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2011年08月

【緊急:8月27日締切】食品暫定規制値改正に関するパブリックコメント募集のお知らせ
7月26日、内閣府食品安全委員会は「食品中に含まれる放射性物質の食品健康影響評価(案)」をとりまとめました。8月27日を期限にパブリックコメントを実施し、その後、食品安全委員会の答申に基づいて厚生労働省が3月17日から適用している食品の暫定規制値を改定する予定となっています。

食品安全委員会の今回の食品健康影響評価案では、自然放射線や医療被ばく以外の被ばくについて、外部被ばくと内部被ばくを合わせて、生涯で累積100ミリシーベルトを基準とするというものです。現在パブコメを募集です。 8月27日が締切です。

以下をぜひ、提出してください。

@原則、食品による内部被ばくは認めない
A小児の基準はゼロでなければならない

■参考1
食品安全委員会「食品中に含まれる放射性物質」評価書(案)(PDF)
食品安全委員会「放射性物質の食品影響評価に関する審議結果(案)についての御意見・情報の募集について」(PDF)

■参考2 ビジョン21が提出した意見書

生涯で累積100ミリシーベルトを基準とする案に対して

1. 食品安全委員会は厚労省が介入線量レベルで策定した高い暫定値を見直して、健康に影響を与えない安全基準を示すべきです。

2.「食品に放射性物質は含まれてはならない」が原則です。
放射線はどんなに微量でも影響があり、安全な線量(閾値)はないとするのが今日の国際的常識となっています。国際放射線防護委員会(ICRP)や米国科学アカデミーなど推進の立場の機関でさえ、この立場をとっています。しかし、閾値なしとする考えを食品安全委員会は仮説として斥けました。科学的データが完璧に揃うことはまずなく、データの不足や不備を補うために常に仮説を設定してリスクの判断が行われているのが常識であるにもかかわらずです。本来、安全規制としては、閾値がないものは許容摂取量は決められず、『食品中に含まれてはいけない』とするのが原則です。「閾値なし」の立場を採用すると厳しい規制値にならざるを得ないので斥けたとしか思えません。
一方、疫学データに基づく検証では、食品による内部被ばくのデータが極めて少なく、将来がんになった場合、今回の福島原発からの放射線が原因だと科学的に証明できる被ばく量は100ミリシーベルト以上で、それ以下の被ばく量では、自然放射線やタバコなどの他の要因と区別できない、と説明しています。これは補償問題を念頭に置いているしか思えません。食品安全委員会は健康を守る規制値設定の責務を放棄したと言え、補償問題への対応策を図るのは任務の逸脱行為です。

3.小児の基準はゼロとすべきです。
「小児はより放射線の影響を受けやすい可能性(甲状腺がんや白血病)がある」と指摘するだけで小児の基準は示していません。胎児、乳幼児、子どもの被曝は言うまでもなく「0」でなければいけないのです。

4.「がまん値」設定について
上で指摘した原則は崩さず、放射性物質の放出が続く一定期間に限定して、非常時の「がまん値(どれだけのリスクまで許容するのか)」を設定することはあるかもしれません。その場合は、健康リスクと利益(食糧不足・栄養不足にしないなど)を明確に示し、「安全値」ではなく「がまん値」であることを周知したうえ、国民が合意する値とすべきです。
その場合
@福島事故を受けて、直後にドイツ放射線防護協会は「乳児、子ども、青少年に対しては4Bq/kg以上のCs137を含む飲食物を与えないように、成人は8Bq/kg以上のCs137を含む飲食物を摂取しないことが推奨される」と提言しています。参考にすべき提言です。ただし、乳児、子どもの基準はゼロにすべきです。
A国際基準のなかに食品中の放射性物質が健康に悪影響を及ぼすか否かを示す濃度基準は見当たらなかったと説明していますが、コーデックス委員会やベラルーシやウクライナ、米国法令などの基準があります。それらを参考にすべきです。その検討がなかったのはこれらの基準値が厳しいから採用しなかったのではと疑わざるを得ません。

ウクライナ(野菜)セシウム137 40ベクレル/Kg
ベラルーシ(野菜)100ベクレル/Kg
コーデックス(Sr90,Ru106,I131,U235の合計 100ベクレル/Kg
アメリカの法令基準 170ベクレル/Kg
これまでの日本の輸入品規制値 370ベクレル/Kg
日本の暫定基準値セシウム(野菜、穀物、肉類など 500ベクレル/Kg
日本の暫定基準値放射性ヨウ素 野菜、魚介類 2000ベクレル/Kg

5.内部被ばくの脅威を評価に反映させること
案では、低線量の長期被ばくについては細胞の修復が行われやすいので影響が少ないと切り捨てています。これは軍事研究をベースにしてきたアメリカ中心の国際放射線防護委員会(ICRP)が低線量放射線の影響を認めていないからでしょう。
しかし、低線量による内部被ばくのほうが影響が高くなるとするいくつもの有力な説(たとえば「人間と環境への低レベル放射能の脅威」(ラルフ・グロイブ/アーネスト・スターングラス著)があり、欧州放射線リスク委員会(ECRR)は遺伝子破壊も視野に入れた「内部被曝」を認めています。医師の肥田舜太郎さんは「その被害は子々孫々まで及ぶ内部被曝」が人類の未来にとって最大の脅威─と断じています。また、低線量被ばくについては近年、遺伝子レベルの研究の進歩で解明がどんどん進んでいます。アメリカ学士院会報の最新号(本年6月7日号)で、チェルノブイリの低線量の被曝小児では染色体7番q11が通常の2個でなく3個になる異常が報告されている(児玉龍彦氏)など。最新の科学的知見に立って、低線量被ばくを検討し、考慮すべきです。

6.1mSv/年以下を守ること
国際放射線防護委員会(ICRP)では、体内にとどまった放射性物質が長期間(成人では50年、乳幼児・小児では70歳までの期間)にわたり放射線を出し続けることを見込んでいます。ICRPにならうと生涯累積100mSvは大人が2mSv/年、乳幼児・小児が1.43mSv/年となります。となるとこれまでの一般人の被ばく限度値1mSv/年を大人も子どもも越えてしまうことになります。1mSv/年以下を守る基準にすべきです。

7.安全係数をかけた数値で
これまでのように国民栄養調査にもとづく摂取量から見積もり、配分するにしても、1mSv/年という限度値をそのまま適用ではなく、これに不確実分を見込んだ安全係数をかけた数値で規制すべきです。

8.100mSv/生涯では現実的規制策はとれない
流通する食品は検査の有無もわからず、また測定値の表示もありません。私たちが基準値以下のBq値を何回 も食べ続けた場合、評価はできないでしょう。セシウムに加えて計測されていない他の核種(ストロンチウムやプルトニウム、ウランなど)を含んでいるかもしれず、現実にはこれらの総合被ばくを見積もるのは困難でしょう。
さらに外部被ばくと食品と呼吸の内部被ばくをどう分けて推定し、評価できるというのでしょう。当初のキセノンやクリプトンといった放射性ガスやヨウ素を加えれば、100mSvは超えてしまっているかもしれません。100mSv/生涯では、現実には意味のある政策をとれないでしょう。
なお、現在の暫定基準のもとで放射性ヨウ素や放射性セシウムの値だけが流通規制に使用されていますが、ウランやストロンチウムなど他の核種についても基準設定とともに検査体制が車の両輪として不可欠です。欧州放射線リスク委員会はウランやストロンチウムの内部被ばくを考慮すれば、ICRPの評価よりもリスクは相当高くなると指摘しています。
2011年08月25日更新
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