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2004年08月

積み下ろし港で組み換え菜種が自生!
6月30日農水省は食用油の原料として輸入されている遺伝子組み換えセイヨウナタネが輸入港の茨城県鹿島港周辺で自生していることを明らかにした。調査は2002年5月から今年3月までで、採取した種子や植物体27点中8点に組み換え遺伝子を検出。約3割もこぼれ種から自生していたのだ!

また「遺伝子組み換え食品を考える中部の会」が7月14日三重県四日市港と同市内の搾油工場周辺路上からナタネを採取、キットでの検査と専門家の同定の結果、14検体中3つが陽性でその割合は21.4%に上った。

日本が輸入するカナダ産組み換えナタネの積み下ろし港は、神戸港、横浜港、千葉港、鹿島港、水島港、名古屋港、清水港、四日市港、博多港、宇野港の10港。地元の方はぜひ、県などに調査を要請してみてください。また搾油工場でのこぼれ種調査も必要。なお、交雑しやすいGM作物にトウモロコシもあるが、未調査で、影響が気にかかる。

セイヨウナタネは近縁種のカラシナとの交雑が起こる。カラシナは十字架植物のダイコンや小松菜、ハクサイなどと交雑する。いずれ組み換え遺伝子が野菜から検出されるようになるかもしれない。

遺伝子汚染に関するカルタヘナ議定書が今年2月に発効している。日本政府はどう対応するのか。8月11日に茨城ネットワークとともに農水省で交渉を行った。農水省は植物油協会に要請し、現在、輸送中のこぼれ種をふせぐ密閉容器への切り替えを行っているという。しかし、積み下ろし作業でこぼれ、周辺に広がる場合への対応はない。栽培作物への遺伝子汚染の広がりについては、栽培作物種子は種苗会社が種子管理したものが毎年購入されているので、交雑したものが採種され、撒かれて広がる心配はないとの見解。自家採種に取り組む有機農家がリスクを負うことへの考えは持っていないらしい。さらに交雑があることを前提に、生物多様性に悪影響がなければよいという考えを示した。除草剤耐性の自生ナタネは、除草剤をかければ枯れないが除草剤がかけられなければ普通と同じで悪影響はなにもないという。抗生物質耐性遺伝子はどうだと聞くと、多様性への悪影響が明らかにならない限り、問題ではないという。明らかになってからでは時すでに遅しで、取り返しがつかなくなることもあり、だから「予防原則」がいわれるのではないですか。そもそも遺伝子汚染そのことが多様性を損なっていると考えて防止しなきゃならんのじゃないですか?

悪影響がないという政府の認識に、目に見えない微生物への影響は無視されている。微生物の変異は生態系の連環の中で最後には大きな変化を起こすドミノの始めになることに気がついていない。ミツバチの腸内微生物が花粉の中の抗生物質耐性遺伝子を取り込んで、感染病防止で投与される抗生物質が効かなくなることが起こっている。こうした片隅の情報のなかに重大な問題性が潜んでいる気がしてならない。

遺伝子汚染の広がりを防止する方法はナタネ油の不買、ボイコットしかなさそうです。


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2004年08月19日更新
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BSE全頭検査撤廃への疑義
 参議院選挙前までは全頭検査なしに輸入再開はないと言って来た日本政府が、参院選後の日米協議で一転して米国の要求どおり全頭検査の放棄を決め、米国産牛肉輸入再開に向けて検討を始めた。ブッシュ政権は、11月の大統領選挙に向けて支持基盤の米国畜産業界が求める日本の輸入再開を勝ち取りたい思惑がある。しかし、本来純粋に安全対策として考えるべき課題が政治的思惑で左右されるのでは危険かつ、憂うべき事態だ。

 全頭検査撤廃の根拠を与えたのは、食品安全委員会プリオン専門調査会だ。8月4日に開催された意見交換会を傍聴した。プリオン専門調査会吉川座長は、「全頭検査をしても感染若齢牛では脳への異常プリオンの蓄積が少なく検出限界以下ですりぬける。検査をしてもしなくても結果は同じなのだから、若齢牛については検査をやめてもリスクは変わらない」と検討結果を説明。(そんなことは全頭検査導入時からわかっていたはず。なんで今になってそんなことを言いだすのかだ)。ところが同時に、専門調査会は、感染牛の検出は暴露量と潜伏期間によるが、潜伏期間のどの時期から発見が可能か、またそれが何歳の牛に相当するのか「現在の知見では明らかではない」という。つまり月齢で検査をする牛としない牛の線引きはできないというのが専門調査会の科学的結論なのだ。なら、全頭検査するしかないだろうというのが衆目の一致するところだろう。なのに全頭検査撤廃の結論とは!?

