおける1つの例に過ぎず、TPPではISDの内容はさらにひどいものになっていることがわかっています。TPPのISD条項の原文がリークされたからです。それには、ISDの対象となる分野が明確にリストアップされている。公益事業、政府調達、橋、電気、電力、水道などというように。このISD条項の条文もさきほど言ったウェブサイトで見ることができますので、是非、アクセスしてください。
2013年07月05日更新
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