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2010年08月

「子供の活動と注意力に影響を与える恐れ」 EU、着色料を含む食品に警告表示
●農業情報研究所(WAPIC)のHP 10.7.23より

子供の多動性障害(ADHD)との関連性が疑われ、飲食料品から自主的に排除するように英国食品基準庁(FSA)が製造者等に促してきた6種の人口着色料*を含む食品には、「子供の活動と注意力に影響を与える恐れがある」(may have effects on activity and attention in children)という警告表示を付さねばならない、EUレベルのこのような強制食品表示規則(EC No 1333/2008)が7月20日に実施に移された。FSAは、今までに(今年2月1日現在)4つのレストラン及びケイタリンググループ(バーガーキング、デメナムズ、ドミノズ・ピザ、マクドナルド)、58の製造業者、9つの小売業者(アスダ、協同組合グループ、ホランド&バレット、アイスランド、ロンディス、マークス・アンド・スペンサー、センズベリーズ、テスコ、ホール・フーヅ・マーケット)が、すべての、または一部の製品からこれら着色料を自主的に排除したが、この強制表示で消費者がこれら着色料を含まない飲食料品を選ぶことが一層容易になると言う。

*タートラジン(E102、黄色4号)、キノリンイエロー(E104)、サンセットイエロー(黄色5号)、カルモイシン又はアゾルビン(E122)、ポンソー4R(E124、ニューコクシン=赤色102号)、アルラレッド(E129、赤色40号)


●複合毒性もある5色の毒
1個の加工食品に幾種類もの食品添加物が使用されている。それらの複合毒性の懸念が指摘されてきたが、政府は対応を怠ったままだ。

2007年に発表された英国食品基準庁(FSA)の委託研究で保存料と着色料が子どもの注意欠陥多動性障害(ADHD)に影響することが明らかになった(英医学誌「Lancet. 2007 Nov 3;370(9598):1560-7.」)。Jim Stevenson教授は「特定の人口着色料と保存料の混合物が子どもの行動に悪影響を与える確固たる証拠を得た」とする一方で、「多動症の要因は多岐にわたるため、これらの添加物を摂取しないことで多動症を防げると考えるべきではない。ただ、少なくとも添加物は子どもが回避できる要因の1つだ」と説明。McCann教授は「食品への人工着色料の添加は不要と考えられるが、安息香酸ナトリウムは重要な保存機能を持つため同一には扱えない」と指摘していた。FSAは食品添加物によるADHDの増悪を警告、ADHDの子供を持つ親に、安息香酸ナトリウム(保存料)と6種の人工着色料の混合物を避ける事が有益という消費者向け勧告を2007年に出している。

近年ADHDは増加している。米国では学童の7.8%(440万人)が罹患という統計がある。現在、未成年者の3〜18%がADHDと診断され、その多くが抗精神病薬を服用しており、社会問題となっている。日本ではまともな調査がないが、全国公立小中学校41,579人を対象とした初の全国実態調査で、担当教師の判定によるADHDは2.5%,LD(学習障害)を含めると6.5%[文部科学省,2002]という。
因果関係で有害性が立証されない限り禁止できない法制度のもとでは、今回の警告表示の実施は次善の策として評価できる。しかし、保存料(安息香酸ナトリウム)は加工食品の保存に不可欠という理由で、警告表示の対象にしていないのは残念だ。

キノリンイエローとアゾルビンは日本では認められていないが、赤色102号、赤色40号、黄色4号、黄色5号は指定添加物だ。その他、使用が認められている合成着色料としては、赤色2号、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、緑色3号、青色1号、青色2号がある。大人がカクテルや口紅で口にするのはいざ知らず、アイスキャンデーや駄菓子、スナック菓子、たくあん、キムチ、漬物など子どもたちが日常口にする食品にこれら着色料(保存料も)が使用されていて、しかも安めの加工食品(粗悪な原料をカバーするため)に多く使用される実態は、格差社会のもうひとつの問題点と思えてならない。 子どもへの影響が大きく、有害性がいろいろ取りざたされている合成着色料をいつまで野放しにするのか。

★当会は8月9日まで募集していた「食品安全委員会が自ら行う食品の安全性に関するリスク評価の対象案件候補の募集」に、合成着色料と安息香酸のこどもの脳神経への複合毒性調査を提出。

(参考)
http://blog.goo.ne.jp/sdfa2000/e/5c43822c312301fc7bceacf77e3d8f6e
より

米国小児科医師会は97年、それまでの研究例を総合的に判断し、着色料の危険性について声明を発表した。曰く、「黄色5号には深刻な副作用があり、特にアスピリン過敏症の人には喘息症状などを起こす危険性がある。アスピリン過敏症の人には青色1号、同2号も危険だ。青色2号はかぶれも起こし危険だ」

認可済み着色料は安全だとする立場のFDAでさえ、黄色5号に関しては、「1万人に1人以下の割合で蕁麻疹を起こす。過敏症の人は避けた方がよい」と指摘する。これは、スナック菓子、飲料、クッキー、シリアル、マカロニと多用されている。

また、「少量の使用なら問題はない」とする赤色3号について「マウスでは甲状腺腫瘍をもたらす」と認めている。ただし、基本的には動物実験は人間にはあてはまらないとの立場だ。
エール大学医学部の小児神経学者、ベネット・シェイウィッツ博士は、着色料とADHDとの関連を指摘、こう警告する。

「子供が日常的に摂取している青、緑、赤、黄、オレンジの5色を摂取したマウスでは、多動性と知育障害の兆候がみられた。着色料が発達中の生物に与える影響は大きく、新生児では活動性を明らかに変化させる」

05年12月英国のToxicological Sciences誌において、リバープール大学の研究者が低カロリー甘味料のアスパルテーム、化学調味料のグルタミン酸ナトリウム(MSG)、人工着色料の青色1号とキノリン・イエローの4種が組み合わさると神経組織の発達にどのように作用するか調べた。マウスの神経細胞を、典型的な子供のスナックとドリンクから血流に入ると考えられる濃度で合したこれらの添加物に曝した。そうすると、神経細胞の成長がストップした。添加物が結合すると、個々の添加物よりもはるかに大きな影響が見られた。個々の添加物に比べての細胞への影響は、食用青色1号とMSGの複合で4倍、キノリン・イエローとアスパルテームの複合では7倍。研究者は、「これら結果は、どちらの複合物も個々の物質の総計から予想されるよりも一層毒性が高い可能性があることを示す」、「単体の食品添加物の利用は神経組織の発達に関して比較的安全と信じられているものの、それらの複合影響は不明確だ。我々は、添加物を混合するときには、影響は悪化する可能性があると考える」と報告している。(「いのちの講座65号 8月25日発行」より転載)
2010年08月30日更新
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