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独バイエルが米モンサントを買収で合意


2016年9月14日、毎日新聞より

ドイツの製薬会社バイエルは米モンサント買収で合意した。買収の規模は全体で660億ドル(約6兆8000億円)となる。4カ月にわたる交渉が実を結んだ。

ロイター通信によると現金による企業買収では過去最大額。両社の農業部門の売上高は総額約270億ドルに達し、買収が実現すれば世界最大の農薬・種子メーカーが誕生する。

バイエルは5月に買収を提案したが、モンサントが買収価格が低すぎるとして拒否したため、価格を引き上げた。

バイエルは農薬が強く、モンサントは種子を主力としている。人口増加で農薬と種子の需要拡大が見込まれる一方で、環境規制の強化などを背景に研究開発費の負担は増しており、規模拡大による競争力強化が不可欠と判断した。

1年前には少なくとも6社が競い合っていた世界の穀物・種子業界では、昨年12月に米化学大手ダウ・ケミカルとデュポンが経営統合で合意。今年2月には中国国有化学大手の中国化工集団が、スイスのシンジェンタの買収で合意するなど、世界的な再編が加速している。 両社の統合後にプレーヤーがわずか4社に減る。

反トラスト規制当局の承認が得られるかが今後の焦点となる。 米国やカナダ、ブラジル、欧州連合(EU)などの規制当局が時間をかけて、買収を精査する公算が大きい。

アナリストらは、経営統合を進めることに対し、農家の政治的な抵抗に直面すると予想している。

寡占化がもたらす悪影響

世界最大の農薬・種子企業の誕生は農業関連産業の寡占化を一層強め、農家にとって大きな脅威となる。売り手市場となり、農家が求める種子ではなくGM種しか販売しないこともできるし、価格も思いのままにできる。影響は農家に留まらず、われわれの食料が脅威にさらされる。

化学肥料、農薬、種子がごく少数の企業に牛耳られるようになったのは、もともと自給的農業であったものを、「近代化」と称して工業的農業に切り替えるグローバル企業の戦略によってであった。工業的農業は大型機械、石油、化学肥料、農薬、種子を資材として外部依存させる。そして今日、食料生産がごく少数の大企業らに生殺与奪を握られる事態になった。企業依存に変えたのは、巧みに隠された新植民地策だったのではと思わされる。

農業は食料主権の要であり、食料主権を実現できるのは自給的農業なのだ。自給的農業とは地域のエネルギーや物質を利用、循環させることで可能な自立(自律)的農業のことだ。これが有機農業の本質と思う。だから有機肥料を外部から購入して成り立つ有機農業はほんものではないと考えるのだが。

なお、公正な競争が大企業の租税回避や寡占化で失われて、いまや資本主義は機能不全に陥っているのではないか。(いのちの講座 101号より)

(2016/09/28)

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