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2009年03月

グリーン・ニューディールそして世界的軍縮へ
 『今日、私たちは「グローバル・グリーン・ニューディール」が必要だ。それによって、世界が不況から抜け出す力を与えることができると同時に、気候変動と21世紀の新しい挑戦に取り組んでいくことができる』(シュタイナー国連環境計画事務局長)

 金融危機によってアメリカの新車販売は昨年10月から急降下し、それが世界的な自動車不振に繋がり、経済不況は津波のように米国から一気に世界中に波及し、先が見えない。未曾有の不況に陥る気配のなか、オバマ大統領は「グリーン・ニューディール」政策を掲げ、大規模な環境・エネルギー投資、たとえば自然エネルギー・次世代バイオ燃料・省エネ・エコカー・エコハウスなどの事業に15兆円(10年間)を投資し、こうした「グリーンジョブ(緑の仕事)」を通して、500万人の雇用を創出するという。

 ドイツも同様の政策を掲げ、プラグイン車(家庭用電源から充電できる電気自動車、ハイブリット車)などを2015年までに100万台導入を目標にドイツ再生可能エネルギー(バイオマス、風力、太陽光)産業は2,400億ドル規模を目指し、25万人(3年で55%成長)の雇用を創出し、2020年には自動車産業を上回る規模にするという。まさにグリーン・ニューディール(New Deal)だ。"New Deal"とは、トランプゲームで親がカードを配り直すことを言い、そこから政府が新たな経済政策を通じて国家の富を国民全体に配り直すことを意味する。

 しかし、失望と懸念を覚えるのは、オバマ大統領は、アフガニスタンへの軍隊増派を言明したことだ。アフガニスタンのカンダハル行政区知事Tooryalai Wesaはカナダのstar紙(09年1月)に「私たちは歴史から学ばなくてはなりません。ソ連軍は10万人の兵力でやってきました。彼らが5万台の戦車の代わりに5万台のトラクターや脱穀機やコンバインを伴ってアフガニスタンに来ていたなら、今のような状況にはならなかったはずです。治安を改善するにはこれ以上軍隊は必要なく、トラクターと職業訓練が必要なのです」と述べている。

 現地で井戸堀を指導する中村哲医師は、井戸掘りを通して仕事を与え、農地に水をもたらすことが最優先に必要なのだと述べている。アフガニスタンの治安回復は軍事力では実現できるものではなく、農業生産の回復と仕事を作り出すことなのだ。

 米国経済の疲弊の真の原因は軍産複合体が巨大な勢力となって国民経済を侵食してきたからだ。米国の軍事費は4500億ドル(約53兆円)、15兆円で500万人の雇用を創出できるというのに。真のグリーン・ニューディールは軍縮を成し遂げることだ。世界で使われる途方もない額の軍備費こそが日々の暮らしにまわるべきお金を政府の金庫から奪っている。経済逼迫の今だからこそ、軍縮を求める声を高めるべき時ではないか。(「いのちの講座」56号巻頭言を転載)
2009年03月18日更新
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