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カメムシ斑点米規格の削除を!


斑点米とは?

カメムシ斑点米とは、カメムシが稲穂を吸汁し、その痕が茶褐色の斑点となった玄米(斑点米)のことです。

農家が米を出荷するとき受ける検査で、斑点米の混入率が0.1%(1000粒に1粒)までなら一等米、0.2%(1000粒に2粒)なら二等米に、0.3%(1000粒に3粒)を超えると三等米に、0.7%(1000粒に7粒)を超えると等外米に格付けされてしまいます。一等米と二等米の価格差は60キロで約1000円のため、斑点米が入ると農家の経済的被害は大きなものになります。そのため農家は必要以上に農薬を散布しがちとなります。農協はポスターで「目指せ!一等米!」とカメムシ防除の徹底をうたい、農薬の宣伝がされています。

2005年岩手県で、その農薬が原因で水田に飛来したミツバチが大量死したと報じられ、翌年も発生し、さらに山形県でもミツバチの大量死が起こりました。最近のミツバチ激減の原因としてこの農薬が強く疑われています。

カメムシ防除用殺虫剤の大量散布を強いているのが1000粒に1粒という単位で等級を振り分ける米の検査規格(表)です。
農産物規格規定表

一等米の場合、異物(石やゴミなど)の混入割合は0.2%までとなっているのに対して、斑点米(「着色粒」)は0.1%と倍の厳しさです。食味に関係する異物の基準より、見かけだけの問題でしかない「着色粒」のほうが倍も厳しい基準というのには首を傾げたくなります。

なお、輸入米の検査規格では等級はなく、合格か不合格で、「着色粒」規格は1%(100粒に1粒)までなら合格で、国内規格に比べ10倍緩い基準となっています。

斑点米は食べても安全性にはまったく問題はありません。みかけの問題でしかなく、しかも色彩選別機で除かれているのです。買い付けた業者は斑点米を選別機ではじいたあと、これをもとの米に混ぜて流通させているのです。つまり、農家が出荷するときの検査で等級別の米が作られるのですが、流通業者から小売に出るときは、等級は消えています。

「反農薬東京グループ」が二等米を買いたいと米屋に片っ端から電話をしてみたところ、どこも「ない」との返事だったそうです。そうなのです。消費者が小売店で見る米袋にはJAS法に基づいた「産地・産年・品種・割合」(例えば:宮城県・20年産・あきたこまち・100%)の表示がされていますが、どこにも等級表示はありません。

斑点米が1粒余分にはいっているだけで二等米となり、農家の手取りが低くなるのに、消費者に売られる米には等級差は消えてしまっているのです。

この規格によって誰が利益を得ているかといえば、流通業者だけです。農薬散布を強いられる農家も農薬残留の高い農産物を食べるはめになっている消費者も、ともに割を食っているのです。農産物に工業製品に対するかのような(それも見栄えや形などを重視した)細かい等級規格を設けていることが、世界一ともいわれる多量の農薬散布の元凶といえます。

なお、カメムシは、種類が多く、カメムシ目カメムシ亜目132種が数えられています。有機生産者の方の話によれば、カメムシのなかには、オオメカメムシのようにオスは植物の汁を吸いますが、メスは肉食でアリやハムシなどの小昆虫、なかでも農作物の害虫である黄色アザミウマなどを捕食するとのこと。殺虫剤散布によってクモをふくめこれらの昆虫を殺してしまうのですから、農薬を使うのは本当にまずいことなのです。

ミツバチの大量死を受けて秋田や岩手の県議会から着色粒の規格をなくすよう求める意見書が国に提出されていますが、まったくなんの対応もとられないままです。 なお、減反田や放棄地の増大がカメムシの繁殖場を提供しているのではとも言われています。農政の失敗のつけも原因なのです。

