タイトル 「食政策センター ビジョン21」主宰の安田節子公式ウェブサイト/
リンクは自由です(連絡不要)/お問い合わせは管理者まで

安田節子ドットコム

ヨハネスブルグ・サミット:GM作物推進の企みは破られた


インディペンデント紙(ロンドン)9月2日 By Geoffrey Lean in Johannesburg

昨夜の地球サミットで、第三世界の国々にGM作物と食品を押し付けようとの米国の企みは予想に反して阻止された。

エチオピアからの情熱がこもった申し立ての後、環境に関する国際条約よりもWTOに権力を与えたであろうサミットの行動計画の条項を、大臣たちは拒絶した。

この条項の効果のひとつは、途上国がGM輸入を拒否する権利を与えているバイオ安全に関するカルタヘナ議定書よりもWTOを優先する権力を与えるものになっていたであろう。

WTOは自由貿易をその最高のプライオリティ(優先)と見なしている。

このサミットにおいてほとんどの課題の進展を阻止してきたアメリカの代表団を動揺させた現状打破は、交渉者がこの計画についての顕著な意見の相違を解決するため、夜を通して働いたことで起きた。

ほとんどこの提案は通ると思われていた。GMにドアを開けることに加えて、有害廃棄物、オゾン層を破壊する化学薬品と地球温暖現象を起こす汚染物質の貿易をコントロールする国際リスク条約を置くはずだった。

当初、提案に対する唯一の抵抗はノルウェーとスイスからだけだったが、エチオピアの代表団が介入した後、第三世界の残りがそれに同調し、その後、元来EC高官によって採用を強制されていた欧州連合が続いた。

合衆国は孤立したままに置かれた。

「提案が阻止され時これほど多くの環境大臣がお互いを抱きしめて喜び合っている姿を私は見たことがありません」、と今朝早く英国の交渉者の1人は述べた。

安田節子コメント

これは、地球サミットの大きな成果といえます。さて、日本はどういう態度だったのか知りたいところです。

バイオ安全議定書(国際条約)は輸入国が遺伝子組み換え作物の輸入にあたって環境安全に関するデータを輸出国側に求め、自国の環境汚染を阻止するために輸入を拒否する権利を認めています。

これが、自由貿易を最優先とするWTO(世界貿易機関)のルールとどちらが優先するのかが決まっていなかったのです。

私は、遺伝子汚染を受けた環境をもとにもどすことは不可能であり、生物多様性を失うことは人類生存の危機となることを考えれば、バイオ安全議定書の優先が当然と思うのですが。

もしWTOが優先するとなれば、GM作物輸入をバイオ安全議定書に則って拒否しようとしても、貿易を阻害しないためのさまざまな制約を受けて実効性が弱まります。

組み換え作物の輸出の道を推進したい米国にとってWTOを錦の御旗にして高まる「環境」障壁を乗り越えようとの思惑だったのでしょう。

貿易による一時的利益の方が環境や命に優先するなんて、どう考えてもまっとうではありません。目先の利益のため、将来的に人類の生存を脅かす取り返しのつかないつけを残すなら、その罪は計り知れないほど重いです。

公正、正義に基づくのではなく、大企業の利益のために国際ルールを手前勝手に運用する米国のやり方は通らなくなってきています。

(2002/9/2)

[INDEX][遺伝子組み換え食品目次][遺伝子組み換え食品コラム・目次]

©2000 Setsuko Yasuda All rights reserved.