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遺伝子組み換え作物を屋外で実験栽培する際のガイドラインづくり


農水省技術会議の要旨

表記を審議する農水省技術会議/第2回「第1種使用規定承認組換え作物栽培実験指針」検討会が12月22日開催されました。

素案では、国の研究機関(独立行政法人など)で屋外の実験栽培が始まっている7作物のうち、交雑を起こすことが確認されているイネ、ダイズ、トウモロコシ、西洋ナタネの4作物について、周辺の農地から隔離すべき距離を検討。

花粉の飛散距離と交雑率を調べた国内のデータを基に、イネは20メートル、ダイズは10メートル、トウモロコシは600メートル(防風林がある場合は300メートル)、西洋ナタネは600メートル(付近に非組み換えナタネを作付けした場合は400メートル)とする素案をまとめました。

但し、トウモロコシ・ナタネについては安全性承認が得られている場合に限ることとし、安全性承認が得られていない場合は摘花・除雄(トウモロコシ)、防虫網の被覆(ナタネ)、温室内栽培などの交雑防止措置をとることを義務づけます。また、隔離距離による交雑防止措置をとれない場合は、開花前の摘花・除雄、ネットによる被覆または温室内栽培を行うこととしました。

イネとダイズは別の作物とは交雑しないが、トウモロコシは家畜の餌に使われるテオシント(トウモロコシの起源といわれる、メキシコやグアテマラに自生するイネ科の野生植物 別名:ブタモロコシ)に、西洋ナタネはハクサイやカブなどにも交雑するといいます。

なお、この実験栽培指針ではカルタヘナ法による野生生物種への影響評価については除外するとの考えにたち、近縁野生種も除外されます。

このほか実験栽培が始まる1カ月前までに、実験内容や説明会の日程を公表するよう定めました。

今後、パブリックコメントを募集して次回2月23日(月)に第3回検討会で最終的なガイドラインを作成します。

安田節子コメント

組み換えと在来品種との交雑の事例がいくつも報告されているナタネやトウモロコシについては、交雑防止の意志を感じさせる内容ではありますが、大豆やイネについては甘い。

農水省は、これらは自家受粉作物で交雑はほとんど起きないとの認識に立っているようですが、自然界は杓子定規のようにはいきません。

米の場合、開花時期に台風の来る日本では、強風による花粉の遠距離飛散の可能性もあります。以前、集会で米農家の人が、収穫したうるち米に黒米が少しだが混じる、かなり離れたところの田んぼでも花粉の交雑が起きることは生産者なら知っている、といっていました。

大豆の場合、大豆の花のはちみつがあるくらいで、飛翔距離の長いミツバチが花粉を遠くへ運ぶ可能性も否定できません。

また、遺伝子組み換えは、作物にとっては不要な遺伝子をいくつも入れ込まれ、負荷が高まります。生命体として弱まると、(おそらく種の保存機能が働いて)、自家受粉作物が他家受粉の傾向を強めるといいます。実際に、シロイヌナズナの実験では、組み換えされた結果、自家受粉から他家受粉へ変わったことが報告されています。

野外栽培が実際行われているのは、農水省傘下の独立行政法人が開発している米であり、モンサント社の息のかかった作付け活動が展開された組み換え大豆です。これらがいま、日本で汚染を引き起こす懸念を生んでいます。これらの作付けの歯止めとならなければ、指針の意味がないのではないでしょうか。

(2003/12/26)

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