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地下水汚染を引き起こすことがわかった除草剤グリホサート(「ラウンドアップ」)


グリホサートとは?

グリホサートはモンサント社の除草剤「ラウンドアップ(商品名)」の有効成分です。世界でもっとも売り上げを誇る除草剤で、日本でも除草剤シェアのトップを占めます。モンサント社は、「ラウンドアップ」は植物を枯死させる効能の高い除草剤で、しかも環境にやさしく、散布後、土壌微生物によって速やかに分解されると宣伝してきました。モンサント社が開発した遺伝子組換え作物のほとんどが「ラウンドアップ」耐性品種です。

分解されない事が判明

ところが、2003年5月13日のNorfork genetic information networkによれば、デンマークの「デンマーク・グリーンランド地質学研究所( DGGRI )」の研究報告(未刊)で、土壌に散布されたグリホサートは分解されずに土壌に浸透し、地下水を汚染することがわかりました。

規定どおり散布されたグリホサートは、上部地下水を1リットルあたり0.54μgの濃度で汚染していたといいます。

モンサント社の研究データに基づいてグリホサートを認可したデンマーク環境省は飲料水の許容レベルの5倍以上もの汚染数値に驚きました。これまでモンサント社のいうように土壌バクテリアが分解するものと信じ、グリホサートが地下水に達することはないと考えていたからです。

デンマークでの対応

現在環境大臣はグリホサートを有効成分とする除草剤「ラウンドアップ」や「タッチダウン」の使用規制を検討しているといいます。

デンマークではグリホサートは収穫後の農地の雑草駆除に使用され、最も使用量の多い除草剤です。この5年間でグリホサートの使用量は2倍(除草剤として年間800トン使用)に増えています。これまでにいくつかの井戸の汚染が報告されていたという話です。デンマークの環境大臣は「汚染された飲料水を浄化するのに5年から10年はかかる。しかもそれはまだ氷山の一角にすぎず、現在も土壌から地下水に向かって浸透し続けている」と深刻な事態との認識を表明しています。

飲料水も汚染される

グリホサートが分解されずに土壌に浸透し地下水を汚染するという事実は遺伝子組換え作物を生産禁止にするに足る重大な環境リスクといえます。グリホサートには発がん性の疑いが指摘されています。ラウンドアップ耐性の組換え作物(ダイズなど)を広大な面積作付けしている米国、アルゼンチンの地下水汚染が懸念されます。

ずっと指摘し続けていることですが、開発企業の提出データだけに依拠する安全性評価がいかに信用ならないものであるかというです。

まず、国の自前の検証によるグリホサート剤の安全性の再評価が早急になされるべきでしょう。

結果がでるまでラウンドアップの販売を一時停止させるのが筋ですが、農水省にその気概を期待することはできるでしょうか。

日本の状況

また、日本において、遺伝子組換えのラウンドアップ耐性ダイズを栽培しようとする「バイオ作物懇話会」のような生産者の動きがでてきています。花粉の交雑による遺伝子汚染のみならず、地下水、井戸、河川のグリホサート汚染まで引き起こされるのです。消費者が食べたくないというものを環境汚染してまで生産しようとする愚かしいことはやめるべきです。それに、これらの事態が発生した場合、開発者、認可した行政、生産者は責任をとれるのでしょうか。とれるはずもないなら、やってはいけないのでは?

(2003/5/24)

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