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2004年12月

十勝の農家 来春にGM大豆栽培を計画するも、断念
 12月6日の報道で、北海道十勝の畑作農家が来春、遺伝子組み換え(GM)大豆の栽培を計画していることが明らかになった。この農家は十勝管内有数の大規模農家であり、「GM大豆は経費節減と省力化につながる」と主張。米国の種苗メーカー(おそらくモンサント社)からGM大豆を購入し5〜10ヘクタールに栽培する予定だった。ところが、公表した翌日に、小麦の卸業者から「GM大豆を収穫したのと同じコンバインで収穫した小麦は扱わない。GM大豆混入のおそれがあり、製粉業者が買ってくれなくなる」と言われたという。この農家は100ヘクタール以上も小麦を栽培しており、「小麦が売れなくなったら死活問題」と、GM大豆の栽培を断念したと農協に伝えた。

 小麦卸業者の懸念は現実的だ。モンサント社は分離システムの構築は可能といってきた時期もあったが、いまではそれは不可能と認識されている。薬成分を作るGMコーンが食用に混入して膨大な回収費用を負担した開発企業の例や、どの国の消費者もGMを嫌うため、国際競争力を落とした売れないGMコーン。これらは弱い立場のアフリカやメキシコなどに投げ込まれて批判を浴びている。米国が、GM小麦の商業栽培を断念したのも、米国小麦の最大のバイアーである日本の製粉業界はじめとする海外からの混入の懸念による不買を通告されたからだ。

 先に空知の長沼農協の大規模農家がGM大豆栽培を発表したあと、農協など各方面からの反対によって、断念させたばかり。もぐらたたきのようにGM生産を口にする農家がでてくるのは、GM大豆生産を農家に促す勢力が働いているからだろう。米国視察団を組んで、連れて行った農家にメリットだけを吹き込むなどが行なわれている。でも生産者が消費者の存在を忘れ、消費者が不安や拒否感を持っているGM作物生産をすることは自滅に繋がる。多くの消費者は輸入農産物より国産農産物を選択したいと考えている。日本の農産物の競争力は価格で勝ち取ることは困難だ。しかし、非組み換えであり、安全、安心で、おいしさや、さらにいえば生産基盤という食料安全保障まで担っているということは、消費者の思いにかない、選択される。これが競争力なのではないだろうか。日本に組み換え汚染をもたらしてはならない。
2004年12月09日更新
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