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遺伝子組み換え作物がミツバチを滅ぼす可能性


抗生物質が効かなくなってしまったミツバチ

米国のBeekeeping & Development(「養蜂と開発」)2001年6月号 第59号で、 蜂蜜生産者協会のJoe Rowland氏が以下の懸念を指摘している。(尾崎氏提供翻訳資料より要旨)

2000年6月、ドイツのJena大学の研究者グループによってGMカノラ(なた ね)由来の遺伝物質が種の壁を越えてミツバチの消化管にいる細菌内に発見された。

遺伝子組み換え(GM)作物には導入遺伝子に抗生物質耐性遺伝子(マーカー(目印))が結合したものが植物に導入されている。
(安田注:抗生物質耐性遺伝子は選抜のための目印(マーカー)として入れられている。組み換え操作したいくつもの細胞のなかから組み込みが成功したものを選抜するために細胞を抗生物質の液に浸す。抗生物質耐性遺伝子がちゃんと細胞の中に入った組み換え成功の細胞だけが抗生物質の影響を受けないのでこれを選抜できる)

抗生物質耐性遺伝子は組み換え植物の中ではなんの働きもしないが、植物体から転移して他の微生物体に入りこむことになれば、その微生物は抗生物質耐性を獲得することになる。

アメリカ腐蛆病(AFB病)はミツバチの消化管に見出される細菌感染としてもっとも怖れられている病気だ。

1996年まで40年間、抗生物質のテトラサイクリンは、AFB病に対して効果的に使用されてきた。しかしこの年、米国中西部のウイスコンシン及びミネソタ州、アルゼンチンで、テトラサイクリンが効かないAFB病が確認された。

以来米国の養蜂は抗生物質耐性AFB病の増加に悩まされている。いまでは ニューヨーク州を含む17州とカナダの一部まで広がっている。

1990年代をとおしてアルゼンチン、カナダ、米国で何百万エーカーもの除草剤ラウンドアップ耐性GM作物が栽培された。ラウンドアップ耐性作物の作出に用いられた抗生物質耐性遺伝子はテトラサイクリン耐性である。

40年間効果的に使用されてきたテトラサイクリンが突然地理的に隔絶した2つの国で同時に耐性を獲得したのだ。アルゼンチン、カナダ、米国はテトラサイクリン耐性遺伝子という共通の糸でつながっている。

筆者はGM植物と抗生物質耐性AFB病原菌の間での遺伝子結合の可能性が推論であることを強調しておくが、事実であれば公衆の健康に関する関連性はきわめて重大である。

抗生物質耐性遺伝子の病原体への転移が証明されれば、米国食品医薬品局はGM作物にともなる人間への強い危険性について再評価を行い、販売の認証取り消しをせざるをえなくなるだろう。

安田節子によるコメント

欧州で科学者・医師たちが指摘するGM作物に対する懸念の筆頭が抗生物質耐性遺伝子の影響です。

先進国では抗生物質の多用が耐性菌を生み出し、公衆衛生の脅威となっ ています。それは、薬が効かない感染症で人が死亡してしまうからです。

今日では、いかに抗生物質の使用を抑制して耐性菌の出現を押さえるかが、医療現場での大きな課題なのです。

だから、GM作物から抗生物質耐性遺伝子を体内に取り込むようなことは避けなければならないというのが、GM反対運動の根拠となっています。

GM作物の生産国、米国・カナダ・アルゼンチンが十分な調査データを積み重ね、情報公開し、適切な対応をとらないなら、ミツバチの全滅という恐ろしい可能性を否定できないでしょう。

今回のRowland氏の指摘に、GM作物の問題の深刻さを改めて感じます。

(2002/4/25)

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