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99%以上の食品で「遺伝子組換えでない」と表示されている?


日経オンライン 2001/11/27より

ウェブページの読者の方から、次の記事についての意見を求められました。

厚生労働省が遺伝子組換え食品の表示状況を調査した結果、義務表示の対象となっている24品目の食品では99%以上の食品で「遺伝子組換えでない」と表示されていた実態が明らかとなった。これを、厚生労働省が11月22日に発表した。

表示対象自体が全体の一部に過ぎない

日経オンラインの表示状況の報道ですが、まず第一に、これまでに流通を認められた組み換え作物は大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、ジャガイモ、テンサイがあるのに、表示対象は大豆とトウモロコシの2作物についてだけだということを知っておいてください。

大豆、トウモロコシの製品24品目のみが表示対象というのがポイントで す。

ですから食用油として販売されているナタネ(カノーラ油またはキャノーラ油)やワタ(綿実油)は、表示なしで大量に出まわっています。

また、ジャガイモも表示対象ではありません。組み換えの殺虫ジャガイモが未承認の段階で、日本の菓子メーカーのほとんどのポテトチップスから検出され、回収さわぎになったのは記憶に新しいことです。

厚生労働省はあわてて2001年9月に承認品種としたので、今では大手をふるって流通できるようになりましたが、表示は2003年1月までされません。

殺虫ポテトチップスなぞを知らずに食べる状態が今年1年放置されるのです。

ほとんどは表示対象外

表示対象作物である大豆、トウモロコシにしても、例えば大豆の約8割を消費する大豆油、醤油は表示対象外ですし、トウモロコシから作るコーン油、異性化糖なども対象外、また、油を絞った後の脱脂大豆やトウモロコシの大半は家畜飼料ですが、これらも表示されません。

つまりこれは、輸入される大豆、トウモロコシの約90%が表示されないままだということです。

現在の表示制度というのは、輸入されてくる組み換え作物のほんのごく一部にのみ適用ということなのです。

不使用表示もまやかしだった

現在、指定された表示対象の24品目の食品についてメーカーは、「遺伝子組み換え原料使用」の表示をしては売れないことがわかっているので、組み換えのものとは分離したという証明のある原料に切り替え、「遺伝子組み換え原料不使用」という任意の表示で販売するようになっています。

つまり、表示対象となった食品は「不使用」表示に切り替わったということです。

この記事は、だから安全なものしか出まわっていないと報道したいのでしょうが、実際はその「不使用表示」もまやかしなのです。

というのも、厚生労働省も農水省も不使用表示の場合、遺伝子組み換えが5%くらいまでの混入はやむなしとして、5%という高い混入率でも、米国のいいなりに認めているのです。

ちなみに、5%も組み換えが混じっているなら、ヨーロッパへ輸出する場合には「遺伝子組み換え食品」の表示が必要となるのです。

EUは1%以上混入している場合は、遺伝子組み換え食品と義務表示させているからです。

日本の表示制度はこのように御粗末極まりないものです。

(2002/1/21)

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