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米国連邦議会で州のGM表示を無効にするDARK法案が廃案に!


米国は変わるのか?

米国にはGM表示がない。どの世論調査でも米国民の90%以上が表示の義務化を求めている。これまでに30州以上にGM食品表示法案が提出されている。このなかでコネチカット州、メイン州、バーモント州の3州でこうした州法が可決されている。メイン州とコネチカット州は隣接する諸州もGM表示に踏み切れば発効させるというトリガー条項があるため具体的な施行日は未定だが、ヴァーモント州の法案は、2016年7月1日に発効される予定となっている。

これらの動きに対し、連邦法の全米統一のルールとして表示を「義務」でなく「任意」とする法案「DARK法(Denying Americans the Right to Know Actアメリカ人の知る権利を奪う法)」と反対派が呼ぶH.R.1599法案を2015年7月、米国連邦議会下院は可決した。

大手食品企業、GM種子開発メーカーと農業関連組織などは、GM食品は安全であり、義務表示は(警告と取られるから)消費者をミスリードして紛らわしい、また州間貿易を妨げる州毎のパッチワークの法規制が企業にコスト負担を強い、それは消費者に跳ね返ると、この法案を支持。

一方、反対する市民団体、オーガニック生産者と製造業者、有名シェフなどは、消費者には購入する食品成分になにがあるのか知る権利がある、世界の多くの国がGM義務表示制度を持っており、世論調査から米国人の殆どがGM食品表示を望んでいるとし、GM食品の安全性には疑いと懸念があると主張。

もし上院が一括採択する予算案にこのH.R.1599法案が付帯条項として含まれた場合、連邦政府による表示制度は任意となり、義務化は禁止となる。そして可決された3州の法案がすべて無効となり、GM食品表示に関する州の規制は今後できなくなる。

また伝統的農法の農民や食料生産者が食品に“GMを含まない”という表示をするには、GM推進の米国農務省からの証明書を必要とし、食品がGMを含んでいても企業がパッケージに“ナチュラル”と表示できるようにし、GM作物を飼料として与えられた家畜による乳製品や、GM酵素などを利用して生産された食品でも「非GM」と表示するのを認めることになる。⇒H.R. 1599: Safe and Accurate Food Labeling Act of 2015 -- GovTrack.us

しかし、2015年12月、上院は食品業界やバイオテクノロジー業界からの相当な圧力にも屈せず、DARK法案を付帯条項として連邦予算法案に含めないと決定した。

加えてこの一括審議の予算案には、GMサケの表示を義務化し、FDA(食品医薬品局)が表示のガイドラインを策定すること、そして表示制度が発効するまで販売しないとする文言も含まれている。

参考URL:⇒http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/dark-gmo-63ff.html http://www.foocom.net/column/gmo2/13057/

安田コメント

米国市民のこのGM表示の勝利を、日本の私たちも喜びたい。

一方、GM食品に表示を義務づけるライバル法案であるGM食品の知る権利法案(Genetically Engineered Food Right-to-Know Act  S.511)が、昨年2月に民主党議員から議員立法として提出されている。

なおS.511を支持するバーニー・サンダース上院議員(ヴァーモント州、無所属)が、民主党から大統領選挙に出馬して民主党の大統領候補選でヒラリー・クリントンと接戦している。

米国で表示を求める各地の人々は議員たちへの要請行動を繰り広げ、住民投票に持ち込んだりしたが、巨大資本のテレビCMを使った力によって負けてはいた。しかし、人々の不屈の闘いがいま、実を結びつつあるように感じる。

アメリカも変わる。日本の私たちも、元気をもらって、TPPを背景にしたGM規制後退を許さず、粘り強く全ての食品にGM表示を求めていこう!

(2016/03/08)

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