ともあれ、斑点米が出ても、収量、安全性には問題がないものです。斑点米が混じると味はどうなのかを試食してみることにしました。

「斑点米を食べてみる会」を開催

6月15日に都内で「斑点米を食べてみる会」を反農薬東京グループなど他団体とともに開催しました。 報道を含め30名近くが参加し、市販の白米に一等から三等までの等級検査にあわせた割合で精米した斑点米を混ぜて炊いた、等級別ごはんを味わってみました。

炊いた斑点米はよく見ないと見つからないほどで1ミリほどの筋や点で認識される程度のものでした。一等米割合のごはんから順番に食べてもらい、感想をアンケートに記入してもらいました。一番斑点米の数が多い三等米割合のごはんも味に変わりはまったく無く、私自身はどのごはんもおいしかったのでした。

■参加者のうち、アンケートに記入した21名の結果

質問1 1等米と2等米の差は感じられましたか。
感じた 0
感じなかった 21
その他 0
質問2 3等米についてはどう感じましたか
おいしかった 8
まずかった 0
1・2等米と変わらない 13
質問3 農薬を使わずに作った斑点米混じりのお米と、しっかり防除して作った真っ白なお米だったらどちらを買いますか。
農薬不使用の斑点米まじりのお米 20
しっかり防除した真っ白なお米 1(ただし知らなかったら)
質問4 その他意見から 抜粋して紹介
・選別機があれば、等級は意味ないと思う。
・検査で等級を付けることは無意味ではないのか。そのために、農薬を多用するのであれば着色米の規格は不必要なだけでなく有害。
・見た目だけ斑点がありましたが味は全然変わりませんでした。無農薬のお米を食べないとお米以外の野菜や加工食品も無農薬というわけではないので、すべて農薬か添加物のかけられた食品となってしまいます。それでは困ります。
・斑点米の扱いについて、米の検査基準について、生産者、消費者を中心に両者の利益を軸に考えてほしいものです。
・消費者としては、こんなことのために農薬を使ってほしくありません。農薬を使わずに手間暇かけて作ったお米がたまたま1000粒に3、4粒入っていたら安く買いたたかれてしまうとしたら、農家にとってこんな理不尽なことはないと思います。消費者のためにもならず、しかも農家をいじめるようなこんな制度はただちにやめるべきではないでしょうか。

農水省食糧部長との折衝

翌6月17日は農水省の奥原食糧部長と斑点米について折衝を行いました。斑点米規格の見直しになにがネックなのか、それは農水省がいうところの「二等米は選別機にかけるコスト増があり流通業者の負担が増す」という一点にありました。

これに対して出席した秋田の米生産者「生き物共生農業を進める会」の今野茂樹さんは「一等米と二等米の選別コストの差は数十円でしかない。農水省がいう500円もの差はありえない」と反論。

奥原部長は「コストが違わないのであれば、等級差をつける理由はなくなる。そこは調べてみるしかない」とこれまで業者の聞き取り情報だったのを自ら再調査することを約束しました。再調査に2ヶ月ほどかかるということで、引き続き折衝を続けていきます。

斑点米アンケート

前号に挟み込みました斑点米アンケート(6月末集約)が、みなさまから次々と戻ってきています。ご協力ありがとうございます。現在「米の検査規格の見直しを求める会」の賛同団体全体で1000を優に超える回答が集まってきています。理不尽な斑点米規格のこと、アンケートを通して広く知っていただき、これを世論に農水省に迫っていきたいと思います。 (集約結果の発表と農水省提出は7月中を予定)

※結果が出ました。⇒斑点米アンケートの結果について

<米の検査規格の見直しを求める会の賛同団体> 6月18日現在 16団体
食政策センタービジョン21・生き物共生農業を進める会・反農薬東京グループ・提携米研究会・日本不耕起栽培普及会・主婦連合会・日本消費者連盟・ネットワーク農縁・日本消費者連盟関西グループ・全日本農民組合連合会・日本有機農業研究会・お米の勉強会・各務原ワークショップ・日本雁を保護する会・市民の大豆食品勉強会・茨城アイガモ水田トラスト

(2009/7/1 「いのちの講座 第58号」(09年6月29日発行)より)

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