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2010年10月

「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は国亡の道」
環太平洋パートナーシップ協定(TPP=Trans-Pacific Partnership)は2006年にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟で発効した自由貿易協定で、日本では関心の薄いよそごとの協定でした。

ところが昨年あたりから、オーストラリア、ペルー、アメリカ、ベトナムが参加を表明し、2010年10月には、マレーシア、コロンビア、カナダも参加を表明。ここにきて日本は参加を有形無形に促され、TPPへの参加が急浮上しました。

10月8日、菅総理は新成長戦略実現会議で、11月に横浜市で開催のアジア太平洋経済協力会議(APEC)において提示する経済連携推進の基本方針にTPPへの日本の参加を盛り込むよう指示。そして19日、政府与党内で「(TPP)交渉に参加」する方向が固まったと報道されました。

FTA(自由貿易協定)は、特定の国や地域との間でかかる関税や企業への規制を取り払い、物やサービスの流通を自由に行えるようにする協定で、EPA(経済連携協定)は、物流のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携で、両国または地域間での、FTA以上の親密な関係強化を目指す協定です。TPPはこれよりも徹底した例外品目のない、完全なる関税撤廃をめざす自由化協定なのです。

2015年までに協定国間では、工業品、農業品にかかわらず、例外品目のない100%の関税撤廃と貿易自由化の実現をめざすとされ、物品の貿易のほか、政府調達、知的財産権、協力など幅広い分野を対象とするともいわれます。

菅政権が参加の方向を決めたことに対し、民主党内部からも懸念を持つ100人を超える国会議員や農業関係団体等の反対が強まっています。これが実現すれば、日本の産業構造はもとより、社会構造も大転換する可能性があります。

特に影響が深刻なのは、日本の一次産業です。FTA、EPAもそうですが、わけてもTPPという徹底して規制のない自由な経済取引協定については、前提としてまず一次産業への影響はじめ産業構造、社会構造にどのような変化が引き起こされるのか十分な検証がされ、その公表をもとに国民的な議論を経てから参加するかを決めるべきです。

軽々しくAPECで地域経済の統合を主導する姿勢をアピールしたいとか産業界からのアジア太平洋地域の経済統合の動きに乗り遅れてはならないとの声や米国の圧力で参加を急ぐなど思慮浅薄、国亡ものです。

食料という生命財に保護を認めない徹底した自由貿易主義に国を明け渡すのは、気候変動による減産が相次ぎ、穀物高騰の時代に入ったという今日の状況に蒙昧な時代錯誤であり、国を危うくします。今年も旱魃のためロシアやウクライナが8月から年末まで小麦を輸出禁止し、国際小麦価格は70%も高騰しているのです。日本で危機を感じないでいられるのは、なにより主食の米を自給しているからです。米の自給を失ったら私たちの生命の安全保障は崩れます。

TPPに強い意欲を示す米国に日本巻き込みの思惑を感じます。日米FTAとか日豪FTAとかの2国間の交渉では、あからさまな農産物輸出国対輸入国日本の構図であるため、国内一次産業わけても米輸入の脅威として抵抗が強く、日本の米の関税撤廃実現が遠い状況があります。それで、「経済連携に取り残されるぞ」とTPPに日本を誘い込み、TPP諸国の多くは農産物輸出国ですから、多数の声をバックに、自分たちの思惑を実現させるつもりでしょう。

TPPに参加すれば、兆円単位の国内農業生産額の減少、百万人単位の失業、10パーセント単位のカロリーベースの食料自給率の低下を生じるとも予想されています。

打撃を受けた農家には所得保障するという民主党の政策は財源が限られているなかで(鹿野農水大臣は環境税の導入で、これを財源に当てると発言していますが、実現は不明)破たんするのは目に見えています。

食料主権を掲げ、基本的食糧は自由貿易の例外と認めるものでなければ、参加すべきではありません。

他産業とて徹底した自由競争ルールのもと、加盟国の間で競争激化は避けられず、どれほどのメリット・デメリットがあるのか冷静に分析してみるべきです。日本が圧倒的に有利な自動車ぐらいしかメリットはないかもしれません。たとえ多少の貿易黒字があったとしても、瀬戸際にある日本農業が一挙に崩壊してしまっては日本は元も子もなくオシマイです。
2010年10月28日更新
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2010年10月02日更新
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