タイトル 「食政策センター ビジョン21」主宰の安田節子公式ウェブサイト/
リンクは自由です(連絡不要)/お問い合わせは管理者まで

安田節子ドットコム

ノバルティス社が遺伝子組み換え食品の使用を終了!


ニューヨークタイムスの記事

まずは、下の翻訳記事をお読みくださいね。なかなか興味深い記事ですよ。

多少難解なところもあるかもしれませんけど、それはあとで解説を入れますので。

 ニューヨークタイムス 2000年8月4日
『ノバルティス社、遺伝子組み換え食品の使用を終わらせる』
 アンドリュー・ポラック(安田訳)

ノバルティス社は世界的なバイテク企業だが、昨日、全製品から遺伝子組み換え成 分を削除していたことを認めた。

この政策は環境保護グループのグリーンピースに送られた手紙のなかで明らかにさ れ、後にノバルティス社にも確認された。

ノバルティス社はガーバー・ベビーフードやワサ・クラッカー、そしてさまざまな健康食品などを製造しているが、6月30日までに基本的に除去を達成したと手紙で述べている。

ノバルティス社は、世界中の自社製品から遺伝子組み換え成分を除去した最初の大企業であると、グリーンピースは述べた。

さまざまな企業、例えばフリトレイやマクドナルドは、米国で彼らの製品のいくつかから、遺伝子組み換えコーンやポテトを除去している。

遺伝子組み換え食品に対する消費者の抵抗が、ことのほか強い欧州では、販売されている食品について、沢山の企業が遺伝子組み換え原料を除いている。

この動きはノバルティス社を微妙な立場におく。なぜならノバルティス社の農業部門は遺伝子組み換え種子の販売を続けているからだ。

特に、殺虫成分を作るバクテリア遺伝子を導入したコーン種子を作っている。また、ノバルティス社は遺伝子組み換え作物の安全性を弁護するために5000万ドルを使っている農業バイテク企業連合のメンバーでもある。

グリーンピース・アメリカの、遺伝子組み換え食品反対キャンペーンのリーダー、 チャールズ・マーグリスは、
「ノバルティスがいま、農家にバイテク種子を売る時、どのように農家に伝えるのか興味のあるところだ」 と語った。

ノバルティスは昨年、子会社ガーバーのベビーフードから遺伝子組み換え原料は除くと発表した。しかしそれは、遺伝子組み換え作物の安全性が疑われるからではなく、購入者たちがそれらを心配しているからだという。

とはいえ、ノバルティスが他の食品について同様な扱いを進めるかどうかは不明であった。

ノバルティスのスイス本社からの声明では昨年、『ノバルティス消費者健康』(ノバルティス社の消費者対策部門と思われます……訳者註) は、消費者の遺伝子組み換え作物に対する感情に配慮し、選択権の提供と規制の要求を考慮するため、世界中で販売する栄養食品中の遺伝子組み換え原料の使用を避けるための実際的なステップを踏んできたという。

マーグリスは、
「ノバルティスの決定は他の食品企業に圧力になるだろう」 と語った。

しかし、大手食品企業を代表する、『米国食料雑貨販売業』 のスポークスマン、ジーン・グラボースキー は、
「ノバルティスの動きは、たいして影響はないだろう、なぜなら、米国でのノバルティスは、そんなに大きな食品供給業者ではないからだ。
 ノバルティスの米国での年間食料販売は120億ドルで、その半分以上がガーバー製品、あとの残りの多くが特別なダイエット食品だ。この方針によって米国で深刻な販売の影響を受ける食品は、せいぜいオヴァルティン(麦芽入りの粉末栄養飲料)くらいだ」 と述べた。

ノバルティスは原則的には製薬企業であり、農業部門は英国のアストラゼネカと合併する計画だ。合併した事業はシンジェンタという新会社になる。

ノバルティス社とはどんな会社か?

ノバルティス社は、スイスのチバガイギーという製薬会社が前身です。

スモン病という薬害を引き起こしたキノホルムという薬のメーカーということで、悪名を馳せました。

というわけでして、2兆8000億円(1998年)という、膨大な総売上のうち、売上の主力は医薬品(1兆3080億円)が占めています。

その次が農薬(5,431億円)、次いで栄養食品(3,245億円)です。種子部門は、1,314億円にすぎません。

ノバルティス社が非組み換えにした理由

確かにノバルティス社は、遺伝子組み換え種子開発では、モンサント社と肩を並べる世界トップ企業です。

しかし、遺伝子組み換え作物への逆風が吹いて採算が悪化。農薬の売上も環境問題が厳しくなる中で頭打ちです。

そこで、本業の製薬部門の利益を脅かすアグリビジネス(農薬・種子などの農業関連部門)を切り離すことにしたわけです。

今後の栄養食品ビジネスの継続のために遺伝子組み換え原料を排除するという、上の記事にあるような会社方針は、このようなアグリビジネス切り離し方針があったために思い切れたのかもしれません。

それにしても、世界的多国籍企業の経営方針を左右することができる消費者パワーの素晴らしさ。これからもどんどん発揮していきましょう!

悪いものを作っている企業のものは買わないという消費者たちが、結果的に良い企業を育てるのです。

[INDEX][遺伝子組み換え食品目次][遺伝子組み換え食品コラム・目次]

©2000 Setsuko Yasuda All rights reserved.