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食用油の表示改正を求める意見書を提出


意見交換会も開催予定

消費者庁の加工食品の原料原産地表示についての意見募集に、食用油について意見を送りました。字数制限のため、意見書の要旨を提出しました。

2010年3月29日には意見交換会が開催されます。
1 日時 3月29日(月)10時〜16時
2 場所 三田共用会議所


意見書全文

輸入食料の増大に対する消費者の懸念に対応して、これまでJAS法において生鮮食品の原産地表示、また加工食品の原料原産地表示が順次取組まれてきています。一方、食用油の表示はまったく手付かずのままであり、食用油の表示の改善を強く求めるものです。

輸入農産物のなかでもっとも大量輸入している油糧作物ですが、原産地表示もGM表示もされないままです。大手植物油メーカーでなる業界団体は原産地表示は不可能であるかのように主張していますが、加工食品における原料原産地表示の検討会において、原料調達先の変動や複数あることの課題にも対応しようとしています。自分が口にするものがいかなるものなのか、消費者は知りたいのです。JAS法の品質表示基準に基づく消費者の選択、情報提供の趣旨からも以下の改正を早急に取組まれますよう、お願い致します。

1. 油の場合、現行表示では、品名と原材料名が同じです。

例えば、

品名 食用なたね油
原材料名 食用なたね油

と表示されています。

@ 原材料名は"食用〇〇油"ではなく、他の加工品同様に、原料の油糧作物名を以下のように表記すべきです。あわせて産地を表示すべきです。

例.
品名 食用なたね油
原材料名 なたね種実(カナダ)

A オリーブ油などのように輸入した油を専ら使用する場合は

原材料名 「オリーブ(○○国)使用オリーブ油(○○国)」

と表示すべきです。

2. 調合油の割合表示について

@現行の表示は下記のようになっています。

これでは使用割合も不明です。上記1の原料作物と産地の表示とあわせてそれぞれの使用割合も表示すべきです。

B原料油脂の一部の油脂名を特に表示する場合、現行制度では、30%以上(60%未満)の当該油脂を含んでいればよいことになっています。(食用植物油脂品質表示基準第4条)

国産なたね油が30%入っていれば「国産なたね油」という商品名が許されるということで、おかしなことです。消費者に明らかに(優良)誤認を与えています。一部の油脂名を特に表示する場合は、少なくとも60%以上使用されていなければ妥当性がありません。

原材料名表示に以下の例のように、正しく割合を表示するべきです。

例.
原材料名 なたね種実(オーストラリア)7割、なたね種実(国産)3割

C 調合ごま油表示の場合

当該原料油脂の含有率が60%以上の場合、原料油脂名に「調合」の文字を冠した、例えば「調合ごま油」のような品名が許されています。以下の例のように、ゴマ油以外の使用した他の油についてすべて表示すべきです。

例.
原材料:ゴマ(中国)使用ごま油(国産)6割、ダイズ(米国)使用ダイズ油(国産)4割

3.遺伝子組み換え不分別原料使用の表示

遺伝子組み換え不分別の原料を使用する食用油にその旨を表示すべきです。

現在の遺伝子組み換え表示においては、最終商品のDNA分析によって検知できる場合に表示という理屈になっています。そのためDNAを検知しにくい油には表示がされません。大豆、キャノーラ、コーン、綿実はそれぞれ遺伝子組み換え品種が8割、9割を占める生産国からの輸入によっています。原料のほとんどが遺伝子組み換え品種であることからも、その情報は消費者に開示されるべきです。表示に当たっては、EUのように原料作物での検知を基準にするよう切り替えるべきです。遺伝子組み換え不分別の原料作物を利用した食用油にはその旨を表示されるべきです。

4.「食用なたね油」の定義について

現行は「あぶらな又はからしなの種子から採取した油」となっていますが、「油糧用なたねの種実」とすべきです。カラシナ種実の食用油利用は国内ではありません。アブラナ科の種実なら、なんでも食用油にできるという認識は、改められるべきです。

以上

付記

社団法人日本植物油協会資料(平成20年11月4日)によると、なたね油(カノーラ油)は輸入ナタネ種子による国内搾油割合は98%(平成19年 以下同様)で油で輸入する割合は2%です。大豆油は94%が大豆を輸入し国内搾油しています。コーン油は100%が輸入コーンを国内搾油しています。オリーブ油やパーム油は逆に輸入油での供給が100%となっています。これを表示するのは難しいことではないはずです。

国産ナタネの状況

国内では、1957年に最高の作付け面積258,600ヘクタール、生産量286,200トンを示した後、1961年大豆の貿易自由化(油糧用大豆の輸入)、1971年にはナタネの自由化となり、減少の一途を辿った。2006年産は800ヘクタール弱である。国内生産量は1千トン、輸入量は220万トンで、最近のなたねの自給率は0.04%程度といわれる。

2000年まで「大豆なたね交付金暫定措置法」により生産者への助成金が支払われていたが、2001年に廃止。2001年産より「なたね契約栽培推進対策事業」(2001〜2006)、「高品質なたね産地確立対策事業」(2006年〜2008年)によるさらなる暫定措置により主産地の北海道滝川、青森横浜町などの契約栽培が推進されている一部産地において助成金が支払われてきた。しかし、2009年産でこの事業も終了する。なお、「新たな食料・農業・農村基本計画」の策定資料によれば、水田利活用自給力向上事業としてナタネの助成金(10a当たり20,000円)が計上されているが、低く、必要十分な額とはいえない。地域が安定して生産に取組める環境とはいえず、栽培の持続、発展は思うようには望めない状況にある。

ナタネの国産振興の意味

高齢化の進行が課題となっている日本農業において、ナタネ10a当たり労働時間は約4時間であり、一般野菜の約20分の1となっている。汎用コンバインによる収穫や機械乾燥の普及により時間だけでなく、作業そのものが軽減され、高齢化でも栽培できることから遊休農地の解消や余剰時間での野菜栽培への取り組み、菜花の出荷、景観作物としての観光客誘致など複数の効果をもたらしている。また、一昔に行われていたように輪作作物としても有用であり、国内の小規模搾油業者が行う圧搾法による搾油後の油粕は、良質の有機肥料としてひっぱりだことなっている。

消費者の遺伝子組み換えナタネに対する懸念、不安は強く、安心、安全な国産ナタネの必要性は高まっている。菜の花は国民に農村ならではの景観と文化を提供する作物であり、わずかとなった「なたね」の自給率向上を真摯に図らなければならない。

(2010/03/17)

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