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2011年10月

食品から受ける生涯の累積線量の限度100ミリシーベルト(食品安全委員会答申)
食品に含まれる放射性物質の暫定規制値は、厚労省が、福島第1原発事故受けた3月17日に、ヨウ素やセシウムなどの放射性物質の上限を合計で17mSv年に設定。セシウムの上限は年間5ミリシーベルトで、この枠を基準に飲料水や野菜類などの5分野に1mSvずつ割り振って規制値ベクレルを決めた。

この暫定基準は事故による非常事態のがまん値であり、安全を担保するものではない。それにしてもチェルノブイリ事故で汚染されたベラルーシ、ウクライナなどの基準と比べてとほうもなく高い数値なのだ。

他に食べるものがなければ、緊急時対応で一時的に高い数値基準が適用されるのは仕方ないだろうが、日本は非汚染地から安全な食べものが手に入るのだ。法的に定められている一般人の許容限度1mSv/年に基づいて、食品基準が策定されるべきだった。非常事態対応の高い値がいまもって使われているのは異常としかいいようがない。

その後厚労省は安全性評価を管轄する食品安全委員会に基準値策定を諮問。これに対し食品安全委員会は、食品から受ける生涯の累積線量の限度を100mSvとする原案を示した。

原案について8月のパブリックコメント募集で、3000件を越える意見が送られたが、大半がこの案に反対や懸念を示すものであった。私も意見を送った。⇒食品暫定規制値改正に関するパブリックコメント募集のお知らせ

しかし、これら国民の意見はまったく顧みられることなく、食品安全委員会は原案どおり答申をまとめた。(パブコメはいったいなんのためか? 政策決定のプロセスでパブコメは行ったという官僚のアリバイづくりのためでしかないようだ。)

加えて原案では「外部と内部被ばく合わせて100mSv以下」としていたのを、食品安全委員会小泉直子委員長は「内部被ばくだけで100mSvとする」と述べた(10月27日NHKニュース)。とうてい、まともとはいえない。福島の人達はまったく考慮されていない。

福島では20mSv/年未満は避難対象からはずされ、外部被ばく量は無視できないレベルの人達が多くいる。当然、内部被ばく限度は外部被ばくの分を差し引いた値にするべきだ。食品安全委員会は国民の健康を守るためになにも示せず、役立たずの生涯基準とやらをひねり出す体たらく。こんな食品安全委員会は、税金の無駄で、なくしたほうがよい。

厚労省は具体的な食品の新たな規制値について検討を始め、28日、小宮山洋子厚生労働大臣がセシウムの許容線量を現在の5mSv/年から同1mSv/年に引き下げる方針を明らかにした。来年4月を目処に新たな規制値を適用するという。

厚労省に以下を考慮した規制値策定を求める。

・1mSv/年は法的に定められている一般人の許容限度であり、内部と外部被ばく合わせての値となっている。これを遵守すべき。1mSv/年をすべて食品に割り当ててしまうと、外部被ばくがあれば、これを超えてしまう。

・食品からの被ばくは本来ゼロでなければならないもの。しかし、ある程度の汚染が長い期間続く環境とされてしまったからには、食品割り当ては0.3 mSv/年くらいを我慢値とせざるを得ないだろう。

・子どもの影響を考慮した値を基準値とすること。
大人と子どもをわけた基準を作っても現実、食事をわけて作ることはできないのだから。

・食品群は細かく分類し特に主食の米や飲料水は厳しい数値の策定が必要。

・規制対象核種として暫定基準にはないストロンチウムの規制値を策定すること。(とくに魚介類のストロンチウム汚染が今後深刻になるはずだから)

・そのうえで市場流通前に全量(ロット)検査を義務付け、基準を超えるものは流通禁止とし、東電買い上げとすること。

以上を実現することが放射能の食品汚染から国民を守る食品安全規制となるのではないか。
2011年10月29日更新
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