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2005年03月

20ヶ月齢以下は安全?
 3月28日、食品安全委員会プリオン専門調査会が、政府の諮問「生後20カ月以下の若齢牛を全頭検査の対象外とする場合の国内リスク評価」を受けて「リスクは小さい」とする容認の答申をまとめた。翌朝のNHKラジオでこの答申を米国はどう受け止めているかについてワシントン支局の記者がしゃべっていたが、ひどいものだった。日本ではBSE牛は現在16頭だが米国では1頭だけ、21、23ヶ月の若い牛が見つかっているのは日本だけ。米国は、と畜場での検査を倍に増やして20万頭が検査されている。米国牛肉輸入禁止措置は懸案の貿易問題となっている云々と。米国牛肉は日本より安全だし早く解禁しないと貿易摩擦で困ることになると、まるで米国政府の大本営発表だ。

 BSE牛は検査率や検査精度が高ければ高いほど見つかる。日本は100%検査だから若い牛での陽性例も見つかった。米国の検査は20万頭といっても、と畜される牛全体からいえばたった0.5%の検査率に過ぎないのだ。

 答申はあくまで国内リスクの評価である。日本のこれまでの飼料規制や危険部位除去などの徹底した対策も勘案し、また、限られたデータに基づく確率論で推計すれば20ヶ月齢以下のリスクはかなり低いという結論がでたということ。米国牛肉のリスク評価は別であり、これからなのだ。米国のBSE対策はEU評価では飼料規制や危険部位除去などの項目がみなNot OKだ。いまも55カ国が米国牛肉を輸入禁止にしているのは当然の措置といえる。

 プリオン専門調査会の委員たちが以下の趣旨の発言をしていることを知ってほしい。

「20ヶ月で線引きする論拠データはなく科学的根拠にかけるとして部会の結論では勧告しなかったにもかかわらず20ヶ月齢での線引きの諮問がきた」

「20ヶ月齢以下で陽性が出る可能性は否定できない」

「(若齢牛の)低レベルでの汚染が食品・健康にもたらす影響はわからない。すべての対策の実効性が確認された後に月齢見直しはなされるのが合理的」

 要はBSEはまだよくわからないことだらけ。だから予防原則に立って食物連鎖からの排除(全頭検査)をするのがもっとも適切な対応というものだ。3年間のこの措置(全頭検査)は有効に機能してきたではないか。食品安全委員会を殺す政治の介入は御免蒙りたい。
2005年03月31日更新
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