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米国の未承認GMコメ品種混入事故−遺伝子情報の提供を義務付けよ!


バイエル社が突然の混入報告

7月31日、バイエル・クロップサイエンス社は商業化されているコメ(長粒米)のサンプリング検査で除草剤耐性のGMコメの混入があったと規制当局に報告しました。同社がなぜサンプリング検査したのかについては明らかにしていません。このGMコメは同社の除草剤リバティリンク(成分グルフォシネート)に耐性を持たせたLLRICE601で、1998年から2001年にかけて同社の試験圃場で栽培試験が行われていたといいます。安全性確認申請はなされていません。

報告を受けたUSDA-APHIS(動植物検疫庁)とFDAは、利用可能な科学的データを再検討した結果、このGMコメはヒトの健康、食品・飼料安全性、環境安全性のいずれにも問題はないと発表しました。安全性評価を受けていないものを安全とすぐ発表することに不信感を抱かざるをえません。

日本の対応

日本の厚生労働省は8月19日、米国産のコメ(長粒種のみ、中・短粒種は除く)の輸入を禁止しました。当然の措置です。今年に入って米国からの輸入米は全て短粒米か中粒米で、長粒米輸入の届出はないといいます。同省は在庫の長粒米の使用を停止するよう業界に要請しました。米国産米の輸入実績(2006年1月1日〜8月18日)によれば、すでに輸入された米を主要原料とする米粉等の加工品は17,000トン。これらについては言及はありません。

また、厚労省はこのGM米の検出技術の提供を米国政府に要請しました。遺伝子組み換え品種の汚染事故では、汚染品種を特定する遺伝子情報が提供されないと検知検査が不可能だからです。

しかし、これまで汚染を引き起こした開発企業は企業秘密だとしてその遺伝子情報の提供を拒んできました。05年3月のシンジェンタ社の未承認GMトウモロコシBt10の混入事故がそうでした。「認可済みのBt11と似ているため、安全とみなせる」と強弁したのです。日本政府もBt10は安全性には問題ないと発表し、混入の疑いのあるトウモロコシの輸入を続けました。

厳しい欧州の対応

一方欧州は、遺伝子情報が提供されないなら、輸入にあたっては混入が無いことの証明を米国側の輸出業者に義務付けるという措置を発表、これにあわてた米国側はようやくその情報を提供したという経緯がありまる。米国政府がすみやかに提供しなければ、輸入検査ができないのだから、日本政府が取るべきは米国からのすべての輸入米・米加工品の禁止措置でしょう。

このように安全審査されていない試験栽培の組み換え作物が商業流通経路に混入してしまうことが後を絶ちません。花粉の飛散による交雑、刈り取りのコンバインへの付着、倉庫や運搬トラックでのコンタミ、いろいろの可能性があります。バイエルが自主検査をしたのはなぜか?憶測ですが、試験農場が出荷してしまったということがあったのではないでしょうか? いずれにしても野外栽培実験はこのように一般作物への混入を防げないということです。ましてや米という主食の作物であれば、さすがの日本も輸入停止せざるを得なかったのです。消費者としても米国産の米についてはGMコメの実験栽培地がいくつもあることを知れば、混入を懸念してかかるしかありません。国内で行われているGMイネ野外栽培試験にとってもこれをもって他山の石とすべきでしょう。(「いのちの講座」41号記事から)

注:バイエル・クロップサイエンス社―04年春にバイエル社に買収される前はアベンティス・クロップサイエンス社といい、混入で健康被害をもたらしたスターリンク・コーンを開発した会社でもある。

(2006/9/2)

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