タイトル 「食政策センター ビジョン21」主宰の安田節子公式ウェブサイト/
リンクは自由です(連絡不要)/お問い合わせは管理者まで

安田節子ドットコム

中国が遺伝子組み換え大豆輸入に対する合衆国の圧力に屈服


Pesticide Action Network North America のウイークリーE−mail ニュー ス 2002年3月18日“China Caves to U.S. Pressure on GE Soybean Imports”より

中国政府は米国貿易高官との何カ月もの交渉の結果、またWTOへの提訴という脅しを受け、遺伝子組み換え(GM)食品の輸入のための暫定的認可案を発表した。

これによって米国はその70%が遺伝子組み換えである大豆を輸出することが可能となる最善の規制を勝ち取った。

米国から世界最大の大豆輸入国である中国への大豆輸出は毎年10億ドルに上る。

今年3月20日に発効予定の中国の規則では、すべての輸入GMに表示を必要とし、また中国に製品を輸出している企業の製品が、人、動物と環境に無害であるという安全性証明書の申請を義務付けている。

その証明書発行には最高270日を要する。

これに対し、発表された新しい暫定的認可案では、中国の農業省は、GM食品の輸出業者が自国あるいは第3国の安全性証明書を持っているなら、暫定的安全性証明書を発行するというもの。

この証明書はたった30日で発行され、2002年12月20日まで効力がある。

この発表が行われるまで、新しい中国のバイオテクノロジー規則の実施を前に、中国への米国の大豆輸出が事実上止まっていた。中国の輸入業者は大豆のオーダーを出すのをストップし、米国の輸出業者は船荷の輸送を止めていた。

米国高官は中国の規則が制限的であり、認可の必要条件が不明確であったと不満を表明していた。

安全問題というより中国は国内の大豆マーケットを守ろうとしていると批判していた。

2月に、米国農務次官は中国に対して世界貿易機関( WTO )への提訴を提起したことは「大きい選択」であったとコメントした。

米国の圧力を受け、中国農業省は3月にGM製品の輸入に関する詳細な規則を公にし、いくつかのバイオテクノロジー試験研究機関に、規則が効力を発する以前に、安全性証明書を発行する権限を与えると発表した。

中国は米国大豆を520万トン(2001年)買う、単一の最も大きい市場だ。

年間の米国大豆輸出合計はおよそ2700万トンになる。この米国大豆のおよそ70%がモンサント社の除草剤ラウンドアップ(成分グリフォサート)耐性の遺伝子組み換え品種だ。

アメリカの農業関連企業グループが米国政府に貿易問題として中国に圧力をかけて従わせるようしきりに促していた。米国大統領と中国総書記の2月下旬の会合で、バイオテクノロジー規制が論じられたが、問題は未解決のままだった。

少なくとも2社の匿名のバイオテクノロジー企業(1社は米国の、もう1社は欧州の)がもし中国が規制を続けた場合採り得る「行動」を考察するためニューヨークで弁護士を雇っていた。

バイオテクノロジーの批評家達は──ボリビア、クロアチア、タイとスリランカを含めての──他の国にそれらの国々が採用した、あるいは採択を提案したGM製品への厳格な規制を没とするよう圧力をかけたと言って合衆国、アルゼンチンと他の輸出国を非難した。

合衆国とアルゼンチン両国はGM輸入を規制する規則はWTOの下での国際貿易ルールに違反すると論じている。

安田コメント

ブッシュ政権で強まった覇権主義と企業政治を背景に、WTOの貿易ルールが不公正に利用されています。

国家の主権や民主主義を侵害してもまかり通る貿易自由化とは、いったい誰の為のものなのでしょうか。

グローバル化が進めば進むほど、予防原則に立った健康被害や環境汚染を予防するための安全規制が重要になります。

それを貿易制限的と力で排除するのは、安全コストを負担したくない輸出企業の意を受けてのことです。

貿易が対等で公正に行われることが平和を作り出す原点ではないでしょうか。

(2002/03/22)

[INDEX][遺伝子組み換え食品目次][遺伝子組み換え食品コラム・目次]

©2000 Setsuko Yasuda All rights reserved.