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2009年01月

極まれば転ず
米国次期大統領オバマ氏が発した「Change!」という言葉は米国民の心を掴み、熱狂的に支持された。確かに、時代の空気は、現体制はもうたくさんだと変革への待望感が濃くなっている。これまで世界を支配してきた市場原理主義は「極まれば転ず」の時点に近づきつつあり、世界規模で変革に向けた胎動が始まっているように思う。人々の目に市場原理主義の正体がはっきりと映し出されるようになったからだ。

市場原理主義に立つ経済政策は福祉や公共サービスを縮小し、公的機関を民営化し、対外開放、規制緩和、労働者保護撤廃などをパッケージとした政策で、企業の自由な活動、競争を正当化してきた。

市場原理主義(または自由市場主義)はグローバリゼーションの柱であり、その究極の姿がイラクだ。米国の軍需産業、石油利権のために蹂躙され餌食にされたイラク。2003年のイラク侵攻以降、100万人以上のイラク人が戦争の犠牲になり死亡した。全世帯のおよそ5分の1で少なくとも家族1人が死亡した計算になる(この大いなる犯罪でブッシュ政権は断罪される日がくるだろう)。

また、2003年5月〜2004年6月の間、米軍主導のイラク暫定行政当局(CPA)が発した命令は、関税・輸入税・ライセンス料などの撤廃、外国企業のイラク国内法の適用除外、イラク国有企業200社を民営化、外資のイラク企業100%所有承認、外国企業の得た利潤を100%国外送金可、銀行に外資50%参入可、外国企業に40年間の営業権を与える、など枚挙にいとまがない。

小泉・竹中コンビ内閣が米国の指導のもとに推進した新自由主義政策の結果がいまの日本の惨憺たる荒涼とした格差社会であり、年金、医療の崩壊だ。郵政民営化は誰のためだったか。郵貯と簡保の残高合計345兆円という巨大国民資産を民営化し弱肉強食の市場に差し出した。輸入依存の食糧は汚染米やメラミン汚染など連綿と食品不祥事をもたらし、国内農業の衰退は進むばかりだ。

経済成長のためなら戦争さえも起こし、限度を超えたお金は投機に回り、食料や原油の高騰を引き起こし、投機とは無縁の貧しい人々に飢えや不況が真っ先に襲いかかっている。

いま、南米諸国が米国主導の自由市場主義に対抗して熱い。例えば、今年8月、ベネズエラは大統領令で「食糧農業安全主権組織法」を制定した。食糧・農産品の国産化推奨や脱輸入依存を推進する一方、社会主義的平等の追求や、国の管理と民間経済活動への介入を強化する内容だ。また、キューバの指導を仰ぎ、有機農業を取り入れるという。

社会や環境に対して責任を持つ節度と公正さを失い、肥大しすぎた企業の権利に対するゆり戻しが起きているのだ。WTO交渉は膠着頓挫し、市場原理主義は終焉に向かっている。

「経済成長は善であり、お金こそ富」とする考えは間違っている。地球こそ私たちの富の真の源なのだ。私たちは自然の一部であって、それらとの関係性で生かされている。生物多様性とは、畢竟「関係性」なのだ。そしてまた同様に、人は人との関係性で生かされている。'あなたがいてくれてよかった'この思いを地球上のすべての生きとし生けるものに。新たな変革の時代を期して── (いのちの講座55号「巻頭言」(08.12.23)から)
2009年01月05日更新
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