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2008年03月

食禍考――見える」食べ物を
 みなさまに支えられて『いのちの講座』も今号で50号を迎えます。折りしも中国の毒餃子事件が広がりをみせています。日本は高度経済成長とともに食料輸入を拡大し続け、そのつけが回ってきていまや収集がつかないところへ来ていると感じます。

 私たちが口にする食べ物がブラックボックスになってしまっています。どこで、だれが、どういう材料で、どのように作り、どういう経路でここまで運ばれたかがわからない。でも大手の企業だから、生協だから、有名な店だから、そこそこの材料で衛生的な工場で製造しているはずと信じて、「安くてお手軽便利」のワナにはまり、易きに流れて戻れなくなってしまうのです。朝、お弁当に冷凍のまま入れて、食べる頃には解凍されて、そのまま食べられる究極のお手軽冷凍惣菜も売れ行きを伸ばしています。

 しかし、業者はコスト競争でいかに安い原料と人件費で製造するかを考えますから、勢い原料調達・加工は遠い海外でとなります。さらにコストを下げるためにそれも外注します。長い流通経路にいくつも業者が介在して食品の全体は見えなくなり、マージンが幾重にも取られ流通経費が増えるので、価格に占める原価の割合は下がるばかり。質は低下し、ジャンク(がらくた)になります。そのうえ加工食品は消費者に原料が見えないので、業者の操作が思いのままです。食品偽装が後を絶たないわけです。

 結論を言えば、「見える」食べ物を選ぶということです。作り手がわかる、なにでできているか見える、作り方がわかる……となると、生産から口にするまでの距離が短いことが要件になります。まず、自分で作るのがベスト、次は顔の見える地場のもの、次が国内のもの、国内にないものは生産国の生産者とのフェアートレードを目指したいですね。そしてできるだけ素材か、加工度の低いもので調理する、有機農産物など農薬や化学肥料をできるだけ使わないもの、加工には着色料や保存料、殺菌剤などの添加物の使用のないものというのが指標です。

 また、先端科学技術と呼ばれる遺伝子組み換えやクローン技術による食品も「見えない」食べ物です。自然界ではけっして存在し得ないものを人為的に作り出しましたが、遺伝子レベル、細胞レベルでの操作が生命体全体にどのような変化をもたらすのか「見えない」のです。実験に使われた固体の結果が安全と見えても、後代を含むその種のすべての固体で同様かといえば、そうではありません。また当然、環境が異なれば、発現する性質も異なります。

 その時は人間に都合のよいものができたように見えても、5年、10年と時間が経過してみないと及ぼした影響が見えてこないのです。きちんと安全性を確認するには、あと50年は応用化できないはずと良心的研究者たちが言っているのはそういうことです。
『いのちの講座』50号 08年2月28日 巻頭言より)
2008年03月06日更新
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