 この矛盾する不可解な結論の裏に、米国の輸入再開要求があることは否定できない。

 米国からの輸入牛肉はほとんどが若齢牛だ。米国は当初、生後30ヶ月以上からの検査を要求(米国輸入牛肉のほぼ全頭が検査なしとなる)。しかし、日本で生後21ヶ月と23ヶ月の若い感染牛が全頭検査で見つかっているから、30ヶ月では苦しい。そこで20ヶ月での線引きとなれば、輸入米国牛の8割が検査対象外となるそうだ。しかし、米国では放牧に出すため牛の個体管理はなく、年齢を確認する方法がない。このままではグレーゾーンの牛が大量に輸入される可能性がある。そこで危険部位の除去を徹底する食肉処理場を米国政府が保証する方向でどうだという話になってきている。

 しかし、これは受け入れがたい。米国政府の認証の信頼性はもとよりない。米国には立つ事も歩くこともできなくなったダウナー牛がたくさん処分されているが、その中にBSEが隠れているのではと懸念されている。写真1 写真2 米国にはBSEがたくさん発生している可能性があるのだ。また、肉骨粉を豚や鶏に認めているため、牛に流用される可能性が否定できず、プリオンを発見した米国のBSE専門家プルシナー博士や消費者の88パーセントが全頭検査を支持、要求している。ブッシュ政権が全頭検査を拒否するのはコスト負担を避けたい食肉処理企業の利益のためだ。

 全頭検査に反対するタイソン食品は全米一位の食肉処理会社だが、衛生管理と労働事故率で全米ワースト・ワンの企業だ。その主力肉牛処理工場(タイソン・パスコ工場)は、製品の40%を日本、韓国、メキシコに輸出している。ラインの速度が速く(査察が入るときだけ速度を落とすそうだ)、牛はまだ生きているのに皮をはがれたり、腕を切断する事故もある。労働者は自分の身を守るのに精一杯で、危険部位の除去に注意を払う暇はないと来日した処理場労働者が告発している。依然、背割り解体が当たり前で、脊髄にBSE感染物質が蓄積していれば、背割りで飛び散り肉の汚染を引き起こす。

 米国は牛の年間処理数が約3500万頭に上る。膨大な量をこなす食肉処理場が特定危険部位の除去を徹底するかは大いに疑問だ。

 米国ではアルツハイマー病と診断された死亡患者数は1979年には857例だったのが、2000年には5万例近く(50倍)にもなっている。エール大神経病理学科の研究チームなど複数の研究で、アルツハイマー患者のなかに見落とされたクロイツフェルトヤコブ病の患者が含まれ、その数は12000人以上という。その中にBSE由来のヤコブ病が含まれているかもしれない。

 また、米国牛輸入のために日本の全頭検査体制を止めることで、国内の安全確保まで後退するのは忌忌しきことだ。日本は全頭検査が建前だったため、危険部位除去については徹底されていない。全国137箇所ある食肉処理場で脊髄の高圧洗浄導入率は20%にすぎない。脳の砕片が血液に流れ込む可能性のあるピッシングは中止が求められているが、70%にあたる100箇所で依然行われている。

 最近、新型のBSEが見つかったり、輸血で感染したなど、いまだBSEは未解明の部分が多い。予防の防護壁は可能な限り用意周到に設けるべきだが、現実は反対に向かっている。
現時点で取るべき措置は以下の3点

1.全頭検査の維持
2.危険部位除去方法の統一と徹底
3.規則の遵守と国による査察(抜き打ち検査)

さて、世論の反対を押して、全頭検査を廃止し輸入再開なら、「おのおの方、牛肉を食するのは、おやめなされるのが身の安全」と申し上げたい。牛肉食べなくたって生きられますもの。

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2004年08月09日更新
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