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2008年07月

WTO事務局長合意案にWTO終焉を思う
2001年より開始された世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は、間もなく8年目に入ろうとしている。現在、特に農業・鉱工業品のモダリティ(各国の関税削減率を決めるための方程式のようなもの)の子細につき議論を重ねてきている。不透明ながら、本年末までの妥結を目指しているという。

新聞報道によると、7月25日にジュネーブでの非公式閣僚会合で、ラミーWTO事務局長が新しい合意案を提示した。それによると、例外的に関税の削減幅を軽くする「重要品目」の数は、全農産物の「4%」としており、日本の目標の「8%以上」を大きく下回ったという。日本は、全農産品(1332品目)のうち、高関税で守っているコメ、砂糖など8%にあたる約100を重要品目に指定することを目指していた。一定の条件下で2%上積みできるとされたが、6%が認められても、重要品目数は約80に減り、日本にとっては厳しい。

一方、米国の農業補助金に関して、合意案は「米国は補助金を70%削減する」とし、シュワブ通商代表が提案した150億ドルに削減額を上積みして上限を年間145億ドルとするよう求めた。2国間や多国間による調整が進められ、27日に約30か国・地域の閣僚による全体会合を開いて大詰めの交渉が行われる。 合意案に対しては、米国、欧州連合(EU)が評価しているとか。

自給率の危機的低下が課題の日本にとって、また、食糧高騰、燃料高騰の世界情勢からも、さらに輸入農産物を増加させるWTO交渉は時代離れしている。しかも、もっとも貿易歪曲的な米国の巨額な農業補助金に対して、合意案は70%削減を提示したが、新たに成立した米国農業法(2008年食料・環境・エネルギー法)では5年間で予算総額約3000億ドルとなっており、貿易歪曲的補助金を温存・増加させる内容なのだ。米国はWTO合意でいいとこ取りだけして、自身の補助金削減については、折り合いなど考えてはいないとみるべきだろう。

そもそも余剰農産物に悩まされていた米国が、そのはけ口として輸出先を作っていくための道具がWTOであったといえる。今日、米国はバイオ燃料利用を促進し、トウモロコシなどは、国内消費に振り向ける政策転換が起こっている。食料危機に世界の多くの国々が直面するようになった今、農業保護、国内生産強化こそが各国の命題ではないか。WTOは終焉を迎えていると思う。
2008年07月31日更新
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