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食用油―原料原産地表示意見交換会


消費者と業界団体による意見交換

3月29日、消費者庁による「原料原産地表示に関する意見交換会」が開かれ、食用油の表示について意見を述べました。現行の食用油の表示は原材料名が品名と同じ「○○油」とだけ表示されるという消費者不在に放置されています。食用油に原料の作物名と原料原産地(混合の場合は割合)を表示し、あわせて遺伝子組み換えの表示を求めました。

現行表示例@

品名 食用なたね油
原材料名 食用なたね油

ここは原材料名「なたね種実(カナダ)」 のように原料作物名と原料原産地を表示すべきです。

現行表示例A サラダ油(調合油)の場合

品名 食用調合油
原材料名 食用なたね油、食用大豆油

この場合@同様に原料作物名と原料原産地、および其々の使用割合を表示すべきです。

やる気になれば可能

日本植物油協会の資料によれば、カノーラ油の場合輸入したナタネ種実を国内で搾油している割合は98%、大豆油は94%が大豆を輸入して国内搾油しています。コーン油は100%が輸入コーンを国内で搾油しています。

一方、オリーブオイルやパームオイルは逆に輸入油での供給が100%になっています。

種実輸入し国内搾油するものと、油で輸入するものと、物によってこれだけはっきり分かれています。よって、そのことを原材料名に表記することは難しいことではないはず。

また輸入油糧作物の大豆、菜種、綿実、コーン、これらは遺伝子組み換えの割合が現在では8〜9割に達しているのですから、遺伝子組み換え表示が必要です。現行は、最終製品の油でDNA検査をしても検知が困難という理由でGM表示対象から外されていますが、これは政治的に作り出されたへ理屈です。油糧作物として輸入された段階でなら検知できるのですから、それを基準にすべきです。

大豆も、菜種も、コーンも、綿実も、大半は種実の形で日本に来ています。GM不分別なら「遺伝子組み換え」と表記するべきです。これはEUが摂っている方法です。

また油は有害物質の混入が起こりやすく安全性の裏づけのために原料の出所から加工まで、トレーサビリティの効く流通管理がされていてしかるべきものです。であれば原料原産地表示やGM表示が当然可能でなければならないはずです。

「表示は困難」と業界団体

これに対し、同じく意見を述べた業界団体の社団法人日本植物油協会の神村氏は原料原産地表示は困難との主張。サラダ油は、現在、カナダと豪州の菜種、米国とブラジルの大豆、それぞれの粗油を精製し、これを混合して作る。粗油の精製は自社工場だけでなく、他社工場からの購入、外国から輸入もあるという。したがって、原材料表示はこれらの順列組み合わせの数となる。加えて今後は種実より粗油での国際流通が圧倒的になるという。

このままでは中国下水溝油が国内に?

そこで私から神村氏に対し「それほど多数のいろいろなところからの油を混ぜて作っているというのであれば、なおのこと、トレーサビリティの義務付けと原料原産地表示がなければ消費者は安心して買うことができない。粗油での輸入は安全性を低め、今回中国で発覚した下水の油を精製した食用油が流通していた事件が日本にも及ぶことになる」と付け加えました。

油の原料原産地表示とGM表示を実現させ、国産の油糧作物振興に舵を切らせなければ食の安全保障も安全もほど遠いというものです。

(2010/04/25 『いのちの講座』63号 2010.4.28 より)

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